俳句deしりとりの結果発表

第46回 俳句deしりとり〈序〉|「ぱく」④

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第46回の出題

兼題俳句

クウェートのスタンプ遠雷の万  駒月 彩霞

兼題俳句の最後の二音「ぱく」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「ぱく」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

Pax Romanaや八十回目の原爆忌

わおち

パクス・ロマーナ熊対グラディエーター

多数野麻仁男

パクス・ロマーナ夕焼を仰ぐ剣闘士

山内彩月

パクス・ロマーナ賢帝の初湯殿

鈴白菜実

パクス・ロマーナ皇帝も酔ふ生牡蠣よ

鍋焼きうどん

パクス・ロマーナ」ショートカットの小春

千葉水路(ミロ)

パクスロマーナの三連符鰯雲

めいめい

パクスロマーナの名残ぞ月の水道橋

中岡秀次

パクスロマーナ神殿の猫の恋

末永真唯

パクスロマーナ世界をおもう雨月かな

相州枕流

パクスロマーナ聖夜の雨の烟りをり

ノセミコ

パクスブリタニカ百年の蜃気楼

みづちみわ

Pax Americanaの無残秋燕

夜汽車

パクス・アメリカーナ時雨るる傘の下

沼野大統領

パクス・アメリカーナ凍てつく白銅貨

平本魚水

パクスアメリカーナの果てや生ビール

真夏の雪だるま

パクスアメリカーナの危機冬に入る

落花生の花

パクスアメリカーナ白亜を叩く虎落笛

氷雪

パクスジャポニカのひびきや昼の月

青井季節

パクス・ジャパン雁風呂よそれぬるくあれ

花屋英利

ラテン語で「ローマの平和」を意味する「パクスロマーナ」。元は紀元前1世紀末のアウグストゥス帝時代から五賢帝時代までの約200年、古代ローマの黄金時代を指す言葉です。「パクスブリタニカ」はかつてのパクスロマーナになぞらえて19世紀イギリスの繁栄ぶりを称えた言葉、そこからさらに時代が下って「パクスアメリカーナ」や「パクスジャポニカ」へと続くわけですね。それぞれ微妙にニュアンスが違い、「パクスアメリカーナ」はアメリカが中心となった国際秩序、「パクスジャポニカ」は日本がリードする平和、という意味のようです。どの時代に対しても、皮肉な目線で捉えている句が見受けられるのが人類の業を感じさせますなあ。平和ってなんだっけ。

こういう社会的な性質を帯びる句を作る時に難しさを感じるのが、言葉に複数のニュアンスが付け加わること。たとえば《みづちみわ》さんの「蜃気楼」は春の天文の季語だけど、イギリスの栄光時代とその翳りを暗喩したいのだろうな、と読者は感じ取ります。では、「蜃気楼」が季語としてどこまで機能しているか? 暗喩の分量に軸足が寄りすぎていないか? と疑問が生まれてくるわけですね。他にも《沼野大統領》さんの「時雨るる傘の下」は核の傘について暗に示しているんだろうなあ、とか。「パクス・アメリカーナ」との取り合わせがより強くその結びつきを感じさせます。その点、《わおち》さんは「Pax Romana」という原点の言葉に対して「原爆忌」を取り合わせる距離感のコントロールに気配りが感じられます。
“良き”
 

PAX KONAN」手配り花の校門に

青に桃々

これも今までの例に当てはめると……コナンによる平和? コナンって国じゃないよね?? コナンで平和って言われると『名探偵コナン』が思い浮かぶけど、最近の映画だともっぱらどんぱちアクションしてて平和にほど遠いんだよな。

調べたところ、可能性が浮上してきたのは駐車場事業を運営する会社。「花の校門」となると、卒業・入学シーズンに社名入りのポケットティッシュとか配ってるのかしら。立地によっては、学校に駐車のキャパがないので周辺のパーキングをご利用ください、って場面もあるもんねえ。
“ポイント”

パクノダの決意の銃や月天心

くるぽー

パクノダの銃弾かわしちゃって秋思

ふるてい

こちらは冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』。めっちゃ良いシーンなので、パクノダわからない人は読もう。銃弾かわすとか幻影旅団の過去編読んだら余計に罪深すぎて許されざるよ。おまえーっパクノダがなーっジャッジメントチェーンをなーっゆるさーん!
“良き”

