写真de俳句の結果発表

第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊 NEW

第58回のお題「趣味は機織」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

蜩や紬の着物裁ち始む

夏の舟

夏井いつき先生より   評価    人 
「中七に切れがあるのが気になっています。この場合もやはり三段切れになりますか? 語順、言葉などいろいろ考えたのですが、『裁ち始む』を下五にした方がいいという思いが強く、引っ掛かりがありながら提出句になりました」と作者のコメント。

この場合は、中七に切れがあるのではなく、「~着物(を)」という助詞が省略された形です。問題はありません。上五「蜩」という季語との取り合わせがよいですね。人選です。
“ポイント”

食べて寝て無趣味の吾と気付く夏

国東町子

夏井いつき先生より   評価    並 
「機織りの兼題写真を見て、私の趣味は俳句以外なんも無い……と気が付きました」と作者のコメント。

趣味として「俳句」があれば、コワイものはありません~(笑)。この句は、並選だけど。
“ポイント”

趣味多き祖母の納戸や秋祭り

竹いとべ

夏井いつき先生より
上五中七を良しとした時、季語が動きそうです。逆に、季語「秋祭」を大事にしたいのならば、上五中七には工夫の余地がでてきます。
“参った”

風ふわりあなたも夏になりなさい

中指富士夫

夏井いつき先生より
「坪内稔典さんへのオマージュです」との作者のコメント。

坪内さんの、「河馬」には敵わない出来になりました。残念。
“ポイント”

翡翠の嘴のごと杼のはしる

気仙椿

夏井いつき先生より
「お題の写真の、青色と緑色が交差する布から翡翠の姿を連想しました。 機織の杼は翡翠の嘴のようで、杼が素早く動く様子は、翡翠が獲物を取るために一直線に水面に突入する動きに思えました」と作者のコメント。

季語「翡翠」が、比喩として使われているので、季語としての鮮度は落ちます。比喩を逆にしてみるのも一手です。
“参った”

白鳥の水発つ軌跡杼や涼し

西川由野

夏井いつき先生より
「白鳥の水発つ軌跡」のような「杼」の動き、という意味でしょうか。「白鳥」から始まると、冬の句かという思い込みから「読み」が動きだすので、語順を一考されてはいかがでしょうか。
“参った”

機織りや4万6千日の色

しまちゃん

夏井いつき先生より
「四万六千日」は漢数字にしてこそ。とはいえ、「四万六千日」は季語ですが、「~の色」と書くと比喩になります。
“ポイント”

我が浴衣裂き織りで手提げ袋に

よしあずま

夏井いつき先生より
「浴衣」が季語ですが、それを「裂き織り」の材料にする。季語としては、ギリギリのところ。そこから、更に「手提げ袋に」までいくと、季語の鮮度しては、いかがなものでしょうか。
“良き”

機織の音から革命を起こす

牧野冴

夏井いつき先生より
「機織」は「螽斯」の傍題ではありますが、その「音」から「革命を起こす」は少々強引。「機を織る」ほうの「機織」だとすれば、季語がなくなりますし、産業革命みたいな話になってしまうのではないかと。
“参った”

恩返し鶴の一声機を織る

秀翁

夏井いつき先生より
「機織りで鶴の恩返しを思いつきました。機織はキリギリスのことで、秋の季語になっていますが、季重なりになるのでしょうか」と作者のコメント。

おっしゃるとおり、「機織」は「螽斯」の傍題です。が、この句の場合は「機を織る」という書き方になっていますから、季語ではありません。とはいえ、「鶴」は季語ですが、この句の場合は「鶴の恩返し」という昔話の中の「鶴」ですから、季語としての鮮度は極めて低いということもいえます。つまり、無季の句になっているというべきでしょう。
“難しい”

老眼鏡かけし織姫手際よき

銀髪作務衣

夏井いつき先生より
この「織姫」は、比喩になっていると思われます。季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。
“ポイント”

裏紙へHBで描く朝の蝉

ふく

夏井いつき先生より
「兼題の『趣味』からデッサンへと発想を飛ばしました。起床して蝉の鳴き声を聞き、ささっと鉛筆でデッサンする様子を詠みました。最初は下五を『鳴く蝉よ』と考えていましたが、下五の詠嘆がしっくりこず『朝の蝉』にしました」と作者のコメント。

やろうとしていることは悪くないのですが、「蝉」を描いているのだとなると、季語としての鮮度に問題が出てきます。「朝の蝉」を上五に置いて、何を書いているのかを少し曖昧にするのが得策かもしれません。
“参った”

翡翠の如き織布を希けり

猫笑ふふ

夏井いつき先生より
「翡翠」を比喩として使うと、季語としての鮮度は落ちます。
“難しい”

秋の夜に音だけ響く機織りの

喜悦

夏井いつき先生より
「『機織り』はキリギリスの別名との事ですが、この句では季重なりになるのでしょうか? キリギリスの鳴き声と布を織る音のどちらかを、気分によって感じてもらえたら良いのかなと思いましたが……」と作者のコメント。

文字面からすると、キリギリスではなく、文字通りの機織りの音だと読めましたので、〈機織りの音のみ響く秋の夜〉とすれば……と思いましたが、「螽斯」の傍題「機織」として使いたいのならば、季重なりです。どちらにも読んでもらえたら……という考えは、この場合は損な選択です。
“ポイント”

長良川花火描くや機織りで

ともちゃ

夏井いつき先生より
「思い出の長良川花火を、浴衣の生地にできたらなぁと思った一句です」と作者のコメント。

描かれている「花火」は、季語としての鮮度が落ちます。「花火を浴衣の生地にできたら」ということでしたら、「浴衣」は季語として力を発揮できはします。
“参った”

帰せし腑の爪織り帯や秋彼岸

曽根朋朗

夏井いつき先生より
「最終的に落ち着いた心根、深く腹落ちしたその胴体に、爪織りの綴帯をしっかりと締め、亡くなられた先輩に事の顛末を報告する墓参、というような意味のつもりですが、分かり辛いでしょうか」と作者のコメント。

うーむ……ちょっと読み取りがたい。意味が詰め込まれてしまってます。やはり二句に分けるのが、妥当でしょう。「落ち着いた心根、深く腹落ちしたその胴体に、爪織りの綴帯をしっかりと締め」で一句。「先輩に事の顛末を報告する墓参」で一句、というとこでしょうか。
“良き”

目覚めれば株価上昇アロハシャツ

深山ほぼ犬

夏井いつき先生より
「株価上昇」と「アロハシャツ」の取り合わせは良いです。上五は一考の余地があります。
“ポイント”

また皆中夏袴姿の夫

のなめ

夏井いつき先生より
「『皆中』は弓道用語(?)で、『かいちゅう』と読みます」と作者のコメント。

「~姿」は不要です。この三音をどう使うか。ここが勝負所ですよ。
“ポイント”