写真de俳句の結果発表

第57回「沖縄県の郷土料理」《天》

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評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

第57回「沖縄県の郷土料理」

57

 

旧盆やコーラで洗ふ豚の腸

林 廉子

 

とにもかくにも、中七下五「コーラで洗ふ豚の腸」というフレーズが強烈です。沖縄在住の作者コメントによると「戦後にアメリカ軍が持ち込んだコーラをその下処理に使うと、豚の腸がとても柔らかくなって臭みと汚れも取れやすいと、巷でコーラで洗うのが大流行した」のだそうです。興味を抱いて「旧盆や正月のスペシャルメニュー」だという「中味汁(豚の腸を具とした汁物)」を検索してしまいました。

かつて、「コーラ」という飲み物が日本に入ってきた頃、慣れないその味を薬品臭いと嫌がる人たちもおりましたし、独特の色合いや匂いを受け入れがたいものとした時代もあったのです。(現在68歳のワタクシなどは、まさにその世代です。)

それがやがてアメリカっぽいカッコイイ飲み物として一斉を風靡し、今となっては日常的な飲み物として定着していることに、時代の流れを痛切に感じます。

「旧盆」という日本の伝統行事と「コーラ」というアメリカからの新しい文化。「豚の腸」という(沖縄とは書いていないけれど、沖縄を想像させる)独自の食文化。それらが巧みに取り合わせられつつ、言葉の質量の絶妙なバランスが実現していることに感嘆します。「コーラ」を飲み物としてではなく、「豚の腸」を洗うモノとして下処理に使う(沖縄の)逞しさもまた、痛烈な隠し味というべきでしょう。

“夏井いつき”