第60回「双子のようなペンギン」《ハシ坊と学ぼう!⑩》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
旋毛みて双子の見分け小鳥来る
さくさく菫
夏井いつき先生より
「職業柄、双子に出会う機会が多い職場です。そっくりな双子をお世話するとき、輪郭や目つきやつむじで違いを探すことがあります(ちゃんとネームバンドをしていますよ)。生まれたての双子と『小鳥来る』が似合うのではないかと作りました」と作者のコメント。
敢えて「旋毛みて」と書かず、「双子の見分け方」と「小鳥来る」の取り合わせにしたほうが、作品が逆に豊かになります。あと少しの推敲で、一句が完成しますよ。
「職業柄、双子に出会う機会が多い職場です。そっくりな双子をお世話するとき、輪郭や目つきやつむじで違いを探すことがあります(ちゃんとネームバンドをしていますよ)。生まれたての双子と『小鳥来る』が似合うのではないかと作りました」と作者のコメント。
敢えて「旋毛みて」と書かず、「双子の見分け方」と「小鳥来る」の取り合わせにしたほうが、作品が逆に豊かになります。あと少しの推敲で、一句が完成しますよ。


ペンギンは空飛ぶ夢を短夜に
ミワコ
夏井いつき先生より
「ペンギンから空飛ぶ夢の連想は月並みの発想だと思いましたが、池袋の水族館で、まるで空を飛んでいるような行動展示をしているので、ペンギンの思いを飼育員の方が具現化してくれているのかなと思いました」と作者のコメント。
書こうとしている内容はよいのですが、助詞の使い方に散文臭が残ります。特に、最後の「に」が気になります。再考してみましょう。
「ペンギンから空飛ぶ夢の連想は月並みの発想だと思いましたが、池袋の水族館で、まるで空を飛んでいるような行動展示をしているので、ペンギンの思いを飼育員の方が具現化してくれているのかなと思いました」と作者のコメント。
書こうとしている内容はよいのですが、助詞の使い方に散文臭が残ります。特に、最後の「に」が気になります。再考してみましょう。


咬傷のファーストペンギン雪椿
ズッキーニン
夏井いつき先生より
上五中七の目のつけどころは良いと思います。季語が動きそう……というか、なぜ「雪椿」と。


夏休みオオウミガラスの目探す
八一九
夏井いつき先生より
「夏休み」と「オオウミガラス」の取り合わせ、いいですね。下五「目探す」とはどういう状況なのか。図鑑なのか、現場での観察なのか。ちょっと悩ましい。


鰯雲サンシャインから翔ぶペンギン
太刀盗人
夏井いつき先生より
「サンシャイン水族館のペンギンは、空中を翔んでるような展示をされてます」と作者のコメント。
書きたい意図はよく分かります。ただ、今回は似たような場面を書こうとした句が多く、更に季語「鰯雲」がどこまで主役に立っているか等、多少気になります。
書きたい意図はよく分かります。ただ、今回は似たような場面を書こうとした句が多く、更に季語「鰯雲」がどこまで主役に立っているか等、多少気になります。


ペンギンが共に聴き入る虫の声
小澤翔明
夏井いつき先生より
たった十七音の俳句の中に、「ペンギン」と「虫」、生き物が二つ入るのは、お互いに殺し合ってしまうので、とても難しい取り合わせです。これを実現させるとすれば、中七を工夫するしかありませんが、かなりの俳筋力を必要とする難題です。
たった十七音の俳句の中に、「ペンギン」と「虫」、生き物が二つ入るのは、お互いに殺し合ってしまうので、とても難しい取り合わせです。これを実現させるとすれば、中七を工夫するしかありませんが、かなりの俳筋力を必要とする難題です。


まだらボケ重陽を記憶しパパペンギン忘れ
小川 茜園
夏井いつき先生より
「まだらボケ」と説明する必要は、微塵もありません。残りの要素で、再考してみましょう。
「まだらボケ」と説明する必要は、微塵もありません。残りの要素で、再考してみましょう。


月蝕の夜にペンギンの葬列
天弓
夏井いつき先生より
「月蝕」と「ペンギンの葬列」の句想に、強く惹かれます。「~に」という助詞を一考してみましょう。佳句になりそうですね。
「月蝕」と「ペンギンの葬列」の句想に、強く惹かれます。「~に」という助詞を一考してみましょう。佳句になりそうですね。


ペンギンの背を照らしてや立待月
三日余子
夏井いつき先生より
「ペンギンの背や」として「月」の季語を取り合わせれば、「照らして」と説明する必要はなくなります。余った音数で何をするか。そこが、創作の勝負所になります。
「ペンギンの背や」として「月」の季語を取り合わせれば、「照らして」と説明する必要はなくなります。余った音数で何をするか。そこが、創作の勝負所になります。


抱卵の姿にほろり老爺の秋
蛙手
夏井いつき先生より
「卵を抱えるのはペンギンの雄。卵がかえるまでエサも食べず立ち尽くす滅私な姿に、若かりし頃、家族のために必死に働き養っていた自分を思い出して涙するおじいさん。若いっていいな」と作者のコメント。
「~姿にほろり」と自分の感想を書くよりも、ペンギンの抱卵のさまを描写してみましょう。その描写が完成すれば、その句を読んだ人も、あなたと同じ心情を抱いてくれるはずです。
「~姿にほろり」と自分の感想を書くよりも、ペンギンの抱卵のさまを描写してみましょう。その描写が完成すれば、その句を読んだ人も、あなたと同じ心情を抱いてくれるはずです。


ショー終えし水面のさざなみ夕日影
柳翠
夏井いつき先生より
この内容でしたら、中七の一音の字余りが損。中七の助詞「の」を取ってリズミカルにいくか、後半の語順を一考するか。あとは、下五の季語を再考すれば、完成です。