パクパクデスワの単勝買いよ色葉ちる

東田 一鮎

単勝買いとくれば競馬関係でピンときた人も多いかも。「パクパクデスワ」は競走馬の名前です。デビュー戦で逸走してしまって14頭中13着だったそうですが、その時の馬券も葉が散るように宙を舞ったのかねえ……。

ちなみに名前の元ネタは『ウマ娘プリティーダービー』のメジロマックイーンが発祥らしい。JRAの競走馬情報で確認すると「馬名意味:健啖である様子+ですわ」とまじめに解説されてるのが二重に味わい深い。

“とてもいい“

パクリタキセルパクリタキセル蜜柑たわわ

爪太郎

パクリタキセル雪風つていい気持ち

清水縞午

パクリタキセル休薬日記買う

山羊座の千賀子

《爪太郎》さんと《清水縞午》さんの句見てる間は競馬かな(?)って思ってたけど、どうも違うみたい。「パクリタキセル」は抗がん剤の名前で、副作用の出方によっては休薬が必要になるそうです。《山羊座の千賀子》さんの句はそういうことなんだねえ。「パクリタキセル休薬」と淡々と事実を述べる前半と「日記買う」との取り合わせ。その日記には闘病の記録が綴られていくのでありましょう。合計で十六音、一音字足らずの形が心理的な不安定さも思わせる仕掛けとして機能しています。

“とてもいい“

ぱくたその門松使い年賀状

海苔のりこ

ぱくたその大川氏載る年賀状

夏村波瑠

ぱくたそ」の友に似た顔芋煮会

はしま

ぱくたその新着は雪ここも雪

若山 夏巳

「ぱくたそ」は写真素材を無料提供しているwebサービスとのこと。へぇー、知らなかった。年賀状用の門松写真とかもあるんですねえ。《夏村波瑠》さんの「大川氏」は、ぱくたそでモデルを務める大川竜弥さんという方のようです。他にもたくさんのモデルがいるそうで、被写体が友達に似てるなあ……と思ったら実は! なんてことも実際あるのかもしれないねえ。《若山 夏巳》さんの句は時間の捻れ具合が詩を生んでいます。新着写真の雪は今この瞬間の雪ではなく、もっと以前に撮られたものであるはずなのに、作者の過ごす時間と同期しているかのように感じられる。現代的なお洒落さのある一句であります。それこそぱくたそにキャッチコピー句として売り込んだらワンチャンあるのでは!?

“とてもいい“

パクストンチェアの傾き冬銀河

春乃歌奈

調べてみると二つ候補が出てきました、パクストンチェア。ひとつはAINEXT社のブランド名、PAXTON。仕事用ゲーミングチェアなどを販売しているようです。もうひとつはBAYCREW’S GROUPの展開するJOURNAL STANDARD FURNITUREがオリジナルチェアとして販売している商品名、そのものずばりパクストンチェア。個人的には後者のデザインが可愛くて好きなんだけど「傾き」が活きてくるのはどっしり背もたれに身を沈められる前者かなあ。傾きに身を沈めた視界に広がる「冬銀河」の美しさで一句を締める目線誘導が的確であります。
“ポイント”

パグウォッシュ会議秋闌く広島へ 

佐柳 里咲

なんだろう、パグウォッシュ会議って。原稿を書きながら目の前にいたいつきさんに「パグウォッシュ会議って知ってる?」と聞いてみたところ「知らん。犬洗うの?」って返ってきました。親子で発想が一緒で安心するやら情けないやら。

「パグウォッシュ会議」は1957年に設立された世界の科学者の集う組織で、核兵器廃絶をはじめとした科学と社会の諸問題に取り組んできたそうです。「秋闌く広島へ」も実話で、令和7年の11月1日から5日にかけて広島で世界大会が開催されていたとのこと。

ちなみに「パグウォッシュ」は1957年に第1回の科学者の世界会議が開催されたカナダ東部にある小さな村の名前だそうです。海水浴に適した砂浜があり保養地として夏には人が増えるそうな。行ってみたいね。
“ポイント”

