俳句deしりとりの結果発表

第42回 俳句deしりとり〈序〉|「ちょう」①

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第42回の出題

兼題俳句

まれびとをもてなす皿いっぱいのちょう  三浦にゃじろう

兼題俳句の最後の二音「ちょう」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「ちょう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

ちょう」引けばページの多き暑さかな

令子

毎度おなじみの「○○から始まる単語なんてねえよ!」の逆バージョン。「ページの多き」は辞書かな。選択肢がたくさんあるってありがたいことですねえ、しみじみ。
“良き”

番3ミリずれて不貞腐る

ケンケン

番いギィーギィーギィー

ヨシキ浜

番顎関節を司る

渋井キセ乃

「蝶」だけど……「蝶番(ちょうつがい)」は生物じゃなくて道具だからなあ。季語がなくなっちゃいましたねえ。「蝶のつがい(夫婦)のことなんです!」と主張すればワンチャンある? いや~、苦しいよねえ。(苦笑) 
“ポイント”

番そぉっとはづせり朝曇

萌黄多恵

番だけ買ってきて海の家

里山子

番の外れ分け入る夏館

閏星

ちゃんと季語が入ってる「蝶番」シリーズ。《閏星》さんの句は小説の一場面みたいでわくわくしますね。蝶番が外れて傾いてるドアから勝手に少年達が町外れの洋館とかに入って行っちゃうタイプのやつ。とはいえ季語が小綺麗な「夏館」だし、そこまで朽ちてもいなさそう。ペニー・ワイズはいないよ。よかったね。

“とてもいい“

貝にあてる糸鋸竹すだれ

巴里乃嬬

初めてきく貝の名前だなあ。阿古屋貝や白蝶貝の異名だそうです。糸鋸をあてるということは、なにか貝自体を工作とかに使おうとしてるんだろうか。真珠を取り出す作業だったらナイフで開けるもんね。「竹すだれ」も涼しげな田舎の夏を思わせます。

“ポイント”

形骨の縫合痒し杉の花

星埜黴円

「蝶形骨(ちょうけいこつ)」と読むそうです。頭蓋骨の中央にある骨で、蝶が羽を広げた形をしてるんですって。幼少期は各パーツが分離してるんだけど、成長するにしたがって癒合してひとつの骨になる、とのこと。「蝶形骨の縫合」ってことは、なんらかの理由で癒合したはずの骨が分離しちゃったりしたんだろうか。うーん、頭蓋骨の内側がむずむずしてくるなんて医学素人的には想像するだけでヒエエってなっちゃうおそろしさだ。「杉の花」は花粉症を意識した取り合わせでしょうか。親しみやすい取り合わせのようでもあり、脱力系な肩透かしのようでもあり。
“とてもいい“

に会う風のトンネル開いていた

すけたけ

のいるガラスの奥へ帰りたい

丸山美樹

の庭祖母に「遅い」と怒られて

殻ひな

の来てまた飛んでゐる浜辺かな

さく砂月

ふつと消えて眩しき梢かな

山内彩月

よ蝶よ天使でしたか前世は

中島    紺

てふてふにまかせわたしはねむるだけ

千夏乃ありあり

生まる一直線の亀裂から

平岡梅

生まれる音聞いていて夜明

植木彩由

生る剥がしたがられる瘡蓋

鰯山陽大

葬に付せよ孵せぬ夢ならば

ノセミコ

そのものずばりな「蝶」シリーズ。出題元となった《三浦にゃじろう》さんの句に影響を受けたのか、幻想的な蝶の句が多くなってるのが面白い。《ノセミコ》さんは特に独特な鳥葬ならぬ「蝶葬」という造語を生み出しています。季語として扱って良いかは微妙なところではありますが……詩の言葉としてはぞっとする不気味さがあって個人的には好き。
“良き”

食にザリガニ釣れずパンを食ふ

東偽

食のテラス蜂蜜とっておき

若林くくな

季語として微妙といえば、こんな句も。ん、どれが季語だ? と一瞬迷いそうになる人もいるかもしれませんね。《東偽》さんの「ざりがに」は夏の季語。ザリガニ釣れたらザリガニ食べるつもりだったのか……?

《若林くくな》さんの季語は蜂蜜……ではなく「テラス」の方。夏の季語「露台」の傍題として扱われます。なんでテラスが季語なの!? と驚いてる人は歳時記で調べてみてね!
“とてもいい“

礼が長い体育館寒い

伊沢華純

礼やあくび噤みし閑古鳥

二〇二五周回遅れ

礼で友の転校知る四月

はしま

朝礼ネタ三句。身近なネタだと共感度高く読めますね。長い! 眠い! は二大朝礼あるあるじゃなかろうか。《はしま》さんの句は「四月」が瑞々しくて良いですね。「で」の助詞が若干散文っぽいんですが、それはそれで青年期の等身大な言葉と捉えれば許容範囲かなあ。
“良き”

営のプールのシャワーめちゃ痛い

横山雑煮

会費払わぬ家の牡丹かな

白スニ

議選知り合い多き夏燕

京あられ

議会異議なし異議なし大石忌

馬場めばる

「町」関係の言葉あれこれ。めちゃ痛いシャワーとか町会費払わない家があったりとか町議選に知り合いたくさんとか、妙に生々しくて愉快ですねえ。憎々しいくらい大きい牡丹が咲いてそう。《馬場めばる》さんの確信犯な「大石忌」との取り合わせも俳諧味があって好き。忠臣蔵でおなじみ、大石内蔵助の忌日です。「異議なし異議なし」が穏やかな話ならいいんですけどねえ。町長弾劾とかされてない? 大丈夫そ?
“とてもいい“

長の超ヤバい蝶頂戴す

あみま

「ちょう」をたくさん入れてみようチャレンジ、たぶん貴方がナンバーワンだ。町長がくれる蝶ヤバい蝶ってどんなのだろう……。ヤバいって希少価値とかお値段的に? それとも条例的に……? 議会から吊るされないか、無事をお祈りしておきます。
〈②に続く〉
“とてもいい“