写真de俳句の結果発表

第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

第58回のお題「趣味は機織」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

あの柄の袋の中は水ようかん

朱葉

夏井いつき先生より
「機織のチェック柄を見て、あるデパートのチェック柄の紙袋を思い出しました。そのデパートで買う水ようかんをお土産に持ってくるお客様がいらっしゃいます。軽そうではないその袋の中身に、いつも期待してしまいます。『羊羹』か『ようかん』か悩みましたが、『ん』の上がって終わる字の方が気分があがるような雰囲気で、しかも子どもの視点にもなると思って、ひらがなにしました」と作者のコメント。

「デパートで買う水ようかんをお土産に持ってくるお客様」が見えてくる句になればベストなのですが……。そこを考えて、推敲してみましょう。
“ポイント”

手付かずの病院食と桜二輪

翠雨

夏井いつき先生より
第55回『食卓に花瓶」』〈テーブルに病院食と花二輪〉を推敲したものです。病院食の様子を記載して、臨場感のあるようにしてみました」と作者のコメント。

よくなっていますね。「手付かずの病院食」という措辞で、映像が立ち上がってきますし、状況も想像できます。助詞が「と」ですから、病院食と共に「桜二輪」がお盆の上に添えられていた? ということでしょうか。それとも、窓の外の桜がまだ二輪ほど、という意味でしょうか。下五の字余りは気になります。
“ポイント”

鶴という器を借りて海を飛ぶ

夢々

夏井いつき先生より
「鶴」を「という器」とする発想には、魅力があります。「~を借りて」という措辞は必要でしょうか。
“参った”

コロナ去り機織りの窓くちなしや

こころ美人

夏井いつき先生より
「機織りの窓」と「くちなし」の取り合わせはよいですね。「コロナ去り」のような状況説明は、不要です。
“ポイント”

七夕や星間近なり祖母の家

ふぃーかふぃか

夏井いつき先生より
「や」という切れ字、「なり」という終止形。典型的な三段切れになります。どこか一カ所を繋ぎましょう。
“参った”

ナンプレの消しカス浸るコーラの露

ボンちゃんのママ

夏井いつき先生より
「機織りの目から、ナンプレをしているとつい時間が経って、いつも飲み物の周りにつゆが溜まってしまうのを思い出しました」と作者のコメント。

「ナンプレの消しカス」と「コーラ」の取り合わせは佳いですね。残りの言葉の選択、もう一工夫あればと。人選は目の前です。
“参った”

心太猛し工事の止みぬれば

そーめんそめ

夏井いつき先生より
「住みながら家の改築をしました。昼間は電動工具のけたたましい音に辟易しました。夕刻やっと静かになり、冷たい心太でヤレヤレ」と作者のコメント。

この「猛し」は、ひょっとすると「工事」のことを言ってるのでしょうか? 「猛し」は終止形なので、「心太猛し」とここで意味が切れます。
“ポイント”

縁側の紙風船の山静かなり

にゃんちゅう

夏井いつき先生より
「幼い頃、内職をしていた母の作った紙風船たちが、夜の縁側で静まり返っていて、とても切なかった思い出です」と作者のコメント。

「縁側」という場所よりも、「内職」のものであることが分かるように書きたいですね。
“ポイント”

夏潮を織るごと機は潮匂ふ

高田ちぐさ

夏井いつき先生より
「夏潮」という季語が入っていますが、「~織るごと」と直喩になっています。この場合は、むしろ「夏潮を織るや」と隠喩にしてしまうことで、一瞬「夏潮」を感じさせる手もありはします。
“良き”

押入に眠る織機や彼岸西

青井季節

夏井いつき先生より
下五は「彼岸西風」でしょうか? 「彼岸西風」と書いて「ひがんにし」と読みます。
“参った”

夏掛の妻に夏掛かけにけり

立川猫丸

夏井いつき先生より
「季語は『夏掛』です。冷房のきいた寝室で、夏掛1枚で寝る妻に、自分の夏掛をさらにかけてやって家を出るのが朝の日課です。そもそも1枚で涼しい肌触りを感じられる夏掛を、あえて重ねて着せるのは、季語の本意を殺してしまっているかも、というのがやや気掛かりですが、冷房の効いた現代の寝室ならアリかな、と判断しました」と作者のコメント。

やろうとしていることは理解できます。更にもう一枚という状況が、さらりと分かるような、何らかのもう一工夫が欲しいところです。
“難しい”

心浮く織り機体験夏の事

惠桜改め さーやのママ

夏井いつき先生より
「心浮く」というのは、感想になります。俳句は、感想や説明ではなく、描写です。
“ポイント”

ハンモック愛読書は鳥図鑑

谷川ふみ

夏井いつき先生より
調べを整えてみましょう。この内容でしたら、定型にもっていくのが得策です。
“参った”

祭まだ一糸織る度ゆるむ口

高橋 誤字

夏井いつき先生より
「夏祭りで着る浴衣を自分で織り、楽しみで思わず口がゆるむ様を詠みました」と作者のコメント。

「祭」を季語とした時、そこまでの時間軸が少々長すぎるのではないかと。
“難しい”

カランコに独り言ちつつみどりの夜

せんかう

夏井いつき先生より
「『カランコ』=ホビーラホビーレ社製の卓上機織機」と作者のコメント。

「カランコ」の知名度の問題になるかと思います。「みどりの夜」と「機織機」の取り合わせはよいですね。
“ポイント”

マクラメの指の波打つ夜長かな

天風さと

夏井いつき先生より
「マクラメ編みに夢中になると、あっという間に時間が経ってしまいます。慣れてくるとリズミカルに、規則的に動く指は、客観的に見ると、波のようにも機械のようにも生物のようにも見えてきます」と作者のコメント。

「マクラメ編み」と書いたほうがよいでしょう。中七下五を「マクラメ編みの指波打つ」と整えてみましょうか。上五の季語を一考してみましょう。
“参った”

時忘れ趣味に没頭日暮や

恵翠

夏井いつき先生より
上五中七のフレーズに、意味の重複があります。どこなのか、考えてみましょう。
“良き”

羅(うすもの)の祖母は写真の中に生き

釋愚拙

夏井いつき先生より
「私の母方の祖母は、母を生んですぐに亡くなったそうです。母のアルバムの冒頭には、この祖母の写真が貼ってありました。贔屓目かもしれませんが、竹久夢二の美人画に出てくるような細身の素敵な人でした。母は、時々この祖母のことを語ってくれました。さしたる思い出もないというのに……」と作者のコメント。

「羅の祖母は写真の」と続いていくと、季語「羅」が写真の中のものになってしまうので、まずは「羅や」と詠嘆して、「写真」と切り離してみましょう。中七下五で「写真の中に生くる祖母」とすれば、その写真の中の祖母も「羅」を着ているのかもしれないと、想像してくれます。

添削例
羅や写真の中に生くる祖母
“ポイント”

打込みの弾む電話や月見草

峠の泉

夏井いつき先生より
「機織りは、緯糸の打込みはずっと同じ調子で続けなければなりません。夜なべ作業をしている際、嬉しい知らせの電話があると、ついつい打込みの力加減が変わってしまい、どうしても織り跡に段が付いてしまうのです」と作者のコメント。

この文字面だけだと、何の「打込み」なのかが分かりません。「機織り」だと分かるように、単語を一つ入れるだけで、光景が伝わり易くなります。
“ポイント”