写真de俳句の結果発表

第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう!⑬》

ハシ坊 NEW

第58回のお題「趣味は機織」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

妣の句帳詠み終ふるとき夕焼空

ゆきえ

夏井いつき先生より
「詠み」でよいですか? 更に、「とき」と書かなくても下五に「夕焼」という季語がでてくれば、それは自ずと分かります。
“ポイント”

捨てられぬビー玉の底青き午睡

あおい

夏井いつき先生より
この内容でしたら、下五の字余りは解消して、調べを美しくしたいですね。「青き」は「午睡」にかかっていくのですよね? 「捨てられぬ」か、「底」か、どちらかの情報を外すことができれば、カンタンに推敲はできそうですが、どちらも入れたいとなると、少し難しい。
“ポイント”

機織の五千ヘルツのワンピース

ヒロヒ

夏井いつき先生より
「『機織の』とすべきか、『螽斯』とすべきか、迷いました。キリギリスの鳴き声の高さは5,000Hzとか、9,500Hzとか、言われているようです。虫の音を聴きながら機織り機でワンピースを織りました、という句にしたかったので、『機織の』としましたが、この俳句の場合、螽斯の傍題機織が季語として機能しているかが分かりませんでした」と作者のコメント。

この内容に対して、「螽斯」の傍題「機織」を使う効果、その必然性というのが、読み取りにくいですね。また、二つ目の助詞「の」が、更に解釈を難しくさせています。
“参った”

百個目は上賀茂神社蝉時雨

碁練者(ごれんじゃー)

夏井いつき先生より
「御朱印集めを趣味というとバチがあたりそうですが、妻が御朱印を集めており、一緒に各地を訪れております。上賀茂神社にお参りしたのは猛暑日でした」と作者のコメント。

何が「百個目」なのか、この字面では分かり難いのが、問題点です。
“ポイント”

母の手編みたち並んで時季を待つ

文心美

夏井いつき先生より
下五「時季を待つ」が説明になっています。手編みがそこに並んでいる、という映像を描写すれば、下五の内容は自ずと想像できる部分です。
“参った”

機織よこの六索は通らぬか

家守らびすけ

夏井いつき先生より
「機織りから、きりぎりすの別称に発想を飛ばしました」と作者のコメント。

この場面で、「螽斯」の傍題としてわざわざ「機織」を使う効果が、読み取りがたいです。
“参った”

一碗を引くや白雨の草庵

那乃コタス

夏井いつき先生より
字足らずの調べが気になります。この内容でしたら、五七五の調べにすることで、より生きると考えます。
“ポイント”

機織の止まれば柔き夏の雨

若林くくな

夏井いつき先生より
一句の内容に似合うように、後半の調べを柔らかくすると、佳句になります。「夏の雨」を表す季語の中に「白雨」があります。

添削例
機織の止まれば柔らかき白雨
“ポイント”

交差点烏降り立つ夏の朝

笑道心文

夏井いつき先生より
「車の往来もほとんどない夏の早朝、烏が交差点に降り立ち、ゆっくりとピョンピョン歩いていました」と作者のコメント。

なんと「交差点」に降り立った! ということを言いたいのならば、語順は逆でしょう。

添削例
夏の朝烏降り立つ交差点
“ポイント”

機織りで模様は紫陽花5色かな

もっさん

夏井いつき先生より
特別な意図がない限り、漢数字を使うことをおススメします。
“参った”

縁石でリリアンを編む浴衣の子

常然

夏井いつき先生より
上五の「で」は、散文的になるので要注意の助詞。どうしても「縁石」という情報が外せないのならば、この場合は、せめて「縁石に」とすべきでしょう。
“難しい”

あるじ無き錆びし檻に春の風

霜川このみ

夏井いつき先生より
原句は、第54回『パンダと観覧車』〈あるじ無きさびし檻に春の風〉です。『錆』の字が『春の風』には強すぎるかと思い、ひらがなにしたのですが、本意が伝わりませんでした」と作者のコメント。

なるほど、意味が分かりました。中七は、極力七音にするのが定石ですね。更に、「あるじ」ではなく「パンダ」と具体的に書いたほうがよいかと。
“ポイント”

機の音に気紛れに鳴くコオロギか

鶴喰 照

夏井いつき先生より
季語としての「コオロギ」は、特別な意図がない限り、漢字あるいは平仮名で書くことをオススメします。
“参った”