写真de俳句の結果発表

第57回「沖縄県の郷土料理」《ハシ坊と学ぼう!⑭》

ハシ坊 NEW

沖縄県の郷土料理

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

機上よりモズクを探す春の海

奥ノ碧心

夏井いつき先生より
「沖縄に長く住んでいた友人は、春になるとモズクを採りに毎年沖縄に帰っています。きっと沖縄到着間近の飛行機から、明日はあの辺の海に行くと想像しているのでしょう」と作者のコメント。

作者のコメントを読むと、なるほどそういう意味かと理解はできるのですが、「機上」から「モズク」を探すという書き方には少々無理があります。
“ポイント”

ビール注ぐポジションを兼ねねまりたる

白沢ハジメ(旧白沢ポピー)

夏井いつき先生より
上五はここで意味が切れるのか、「ポジション」に続いていくのか? 更に、後半の「兼ねねまりたる」とはどういう意味か? 色々と解読に悩みました。
“ポイント”

吉野の蛙飛手土産がハブ酒

チームニシキゴイ太刀盗人

夏井いつき先生より
「手土産がハブ酒」なのは理解したのですが、「吉野の蛙飛」とは、単純に「吉野の生きている蛙が飛んだ」という意味? ちょっと句意を掴みかねています。
“ポイント”

こわごわと泡盛、酔眼の渋谷

コミマル

夏井いつき先生より
「渋谷の沖縄料理店で初めて泡盛を飲んだ時のことです。『さあ帰ろう』と店を出たら、センター街のネオンが陽炎のように揺れていました。『陽炎』では季重なりになるので、『酔眼』という語を見つけ『これだ!』と思いましたが、漢字が続く違和感があり、あえて『、』をいれてみました。時間の経過もわかりしっくりきましたが、この使い方はどうなのでしょうか?」と作者のコメント。

俳句における句読点は、特殊な技術。時間経過を伝えるために使うのは、少々安易です。まずは、句点に頼らず、正面から時間表現に挑んでみることをオススメします。不要な言葉がないか、まずはそこから考えましょう。
“ポイント”

方舟のごとき大皿亀鳴けり

桃圓

夏井いつき先生より
「イメージしていた、大きくて豊かな皿、の比喩として『方舟』は、自分でも意外なほど早い時期に決まりました。下五で迷いました。上五・中七の望洋とした雰囲気を、あまり狭く限定しないような『亀鳴く』にしてみました」と作者のコメント。

「方舟のごとき大皿」というフレーズがよいですね。それに対して、「亀鳴く」という季語は動きます。季語の本意を確認しつつ、「大きくて豊かな皿」の比喩と言葉の質量が釣り合う季語を探してみましょう。
“ポイント”

寛解し素麺よりも肉に箸

大久保一水

夏井いつき先生より
伝えたい内容は理解できます。が、「素麺よりも」と比較するのではなく、「肉」そのものをクローズアップすることと、これらの内容とバランスの取れるエネルギッシュな季語を取り合わせること。この2点について考えてみましょう。
“参った”

盃に透きとおる月おばあの哀歌

藤華靖麿

夏井いつき先生より
素材はよいですね。盃に映る月、盃に透ける月などの切り取り方には、多少の既視感があります。季語「月」を主役としてもう少し押し上げると、よいですね。人選は目の前です。
“ポイント”

ストレス源から一目散花曇

ほしのり

夏井いつき先生より
その「ストレス源」とは何でしょう。それを描写するのが俳句です。
“ポイント”

沖縄忌基地のすき間に暮らしあり

三日余子

夏井いつき先生より
「初めて沖縄に行ったとき、基地の広さに圧倒され、住民の暮らしがそのすき間にあるような感じがして詠みました」と作者のコメント。

「基地のすき間に暮らしあり」は、あなたの感想です。そう思った時、何を見たのでしょう。何かを見たから、そのように思った。それを描写するのが俳句です。もう一度、その映像を思い出してみましょう。
“ポイント”

折り鶴の千の姿や沖縄忌

志澤紫子

夏井いつき先生より
「折り鶴の千」と書けば、おのずとその「姿」は浮かんできます。「や」の詠嘆を「姿」にもってくるのではなく、「折り鶴の千や」と「千」という数詞を詠嘆するほうが効果的ですし、音数の上でも効果的です。
“ポイント”

空港でオリオンビール惜しみつつ

永順

夏井いつき先生より
「フライトの時間を待ちながら、最後のオリオンビール。もう少し旅していたいなと楽しかったことを思いながら。ビールは季語になりますか?」と作者のコメント。

「ビール」は季語になりますし、「オリオンビール」で沖縄だと分かるのもよいですね。ただ、「で」という助詞が散文的であること。「惜しみつつ」は言わずもがなのフレーズ。この2点を再考してみましょう。
“ポイント”