第41回 俳句deしりとり〈序〉|「かな」①

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第41回の出題
兼題俳句
◯んご のヒントに知恵の実とある焼野かな 髙田祥聖
兼題俳句の最後の二音「かな」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「かな」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
かなかなのなかの果樹園ホテルかな
空から豆本(空豆 改め)
かなかなと閑散リゾバ最終日
在仏変人
かなかなのやがてかなしきいのちかな
氷雪
かなかなの鳴く裏山に熊の尻
まゆ志
かなかなは会いたくて会いたくて震える
けーい〇


かなかなや絵の具をすすぐ筆二本
暮待あつんこ
かなかなや疏水にあかき錆の橋
佐藤さらこ
かなかなや路地に消えゆく水の跡
山本八角
かなかなや法事の後の寺しずか
香代
かなかなや国道沿いの森は闇
平手打チメガネ(志村肇)


かなかなや父を許してしまいそう
中村すじこ
かなかなやゆつたりくつろぐ自信がない
あま門
同じく上五「や」ですが、映像描写を捨てきったタイプの句。その分、「かなかな」の持つ連想力へと振り切っています。《あま門》さんはどんな状況にいるんだろう。個人的には久しぶりに帰った実家あるいは義実家を想像しましたが、いかに。どちらの句も家族や家庭との関係にフクザツなものを抱えていそうで味わい深い。


蚊なんて小さいのにがんばっている
胡麻栞
ちょっと変な発想でくるこういう句も嫌いじゃないヨ。そうだね、小さい蚊も頑張って生きてるね。ただ血は吸われたくないかな、ぼくは……。


必ずしも裸ぢやなくていいみたい
髙田祥聖


かならずや女の幽霊は真白
津々うらら
彼方へと霊送りたる扇風機
細川 鮪目


金縛り十九歳の夏の寮
牛乳符鈴
金縛りが好き過緊張の蠍
三尺 玉子
金縛りなど無縁すかんぽ味気なし
さ乙女龍チヨ
金縛りふんぬと解いて汗激し
くるぽー
金縛り解けて此の世の風薫る
かなかな
金縛り右だけかかる扇風機
欣喜雀躍
金縛り布団の重き闇の夜
つきみちる
金縛り羽毛布団が重すぎる
ガリゾー
金縛り深海のごと熱帯夜
山内三四郎


金だらい落ちてドリフの夏来る
信茶
金だらい直撃カトちゃんはステテコ
満る
金ダライ後半西瓜志村食い
芝歩愛美
金盥ドリフターズと行水と
水きんくⅡ
金盥の落ちる場面よ夏の宵
赤味噌代
金盥へ名を与へつつ浮いて来い
よはく
金盥犬の嫌がる日向水
冬島 直 (直あらため)
《よはく》さんと《冬島 直》さんは本来の役目を果たしている「金盥」。嫌がる犬が散る水を避けてたじたじとする距離感が見えてくるのが上手い。


金盥にすいか浮かべて金物屋
キャロット えり
金物屋あった空地へさみだるる
chizumi
金物屋の家系図古し枇杷の花
水須ぽっぽ
金物屋の店主頑固や夏の雲
小川都雪


金束子ぎゅいと鍋底の夏カレー
万里の森
金串を覆ふ火柱初鰹
横山雑煮
金槌はずっと水底根無し草
Sean
金槌で叩きに叩く氷下魚だもん
チョコ婆
《Sean》さんと《チョコ婆》さんは共に「金槌」。泳げない人を意味する「かなづち」の句もあったんですが、この二句は内容から道具である「金槌」と判断して良さそうです。《Sean》さんはやや判断に迷いますが、「ずっと水底」とまで言うのは、落として沈んでしまった道具に対しての語りかな~と考えました。《チョコ婆》さんの「氷下魚(こまい)」は冬の季語で、タラ科の海産魚。干物にして食べることが多いのですが、その際に金槌で叩いて柔らかくするそうです。「氷下魚だもん」のいかにも当然といった語り口が慣れてる人のそれですなあ。
〈②に続く〉


