写真de俳句の結果発表

第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊 NEW

第58回のお題「趣味は機織」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

高台(こうだい)を見せ合ふてをり新茶の香

感受星 護

夏井いつき先生より
「高校時代は陶芸部で、湯呑を作るときは高台の薄さを競い、見た目の重厚感と手に持った時の軽さのギャップを目指していました。この句では季語を主役にしたつもりですし、新茶の香が軽やかに湯呑の裏側を見せ合いしているかのように表現したつもりです。でも個人的な想い出としては、薄く作った高台を友達とどっちが軽いか本気で見せ合っていた想い出です(笑)。」と作者のコメント。

「合ふ」が「て」に接続すると、「合ひて」となります。
“ポイント”

青梅雨や喪服の塩の刺さる舌

感受星 護

夏井いつき先生より
第45回『ニースの塩』の投句〈青梅雨や清めの塩の刺さる舌〉(人選)の推敲句です。しかし、実際は送信の瞬間にミスに気づいた修正句です。投句以来、ず~っとモヤモヤしたまま気になっています。また、ハシ坊と思っていたところに、思いもかけぬ人選まで頂き、それはそれで大変有難かったのですが、全然納得感が無いのが寂しいのです。どうかこの句で再評価をお願いします」と作者のコメント。

「喪服の塩の刺さる舌」よりは、「清めの塩の刺さる舌」のほうが、表現としては明確です。「清めの塩」=お葬式の帰りかなと読めます。
“ポイント”

梅雨空に女工哀史の苦を想ふ

天龍蘇人

夏井いつき先生より
俳句において、「~を想ふ」と書く必要があるケースはとても少ないと考えて下さい。想っているから、その句が生まれているのですものね。
“参った”

緯糸に夏霧の涼織り込んで

妙啓

夏井いつき先生より
「夏霧の涼」という書き方が気になります。比喩になっているようにも受け取られますし。
“ポイント”

戯へ来てあぢさゐの毬はづみだす

佐藤さらこ

夏井いつき先生より
「兼題写真の織物の色から、『紫陽花』に思いを馳せました。『戯(そば)へ』は日照雨のことですが、「戯」と「毬」を取り合わせるのも面白いかなと思いました。日が照って少し萎えかけた紫陽花が、天気雨でまた生き生きとしてきた様子です」と作者のコメント。

普通に「日照雨」と書くほうがよいかと。
“参った”

古伊万里へ十薬生ける母の粋

千寿 ココ

夏井いつき先生より
「~の粋」は説明の言葉になります。俳句は描写ですよ。
“参った”

趣味欄に入れるものなし炎暑かな

華婦香 (カフカ)

夏井いつき先生より
中七「入れるものなし」という表現を一考してみましょう。この内容でしたら、「かな」と詠嘆するよりは、体言止めのほうが適切かもしれません。
“ポイント”

五年目のたまの佳作や夏の宵

雄蹴

夏井いつき先生より
「趣味の俳句を始めて五年が経ちます。おウチde俳句くらぶでは、数回、人選の評価をしていただくようになりました」と作者のコメント。

五年ですか。さまざまな型がありますので、意識的に一つ一つ覚えていきましょう。これからも、ご一緒にコツコツと俳筋力をつけてまいりましょうね。
“ポイント”

裸いふ尻にやさいのタテ五マス

奥伊賀サブレ

夏井いつき先生より
ちょっと意味が解読できないのですが……。
“良き”

中島みゆきの「糸」を口ずさむ晩夏かな

こはる

夏井いつき先生より
「かな」がどうしても必要ならば、中七の音数を調整して欲しいですね。「~晩夏」と体言止めにする方法もあると思いますが。
“参った”

