第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう！①》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
趣味で布を織っています。気分だけは織姫です。
佐藤香珠
季語なし
長寿なり行ったり来たりと紡ぐ糸
吉川ゆふみ
明確な季語が欲しいですね。
季語なし
妹と背に思い巡らす糸の順
小嶋美和子
明確な季語が欲しいですね。
季語なし
継は我綜絖通す匠の手
時田チクタク
季語なし
機織りは見えずと言えぬ閻魔王
はぐれ鞠助
明確な季語が欲しいところです。
季語なし
機織が趣味のあの娘は鶴だった
比良山
「現代版鶴の恩返しです」と作者のコメント。
この「鶴」は季語にはなりません。比喩になっているので。
季語なし
豊かなりシニアクラブの星の歌
山羊座の千賀子
「星の歌」で季語なのかなあ？
季語なし
蔵に棲む機へ斜陽の四辺形
深紅王
「斜陽」では季語になりませんが……。
季語なし
立琴は自ずと鳴りぬ機の音
瓢介(旧ひょんすけ)
綺麗なイメージです。無季の句として、考えることもできはしますが、欲を言えばやはり季語は欲しいです。
季語なし
夜のしじま軋む機織り時刻み
みのわっこ
明確な季語が欲しいですね。下五「時刻み」は不要な説明ですから、ここに季語が入りそうですよ。
季語なし
機織や孤独死の日も折り込めり
どこにでもいる田中
「機織りをしていた先生が、癌で亡くなられていました」と作者のコメント。
「機織」は季語にならないので、是非その先生に相応しい季語を取り合わせて下さい。
季語なし
ウイグルの眉毛繋がる機織る子
どこにでもいる田中
こちらも、季語を入れたいですね。
季語なし
機織りの音響きたる城下町
原島ちび助
「機織り」は季語にはなりません。明確な季語が欲しいですね。例えば、「機織りの町」と書けば、音は聞こえてくるのではないでしょうか。
季語なし
一ミリを織つて日暮れるラオスの布
踏轍
「ラオスの機織りのおばさんに聞くと、一ミリを織るのに三日ぐらいかかるんだそうです」と作者のコメント。
良い句材ですね。季語を明確にしてみましょう。
季語なし
玄関の壁を飾れるパッチワーク
柚木 啓
「パッチワーク」は季語ではないですね。
季語なし
とんとんからり窓越しに濡れ葉色
水色ぺんぎん
「濡れ葉色」は季語にはなりません。
季語なし
一つの着物も一糸から
勺子
「一つの着物を作るのに沢山の糸を使う為、命への思いと、一つ一つ頑張ろうという意味で作りました」と作者のコメント。
その思いは、よく分かります。ただ、季語は入れたいですね。
季語なし
瑩貝のひかり摺り尽くして透綾
岡根喬平
「瑩貝の摩擦により、透綾が光を蓄える光景を詠みました。絹糸の一本一本に光の繊維が絡み付いて、透綾が完成するのではないかと思いました」と作者のコメント。
やろうとしていることは良いと思います。とはいえ、やはり明確な季語が欲しいとも思うのですが。