第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう!⑤》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
身にしむや亡母の多趣味を羨まん
北川茜月
夏井いつき先生より
「亡くなった母は多趣味で、好奇心のままに色々と挑戦していました。今はそんな母がつくづくうらやましいです。『亡母(はは)』と読んで下さい」と作者のコメント。
下五「羨みて」ぐらいの柔らかい着地にしたほうが、上五「~や」が効いてきます。
下五「羨みて」ぐらいの柔らかい着地にしたほうが、上五「~や」が効いてきます。


夏ヒールにはモンロー潜んでいる
松りんご
夏井いつき先生より
「子供の頃、夏休みにパートに行く母の黄色いサンダルのヒールが、カツカツと鳴るのがとても女らしくかっこよかったのを思い出しました」と作者のコメント。
「夏ヒール」という季語の使い方は少々乱暴です。
「夏ヒール」という季語の使い方は少々乱暴です。


機織りの合間に眺む金魚かな
高嶺織人
夏井いつき先生より
中七「眺む」の終止形で切れるので、下五「金魚かな」の詠嘆があまり効いていません。後半を再考しましょう。
中七「眺む」の終止形で切れるので、下五「金魚かな」の詠嘆があまり効いていません。後半を再考しましょう。


織機欲しまだ買わぬかな星月夜
シラハマナオコ
夏井いつき先生より
「~欲し」の終止形、「~かな」の詠嘆で切れますので、三段切れです。
「~欲し」の終止形、「~かな」の詠嘆で切れますので、三段切れです。


角曲がり機織る音に赤蜻蛉
とおる
夏井いつき先生より
この句の場合は、どこかに切れを入れると、一句が締まります。中七を「~音や」と詠嘆することもできますし、語順そのものを替えることも可能です。ご自身でやってみましょう。


盆休み埃だらけの機織機
虎有子
夏井いつき先生より
休みだから、埃が溜まっている、という因果関係が述べられているように読めてしまうのが、損です。同じ「盆」の季語でも、「盆の月」「盆の波」などにするだけで、「休み(だから)」という因果関係が消えるのです。
休みだから、埃が溜まっている、という因果関係が述べられているように読めてしまうのが、損です。同じ「盆」の季語でも、「盆の月」「盆の波」などにするだけで、「休み(だから)」という因果関係が消えるのです。


花役者桜咲き散る晴れ舞台
恋の堀
夏井いつき先生より
「第53回『火の国公園のチューリップ』の〈桜散り咲くチューリップ惜しむ春〉の推敲です。『季重なり』とのご指摘で、『一句一季語からコツコツ練習してまいりましょう』とコメントを頂きました」と作者のコメント。
まずは、自分が表現したい内容を、普通の文章にしてみましょう。俳句のタネとなるべきフレーズを、客観的に見つけることができます。
「第53回『火の国公園のチューリップ』の〈桜散り咲くチューリップ惜しむ春〉の推敲です。『季重なり』とのご指摘で、『一句一季語からコツコツ練習してまいりましょう』とコメントを頂きました」と作者のコメント。
まずは、自分が表現したい内容を、普通の文章にしてみましょう。俳句のタネとなるべきフレーズを、客観的に見つけることができます。


夏空に吾のつばさ行方問ふてみる
丸山美樹
夏井いつき先生より
動詞「問ふ」が助詞「て」に接続する場合は、「問ひて」となります。中七が、やや寸詰まりな表現になっているので、合わせて一考してみましょう。
動詞「問ふ」が助詞「て」に接続する場合は、「問ひて」となります。中七が、やや寸詰まりな表現になっているので、合わせて一考してみましょう。


新絹のミトンは1.5デニール
藻玖珠
夏井いつき先生より
「農研機構が『麗明』という超極細のシルクを研究開発し、その軽くて優しい素材でミトンを作ったという話を聞いたことがあります」と作者のコメント。
俳句というよりは、報告になってしまったか。ここに詩を入れるにはどうすればよいか。考えてみましょう。
「農研機構が『麗明』という超極細のシルクを研究開発し、その軽くて優しい素材でミトンを作ったという話を聞いたことがあります」と作者のコメント。
俳句というよりは、報告になってしまったか。ここに詩を入れるにはどうすればよいか。考えてみましょう。


蜘蛛の巣に生き抜く技の力知る
清泉
夏井いつき先生より
「蜘蛛の糸で作られた、見事な巣にかかった獲物に襲い掛かる蜘蛛を見ました」と作者のコメント。
後半「~技の力知る」は説明の言葉です。俳句は、説明ではなく描写です。
「蜘蛛の糸で作られた、見事な巣にかかった獲物に襲い掛かる蜘蛛を見ました」と作者のコメント。
後半「~技の力知る」は説明の言葉です。俳句は、説明ではなく描写です。


