写真de俳句の結果発表

第57回「沖縄県の郷土料理」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊 NEW

沖縄県の郷土料理

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

軒下の緑の濃さよ苦瓜の

三毛猫モカ

夏井いつき先生より
「一見、尻切れトンボのようになってしまいましたが、緑を先にしたくて、この形になりました。余韻も出せたかと思うのですが……」と作者のコメント。

ご指摘のとおり、調べが「尻切れトンボ」になってしまいました。「緑を先に」書きたかったとのことですから、そこも含めて語順を考えれば、やり方は色々あります。例えば……

添削例
緑濃し軒下の苦瓜たわわ
“ポイント”

龍淵に油膜拡がる流し台

草深みずほ

夏井いつき先生より
「油汚れのひどいお皿を洗った際の、シンクの様子を思い浮かべました。一度使ってみたい季語でしたが、強引だったでしょうか?」と作者のコメント。

中七下五の描写はリアルです。季語「龍淵に」は、そうですね。使ってみたいという気持ちが勝ってしまった……という使い方。中七下五を生かした上で、より主役に立てる季語は他にありそうです。
“ポイント”

ラフティーや冬肌満たすコラーゲン

南の爺さま

夏井いつき先生より
「冬の荒れた肌には、コラーゲンたっぷりのラフティーが最高です」と作者のコメント。

俳句というよりは、キャッチコピーというべきか。
“ポイント”

素数の物差し花瓶に竹の秋

空素(カラス)

夏井いつき先生より
第55回『食卓に花瓶』の投句〈素数の物差し一輪竹の秋>の『一輪』を『花瓶』に変えてみました。一輪は物差しを花に例えていましたが、解り難いですね」と作者のコメント。

原句の意図「物差し」が「一輪」というのは、ちょっと読み解けません。推敲句でもそのへんが曖昧。「素数」と「竹の秋」の取り合わせは、味があるのですが。
“ポイント”

泡盛や夜風の涼しロック音

空素(カラス)

夏井いつき先生より
上五「~や」で切れて、「涼し」の終止形で切れる三段切れです。中七の切れを解消する手立てを考えてみましょう。
“参った”

酸っぱいな鯖寿司食し顔ゆがむ

京都さくら

夏井いつき先生より
「我が家の鯖寿司は、市販の物と比べて、かなり酢が効いていて、もの凄く酸っぱいのです。本当に顔を歪めながら皆で食べています」と作者のコメント。

「~食し~ゆがむ」が散文的なフレーズ。「酸っぱい」という情報があれば、「顔ゆがむ」まで書かなくてもよいです。
“ポイント”

静寂や月の出塩と島時間

たけ

夏井いつき先生より
中七の「月の出塩」は、「月の出潮(ツキノイデシオ)」の変換ミス? あるいは他の意味があるのでしょうか。
“ポイント”

今もなお烏有に帰す街夏の雨

野山めぐ

夏井いつき先生より
「戦争の傷は、時を経ても残っているものだと私は思います。街並みが復興しようとも、心の傷は癒えるものではないと詠みたかったのですが……意図は伝わりますでしょうか?」と作者のコメント。

「烏有に帰す」が「街」に掛るのならば、「帰する」となります。下五の季語を一考して、調べを整えてみましょう。
“ポイント”

雪国を出でてカリユシ纏い海

風羽

夏井いつき先生より
「出でて」から「纏い」までの時間軸が長すぎるのではないかと。
“ポイント”

冬座敷綾子語るを書く光世

早霧ふう

夏井いつき先生より
第50回『雪の赤れんが庁舎』〈風冴ゆる綾子光世の愛の本〉の推敲句です。中七下五を具体的に変更。結核、脊椎カリエスを克服、作家活動された三浦綾子は病弱。夫の光世さんが献身的に支えました。口述筆記も担当。体調の良い時は、彼女が歩きながら生む文を書き取ったそうです。上五は『冴ゆる』の凛とした感じを使いたかったのですが、室内は暖かいので、こちらの季語に変えてみました」と作者のコメント。

たった十七音しかない俳句で、エピソードを書くのはとても難しい。だから、俳句は描写することで、何かを伝えることに特化してきたのです。この句の場合、「綾子」「光世」と名前を入れるだけで音数を使ってしまいます。例えば、「夫」と書いて「つま」と読みますので、「夫の口述筆記」と書けば、その状況はひとまず分かります。
“ポイント”

音たてて残波のグラスに入る金蚉

ちえ湖

夏井いつき先生より
「ちょっと辛いことがあった時、テラスで残波を飲んでいたら、カナブンが飛んできた時のことを詠みました」と作者のコメント。

詩のある良きエピソードです。この場合は、「残波」と詳しく書く必要はありません。そこをヒントに推敲をしてみましょう。佳句になりそうな予感。
“ポイント”

さっと描く地図に沖縄沖縄忌

福間薄緑

夏井いつき先生より
「さっと描く地図に沖縄」というフレーズは良いです。作者ご自身も悩んだ末に「沖縄忌」を取り合わせたのだろうと思いますが、これがベストか否かは、悩みますね。
“ポイント”

ラフテー綻ぶ王の碑に夏至夜風

そよかぜ

夏井いつき先生より
「ラフテー」と「王の碑」の取り合わせには惹かれます。が、ここに更に季語を取り合わせるのは、なかなかハードルが高い。「綻ぶ」という動詞が的確なのか否かも、悩ましいところです。
“ポイント”

味噌蔵の分厚き壁の外は露

ヒロヒ

夏井いつき先生より
第54回『パンダと観覧車』《ハシ坊と学ぼう!⑭》にてご評価いただきました〈味噌麹底に残れる露の玉〉を推敲しました。『肝心の「露の玉」問題はどうしましょう? 「露」は秋の季語でもありますよ』とコメントをいただきました。肝心の「露の玉」問題とは、前作〈露の玉底に残るは味噌麹〉において、季語が主役になっているか、だと理解しました。本歌取りはペンディングとします」と作者のコメント。

「味噌蔵の分厚き壁や」と詠嘆をして、あとは「露」という季語を描写してみましょう。いよいよ完成間近です。
“ポイント”