パクシ島ギリシャの海をサンダルで

銀猫

パクシ島トロ箱の烏賊の光る光る

狐狸乃

パクシ島も雨やっぱり神の留守

藤井 春

パクシ島宿の予約を終へ薄暑

はなぶさあきら

パクシ島旅程忘れるハンモック

夏至硝子

パクレニは空と海なり草の花

みなごん

パクレニ諸島より焼藷食べに来た夫人

ヒマラヤで平謝り

パクレニ諸島松の花咲くとほき国

丸山美樹

こういう句見てると旅行に行きたくなりますなあ。パクシ島はギリシャのイオニア海にある島、パクレニ諸島はクロアチア南部のアドリア海にある諸島群だそうです。あたい、ヨーロッパ大好き。それぞれの場所を知らなくても、句を眺めてるだけでどんな土地か想像できてくるのが楽しい。《丸山美樹》さんの「松の花」って海外でも咲くんだろうか。日本人的には日本の植物なのでは(?)って先入観があったんだけど、調べてみるとパクレニ諸島の海辺に松とローズマリーの香りが漂う、って記述が見つかりました。嗅覚もまた人を楽しませる大事な五感でありますねえ。
“ポイント”

パクーなる魚はめだか知らざらむ

春野つくし

知らないなあ、パクーって。南米原産の魚だそうで、見た目はめだかを縦に100倍、横に50倍大きくしたような姿をしています。味は非常に美味しく、焼いても煮ても良い食材なのだとか。句全体を意訳すると、パクーという魚はめだかを知らないだろう、といった意味になります。住んでる場所が全然違うだろうし、そりゃあねえ……。ちなみにパクーは雑食性で、木の実と間違えて男性の睾丸を食べる、という迷信があるそうです。こっわ。迷信で良かった~、
“ポイント”

パクォーンと瓶の蓋飛ぶ猿酒よ

感受星 護

オリジナリティあるオノマトペ。パコーン! じゃなくて「パクォーン」なのが聴覚をよく働かせましたなあ。「猿酒」は俳人好みな空想的な季語。猿が木の実を蓄えていた樹木の空洞や岩の窪みに雨や露が溜まって自然に発酵して酒となったものといわれています。採取してきた猿酒を瓶詰め保管しておけばこんな場面をお目にかかれる……のかなあ? 吟行してみたいけど、まずは猿酒をみつけるところから大難問!?
“良き”

ぱくたれのユンボ額づく夜這星

翡翠工房

「ぱくたれ」は方言、あるいは業界用語のようですね。少なくとも手元にあった2004年版『日本国語大辞典』には掲載がなかったものの、ネット上を探してみると「ポンコツ」とか「どうしようもない」といった文脈での使用が確認できます。動くかどうか定かでない状態のユンボがショベルを地に着けている、人気の無い夜の作業場の光景が見えてきますね。流星の傍題である「夜這星」を取り合わせたのも良い判断。流れ星だとロマンチックさや動かないユンボへの哀れみのような感傷が強くなりますが、「夜這星」の俗っぽさが感傷から距離をとってくれました。
“ポイント”
第48回の出題として選んだ句はこちら。

第48回の出題

ぱくぱくとひかりに醒めゆけるきちかう

佐藤儒艮

「きちかう」とは桔梗のこと。淡い紫色の星形が印象的な桔梗ですが、開く前の蕾は菱形に近い形状をしています。陽射しを浴びると徐々に蕾が膨らんでいき、開く際にはかすかに「ぱく」と音をたてます。「ひかりに醒めゆける」はその様を描写した言葉。眠りからの覚醒を意味する「醒め」の表記にも気が使われています。また、「ぱくぱく」によって桔梗の花の量感を確保しているのも上手いポイント。一輪だけが咲くなら「ぱく」と一度音がして終わりですが、「ぱくぱく」の繰り返しと「醒めゆける」によって、多数の桔梗が次々と音をたてて開いていく時間が十七音にパッキングされています。秋の暁を迎えていく空間の清らかさと「きちかう」という古語の響きも美しく調和しており、うっとりしますねえ。良い季節だね、秋って。

ということで、最後の二音は「こう」でございます。 
歴史的仮名遣いで「きちかう」なので音的には「こう」ですね。

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう! 
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!

“とてもいい“