天の川雲の上にて再会か
甘崎禅之助
夏井いつき先生より
織姫伝説をなぞった句になってしまいました。
織姫伝説をなぞった句になってしまいました。


梅雨冷えに織りの音聞き安否知る
あかつき
夏井いつき先生より
下五が説明の言葉になっています。俳句は、説明ではなく描写です。
下五が説明の言葉になっています。俳句は、説明ではなく描写です。


トンカラリ見てはならない鶴の業
すけたけ
夏井いつき先生より
「鶴の恩返し」の話をなぞっただけになってしまいました。
「鶴の恩返し」の話をなぞっただけになってしまいました。


消えぬ十字架聞けぬ想い彼の飛び降る夏
ゆきもち
夏井いつき先生より
「先生、申し訳ありません。テーマから完全に逸脱しております。ただ、昨年(2024年)夏に飛び降り自殺で亡くなった元夫が最後に見た景色、思ったこと、それらを二度とは聞けぬ悲しみと、救ってあげられなかった無力感や後悔の念を吐き出したく、投稿させていただきました。テーマから外れており、誠に申し訳ございません」と作者のコメント。
自分の思いを吐き出すのは、私たちが生きていくためには、とても大事なことです。俳句は、人生の杖。時間をかけて、ゆっくりと吐き出していきましょう。
「先生、申し訳ありません。テーマから完全に逸脱しております。ただ、昨年(2024年)夏に飛び降り自殺で亡くなった元夫が最後に見た景色、思ったこと、それらを二度とは聞けぬ悲しみと、救ってあげられなかった無力感や後悔の念を吐き出したく、投稿させていただきました。テーマから外れており、誠に申し訳ございません」と作者のコメント。
自分の思いを吐き出すのは、私たちが生きていくためには、とても大事なことです。俳句は、人生の杖。時間をかけて、ゆっくりと吐き出していきましょう。


雪の夜に見るなのタブー破る妻
⑦パパ
夏井いつき先生より
「『鶴の恩返し』を句にしてみました」と作者のコメント。
お話の中身をなぞっただけの句になってしまいました。
「『鶴の恩返し』を句にしてみました」と作者のコメント。
お話の中身をなぞっただけの句になってしまいました。


奢侈禁止江戸に木綿の流行る夏
山川腎茶
夏井いつき先生より
「奢侈禁止令により、贅沢なものは着れなくなった江戸の庶民。木綿の織物が登場して、木綿の着物が大変流行したそうです。ちなみに三重の松阪の商人たちは、その木綿を扱って大儲けして、豪商と呼ばれるようになったとか」と作者のコメント。
句材としては面白いのですが、結果論、歴史をなぞって終わった感が気になります。
「奢侈禁止令により、贅沢なものは着れなくなった江戸の庶民。木綿の織物が登場して、木綿の着物が大変流行したそうです。ちなみに三重の松阪の商人たちは、その木綿を扱って大儲けして、豪商と呼ばれるようになったとか」と作者のコメント。
句材としては面白いのですが、結果論、歴史をなぞって終わった感が気になります。


ねじり出る水道水や青林檎
けーい〇
夏井いつき先生より
「機織り→糸→紡績→ねじる→水道水のような、という連想を繰り返しての発想となってしまったので、兼題と遠くなってしまったのは反省点です。水道水がねじれるように出てくるのは不思議だなと感じています」と作者のコメント。
上五中七のフレーズ、良いですね。季語は動きそうだなあ。勿体ないと思います。
「機織り→糸→紡績→ねじる→水道水のような、という連想を繰り返しての発想となってしまったので、兼題と遠くなってしまったのは反省点です。水道水がねじれるように出てくるのは不思議だなと感じています」と作者のコメント。
上五中七のフレーズ、良いですね。季語は動きそうだなあ。勿体ないと思います。


甘酒やマクロファージの貪食す
けーい〇
夏井いつき先生より
「かなり前の話ですが、第5回 『廊下の吊り雛』《ハシ坊と学ぼう!④》〈甘酒や白血球の満たさるる〉の推敲句です。過去の投句を見ていて、『白血球の満たさるる』を具体的に描写すべきとのご指摘があったのを思い出し、推敲してみました。マクロファージは白血球の一種で貪食することで、老廃物・細菌等を体から除去してくれます」と作者のコメント。
いきなりスゴイ言葉がでてきましたね。この路線でいくのならば、中七「~の」ではなく、「~は」ではないかと。それならば、人選。
いきなりスゴイ言葉がでてきましたね。この路線でいくのならば、中七「~の」ではなく、「~は」ではないかと。それならば、人選。