ライバルは信金酒屋の星祭

となりの天然水

夏井いつき先生より
「機織といえば七夕。ということで平塚市の七夕祭りに行ってきました。お店や団体ごとに趣向を凝らした七夕飾りが町中に溢れ、飾りのコンクールも行われます。句は、もう少し小規模な町の商店街の七夕祭りをイメージして作りました。小規模とはいえ、毎年一等賞を目指して頑張っている酒屋さんが日本のどこかにいると思います」と作者のコメント。

やろうとしていることはよいと思います。季語「星祭」に対して「ライバルは信金」とあれば、状況は想像できます。「酒屋」という情報ではなく、むしろ「七夕飾り」の様子を描写する方が得策ではないでしょうか。
“難しい”

黒実鶯神楽の実を粛と煮る染師かな

三浦海栗

夏井いつき先生より
「アイヌ語で『ハㇱカㇷ゚(ハスカップ)』の和名を、『黒実鶯神楽(くろみのうぐいすかぐら)』と言います。ハスカップ染めと言う染色法があり、染色家がその実から繊細に色素を抽出する様子を、俳句にしました」と作者のコメント。

俳人心をそそられる面白い名前ですね。「粛と」「かな」あたりの言葉は、推敲の余地がありそうです。
“ポイント”

夏の海やはく曲がりて佐渡ヶ島

草夕感じ

夏井いつき先生より
あと一息、描写の精度をあげたいところです。
“参った”

まだ何者でもないけど栗の花

あが野みなも

夏井いつき先生より
「布になる前の糸を詠みたいと思い、地味だけれど独特の匂いで存在を思わせる『栗の花』と取り合わせました」と作者のコメント。

「まだ何者でもない」のが「糸」だと分かるようにしたいですね。
“難しい”

竿竹や手染めの糸と大根と

海色のの

夏井いつき先生より
第56回『百日紅の名所』では、ハシ坊2つありがとうございました! どちらも組長に指摘していただいた箇所は、これでいいのか自分でも迷ったところだったので、どういう理由でダメなのかきちんと教えていただけて嬉しいです!! この2つは少し寝かせておきます。今回の2つも自信ありませんが、もう時間がないので出します」と作者のコメント。

ハシ坊のアドバイスを、積極的な肥しにして下さってること、嬉しく思います。今回のこの句の問題は、「竿竹」「手染めの糸」「大根」が、それぞれバラバラに主張している感じになっている点です。「大根」は冬の季語ですしね。竿竹に、手染めの糸と大根がそれぞれ吊るして欲しいある? ということかなと推測しますが、映像がイマイチ曖昧です。
“ポイント”

夏暁に機織りの音母の里

吉田さと

夏井いつき先生より
上五の「に」は散文的になりがちで、要注意の助詞です。他の助詞、あるいは語順などを再考してみましょう。
“参った”

花ぐもり亡き母の炊飯器ゆずる

三毛猫モカ

夏井いつき先生より
第55回『食卓に花瓶』〈花曇り妣(ひ)の炊飯器を譲りし日〉の推敲句です。『妣(はは)』と読ませるよりは、普通に『亡き母』を使ったほうが良いとのアドバイスをいただいて、このようにしてみました」と作者のコメント。

ここまで推敲が進めば、更にもう一歩。「妣」という字を使わず、「亡き」と説明せず、「母」と書くだけで伝える。これが、俳句としてはベストな表現です。中七を「母の炊飯器をゆずる」とすれば、「亡き」と書かなくても、亡くなっていると想像できます。これならば、人選です。
“良き”

白絣藍染め色に枇の笑み

空素(カラス)

夏井いつき先生より
「枇」は、女偏の「妣」の入力ミス? とはいえ、亡くなった母を意味するこの漢字を安易に使うのは、あまりオススメできません。「母」と書いた上で、このお母さんは亡くなっているのかも……と読ませることができるのがベストです。
“ポイント”

秋近し棺の隅のスカーフ

葬送のまちばり

夏井いつき先生より
この内容でしたら、五七五の調べに整えるのが得策です。再考してみましょう。
“ポイント”