写真de俳句の結果発表

第57回「沖縄県の郷土料理」《ハシ坊と学ぼう!⑬》

ハシ坊 NEW

沖縄県の郷土料理

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

豚バラのグリルの「消煙」あぶれて夏

あま門

夏井いつき先生より
「家で焼肉ができる『消煙』グリルを買いました。しかし豚バラの発する煙は『消煙』機能からはあぶれてしまいます」と作者のコメント。

作者コメントを読んで意味は分かりました。消煙が「 」に括られている意味も。ただ、この句の字面では作者の伝えたいことは伝わりません。豚バラの煙を吸ってくれない「消煙グリル」。更に、季語も必要ですから、言葉の優先順位をつけて取捨選択してみましょう。
“ポイント”

夏の夜や虎キチ集うお好み屋

碁練者(ごれんじゃー)

夏井いつき先生より
「阪神戦になると、テレビ中継でファンが盛り上がるお好み焼き屋さんの風景を詠んでみました」と作者のコメント。

「お好み焼き屋」さんを「お好み屋」と端折るのは、音数の都合と思われても仕方ありません。どうしても字余りになってしまう場合は、上五で処理するのが定石です。

添削例
お好み焼き屋に集う虎キチ夏の夜
“ポイント”

肉汁の垂れて・・遠花火

馬風木瓜子

夏井いつき先生より
「『・・(てんてん)』です。句会では『点点』か『点々』とするのが定石だろうと思いますが、『俳句チャンネル』の記号シリーズを3回観た上で挑みました。ハシ坊になっても、これはこのままノートの片隅に残しておきます」と作者のコメント。

このような記号を、俳句という詩の中で機能させるのはとても難しいのです。それはそれとして、まずは有季定型の俳筋力をしっかりと身につけることをお勧めします。
“ポイント”

朱門は燃ゆ片口のすさまじき

那乃コタス

夏井いつき先生より
「朱門」とは、 ① 朱塗りの門。赤門。 ② (多く門を朱で塗ったところから)富貴の人の家。
「片口」とは、酒器? 鰯? 詩を発出しようという意志は受けとれるのですが、句意を明確にチャッチするのが、少し困難でした。
“ポイント”

一週間履き続けた靴下の匂いのヤギ汁啜る新年会

黒田栗まんじゅう

夏井いつき先生より
「上五は『一週間履き続けた靴下の匂いの』までの字余りになります。『NHK俳句』で、必然性があれば字余りはして良いというのを見て、チャレンジしてみました」と作者のコメント。

「必然性があれば」+「詩として成立すれば」、たしかに字余りも表現技法のひとつなのですが、この句に関しては、そこが読み取れません。まずは、有季定型の基本を叩き込むことを、強くお勧めします。
“ポイント”

泰山木どうとたわめて風は海へ

ひな野そばの芽

夏井いつき先生より
「私が訪れた沖縄は、いつも強風でした。あの力強い風を表現したかったのですが、これでは季語が活きていない? 泰山木が脇役か? 悩みは尽きないのですが、時間切れです。この形で投句します。でも、推敲は今後も続けるつもりです」と作者のコメント。

木に関しては、その花の時期や実の時期が季語になります。この場合でしたら、「泰山木の花」として季語とみなされるのです。その点を踏まえて、更に推敲してみましょう。
“参った”

忘年会ミミガー残す主任かな

青村秋入

夏井いつき先生より
「『好き嫌いなんてない』と言っている主任が、ミミガーだけそっと残していたのが少し面白かったので詠みました」と作者のコメント。

面白いエピソードですね。下五「かな」という詠嘆があまり効いてないので、語順を替えることをおススメします。「ミミガーを残す主任や」と上五中七を整えて、下五に取り合わせる季語を考えてみましょう。「忘年会」でも成立はしますが、少々ベタ。取り合わせる季語によって、この句は化けます。同時投句の、下五「かな」もあまり効いていません。こちらも工夫次第で人選になりますよ。
“ポイント”

スターマインの音鼻先のラフテー

直感勝負

夏井いつき先生より
「夏祭りは花火で最高潮、それもスターマインでエンディングを迎えました。最後のスターマインの咲き終わる音を聞きながら帰ろうとした時、夜店からラフテーの美味しい匂いがしてきました。祭りはまだ終わりではないぞー、です」と作者のコメント。

「スターマイン」は「速射連発花火」のことのようです。が、これが季語として認識されるのか。少々悩ましい。
“ポイント”

六月や練習曲は「童神」

まどれ

夏井いつき先生より
「『童神(わらびがみ)』と読みます。六月のコーラスは沖縄を思い、沖縄の歌を歌っていました。季語を『沖縄忌』にするか迷いました」と作者のコメント。

確かに、取り合わせる季語は悩ましいですね。「沖縄忌」では近いけれど、「六月」がベストかというと、果たして……?
“ポイント”

遠雷やおしぼり蕎麦とD判定

藤康

夏井いつき先生より
「『おしぼり蕎麦』は、長野県で食べられている、辛味大根のおろし蕎麦です。すごく辛くて私は好きです。『D判定』は、健康診断の結果です」と作者のコメント。

季語+あと一つの要素が、十七音に器にはちょうどよい分量。この場合でしたら、「遠雷」と「D判定」、「遠雷」と「蕎麦」。それぞれ二句に推敲してみましょう。
“ポイント”

ミミガーと愚痴を交互に泡盛の夜

柳翠

夏井いつき先生より
上五を「泡盛の夜や」として、中七下五を整えてみましょう。「と」という助詞を巧く使えば、「交互に」と説明する必要はありません。
“ポイント”