写真de俳句の結果発表

第60回「双子のようなペンギン」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

第60回のお題「双子のようなペンギン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

ペンギンの並べて社畜か風の色

沼野大統領

夏井いつき先生より
「ペンギンがスーツ姿のサラリーマンに見えるというところ、秋の屋外の空気の寂しさを敢えて『色なき風』の傍題『風の色』を使うことで、虚無感を強めようと思いました。動詞『並べて』は『総じて』のような意味とも『並べる』という意味にもとれますが、『社畜』という単語が強いので『の』でぼかし、どちらの意味でも季語が立つようにしました(季語があまり強くないので難しい!)」と作者のコメント。

ご本人が最後に呟いていますが、この季語は難しいですよね。上五中七の寓意が見えすぎてしまうのも、ちょっと損かな。
“参った”

ペンギンの行方を追ひて秋の蝶

草夕感じ

夏井いつき先生より
「ペンギン」と「秋の蝶」、一句に生き物を二つ入れるのはバランスが難しいのです。中七を工夫すれば、方法はありそうです。
“ポイント”

受精卵二つの拍動十六夜

あが野みなも

夏井いつき先生より
「二卵性双生児の受精卵を、超音波で初めて見た時の同僚の動揺と喜びの入り混じった表情が忘れられません」と作者のコメント。

忘れ難い記憶ですね。季語が動くのではないかということも含めて、調べを意識して、最後のブラッシュアップにかかりましょう。佳句になりそうですよ。
“ポイント”

遠足の列に遅れる子とまはる

茂木 りん

夏井いつき先生より
「遠足や社会科見学、宿泊行事などの自由時間、友人と行動するよりも自分の興味のあるペースで見学したい子と一緒に廻ったり、少し離れた場所で見守っていました。報告の句から抜け出せていないかもと迷いましたが、今の力でできる範囲で詠みました」と作者のコメント。

「遠足の列に遅れる子」まで書けば、残りの音数はわずか。ここからの展開は悩ましいですね。が、いつか残りの四音で、作品を結球させてください。俳筋力をつけていけば、自分の力でいとも簡単にやれる日がきます。
“ポイント”

立つたまま眠るペンギン小望月

いしとせつこ

夏井いつき先生より
他にも、この上五中七のフレーズの句がありました。下五の季語が成否を分けます。
“ポイント”

極寒の海ペンギンの骨重く

加里かり子

夏井いつき先生より
「鳥の骨は空洞で軽いため、空を飛ぶことができます。一方、ペンギンの骨は密で重いので、海を泳ぐのに最適です。正に海を『飛ぶ』ペンギンです!」と作者のコメント。

なるほど、そういうことを表現したいのですね。この書き方だと、死んだペンギンの骨を手にしているように読まれてしまいます。自分の表現したいことに、言葉を寄せてみましょう。
“良き”

ペンギンの縦に並びて片蔭に

春駒

夏井いつき先生より
下五「に」は散文的な終わり方。「片陰」は「かたかげ」とも「かたかげり」とも読みますので、いっそ「に」を取ることをオススメします。
“参った”

ペンギンに尋ねる吾子は夏休み

竪山 ヒスイ

夏井いつき先生より
中七の「は」を、「よ」「や」と詠嘆するか、「の」と続けるかすれば、整います。考えてみましょう。
“ポイント”

すれちがう人みな連れと秋遍路

こりゆばんばん

夏井いつき先生より
第49回の『ブリガリアの道路』で〈秋晴るるお遍路さんの杖かるし〉にハシ坊の評価をいただきました。『遍路』が季語とは知らず、季重なりなので『秋遍路』で再考されてみては、とのご指導でした。少しでも俳筋力がついてたらいいんですが……。毎年秋になったら作句していきたいと思っています」と作者のコメント。

「秋遍路」は一人なのですか? 「連れ」がいるのですか? 助詞「と」が、ちょっと意味を分かりにくくしています。
“ポイント”

下嘴板を透かす春日のペンギン舎

草深みずほ

夏井いつき先生より
「王様ペンギンの嘴には、下嘴板という鮮やかな色の部分があり、徐々にくすんでいき春の換羽期には表面が剥がれ落ち、また鮮やかな色になると知りました。付け焼き刃の知識なので、表面的な表現しか出来ませんでした」と作者のコメント。

なるほど、「~を透かす」はそういう意味なのですか。描写として少し分かりにくいのが気になりますが、目の付け所はよいですね。もう一度、ペンギンを観察に行って、その部分の描写の精度をあげることを考えてみましょう。
“ポイント”

盆灯篭ふるさと遠し追想す

凛絆

夏井いつき先生より
〈盆灯篭/ふるさと遠し/追想す〉/線のところで意味の切れ目があって、三段切れになっています。この句の場合でしたら、「ふるさと遠く」とすれば、三段切れは回避できます。が、下五「追想す」と書かなくても、その思いは、上五中七だけでも伝わります。
“ポイント”

ペンギンの夢腹いっぱいの鰯かな

崇元

夏井いつき先生より
下五「かな」があまり利いてないので、いっそ取った方がよさそうです。原句は上五が七音の字余りですが、この内容ならば一音字余りにしてみるのも一手。

添削例
ペンギンの夢は腹いっぱいの鰯
“ポイント”

季重なり

人鳥の極寒の地よ我は汗

宮本てふ

夏井いつき先生より
「南極のエンペラーペンギンのオスは、ブリザードが吹き荒れると-50℃にもなる極寒の中で、絶食しながら抱卵や子育てをするそうです。日本が猛暑で喘ぐ頃、南極は真冬。彼らのことを思うと、ふと我に返ります」と作者のコメント。

下五で、いきなり「我は汗」ともってくるのは、ちょっと強引な展開です。
“参った”

夏日透けるまだ鬱病の水族館

勝亦朝

夏井いつき先生より
句材はとても良いです。「鬱病」と「水族館」の取り合わせは是非成功させたいですね。「透ける」は、「夏日」=日射しそのもの? 水槽を通ってくるひかり? 語順も含めて推敲の余地はありますが、しばしこの句材は寝かせておいてもよいです。まずは、沢山作ることで、俳筋力をつけていきましょう。 
“良き”

盆祭ふくよかなる義母は双子

陽だまり

夏井いつき先生より
語順が惜しいです。以下のようにすれば、人選です。

添削例
ふくよかな義母は双子よ盆祭
“ポイント”

ふくふくと縄文の塩染むる雉

早霧ふう

夏井いつき先生より
縄文の塩を雉に振っている? という状況でしょうか。だとしたら「雉肉に縄文の塩」とすれば、意味は通ります。が、真意はどこにあるのか。そこが分かると、具体的なアドバイスができるのですが……。
“ポイント”