写真de俳句の結果発表

第58回「趣味は機織」《ハシ坊と学ぼう!⑭》

ハシ坊 NEW

第58回のお題「趣味は機織」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

銀漢の先の雑踏チャイの鍋

穂々々

夏井いつき先生より
「銀漢」と「チャイ」の取り合わせはよいです。「先」「雑踏」「鍋」までの時間軸がダラダラしています。とても勿体ない。
“ポイント”

河童忌やみどりで緑は染められぬ

悠美子

夏井いつき先生より
「緑滴る植物を絞って染めても緑色には染まらない、黄色と青色を掛け合わせて緑を出すとのこと。以前読んだ、草木染めの糸で染織をされる志村ふくみさんの本で知りました。植物の不思議を感じ、印象に残っていました。初めは植物や生命力を表す季語にしたいと悩みましたが、最終的には、人や人生が一筋縄ではいかないことと重なると思ったことを焦点に、季語を決めました」と作者のコメント。

中七下五のフレーズを良しとした時、この季語を取り合わせると、一句全体が観念に傾きます。再考をオススメします。
“ポイント”

織り込みぬ夕立の音と濡つ空

乃咲カヌレ

夏井いつき先生より
「『濡(そぼ)つ』です。織物で生計を立てているペルーの女性が、その日の気分や天候が、織る布の色や柄に反映されると言っていたのを句にしてみました」と作者のコメント。

上五を「織り込みぬ」と切らないで、「織り込める」と繋いだほうが臨場感が微量に増えます。
“参った”

経緯の灯影のみち曼珠沙華

帷子川ソラ

夏井いつき先生より
「『たてぬきのとうえいのみちまんじゅしゃげ』と読みます」と作者のコメント。

中七「灯影」を「とうえい」と読ませたいようですが、「ほかげ」とも読めます。音がやわらかになりますね。
中七を「灯影の道や」とすれば、人選です。
“ポイント”

秋風や祖母の棺に鶴入れる

那烏夜雲

夏井いつき先生より
下五の語順を逆にすると人選です。

添削例
秋風や祖母の棺に入れる鶴
“ポイント”

白南風や応援ユニで始発待つ

藤康

夏井いつき先生より
「プロ野球を観に、遠くの球場へ行くため、始発電車を待っている時の様子です。 中七の助詞は、『で』としましたが、『と』なのか? 『を』なのか? と迷いました。 語順も迷いました。〈始発待つ応援ユニへ白南風よ〉こちらの方が、風が吹く感じがすると思います」と作者のコメント。

第二案(?)の〈始発待つ応援ユニへ白南風よ〉の方が、風か吹く感じがするというご意見に賛同します。下五の「よ」という詠嘆ですが、中七の「へ」を生かすためには、むしろないほうがよいかと。ここは「南風(みなみかぜ)」と体言止めにする方が効果的です。

添削例
始発待つ応援ユニへ南風
“ポイント”

ギッチョンと鳴いた気がするキリギリス

太刀盗人

夏井いつき先生より
中七「鳴いた気がする」は、説明的な表現。この季語をカタカナ書きする意図も含めて、再考されてはいかがでしょう。
“参った”

忘却の祖父の帷子懐かしむ

小澤翔明

夏井いつき先生より
「忘却の祖父の帷子」とあれば、十分懐かしんでいます。
“難しい”

滝の激瀬織津姫の力量か

涼和人

夏井いつき先生より
「滝」という季語は入っていますが、中七下五は一種の説明になっています。「滝」という季語を描写することを意識してみましょう。
“ポイント”

夏の日にハワイへと踊るステージよ

石津 さくら

夏井いつき先生より
上五の「に」は、散文的になりがちな要注意の使い方。この場合でしたら、「夏の日や」と切るのが無難です。中七下五も「ハワイへと」から「踊るステージ」までの時間軸が飛びすぎています。ステージで踊っているさまを描写してみてはいかがでしょう。
“参った”

教室は西日針に糸通らぬ

キッチンハイカー

夏井いつき先生より
語順を逆にして、「針」のアップから始めると、季語も生きてきます。

添削例
針に糸通らぬ教室は西日
“ポイント”

織姫の紡ぐ五色の強さかな

志澤紫子

夏井いつき先生より
「七夕の時期、織姫は彦星を思って、機織りを一年間続け、やっと会える時がきたと。その意志の強さを思いました」と作者のコメント。

「織姫」の話をなぞった句に終わってしまいました。俳句は、自分を表現するためにあります。あなたご自身の「七夕」を詠んでみてはいかがでしょう。
“参った”

紡ぐ夢覗かないでと鶴の恩

永順

夏井いつき先生より
「機織りというと『鶴の恩返し』を思い出してしまいます。私にも隠れて叶えたい夢があります」と作者のコメント。

「鶴の恩返し」の話をなぞった句になってしまいました。この場合の「鶴」は、季語としての力も弱いです。むしろ、あなた自身の夢がなんだったのか、そちらを表現してみましょう。
“難しい”

山の師の忌日や菜の花越しの富士凛と

柳翠

夏井いつき先生より
第53回〈山の師の一周忌菜の花蝶に化す〉第55回〈約束の道に胡蝶と我ひとり〉をハシ坊にて取り上げていただきました。『山の師の忌日や』として後半を作ってみましょう、というご助言を頂きましたので、後半は故人が大好きだった富士山を、忌日の花とともに詠みました」と作者のコメント。

おおー! よくなりましたね。音数調整もかねて、最後の「凜と」を外すと、完成です。
〈山の師の忌日や菜の花越しの富士〉
「凜と」と書かなくても、「富士」は凜としておりますからね。菜の花の黄色と、富士の青、そして残雪の白も見えてきます。これで、山の師に捧げる素晴らしい追悼句が完成です。
“ポイント”

月日超え色褪せた椅子蝸牛

トコトコ

夏井いつき先生より
「色褪せた椅子」と描写しているので、「月日超え」と説明する必要はありません。
“ポイント”