写真de俳句の結果発表

第63回「十数年ぶりの大阪」《ハシ坊と学ぼう!②》

ハシ坊

第63回のお題「十数年ぶりの大阪」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

季語なし

一昔道頓堀に夢追って

かんな

季語なし

にぎわいの通天閣の孤独かな

かんな

夏井いつき先生より
二句ともに、明確な季語が欲しいですね。例えば、「道頓堀に夢を追う」と中七下五のフレーズを整えたら、上五に季語を入れてみましょう。この型からの練習ですよ。
“ポイント”

季語なし

粉もんに地酒を囲む難波かな

山田 健二

季語なし

文楽の尚盛んなる難波かな

山田 健二

夏井いつき先生より
二句ともに、明確な季語が欲しいですね。「文楽の」の句は、「難波」の解説になっているのが損です。「文楽」が盛んであることを、どんな光景が感じさせたのか。そこを描写してみましょう。
“ポイント”

季重なり

てっちりも松から梅へ木の葉髪

アルルくん

夏井いつき先生より
「てっちり」も冬の季語ですから、「木の葉髪」との季重なりになります。どちらの季語を主役にしたいのか、自問自答してみましょう。
“参った”

季重なり

手にのせてみかんの匂い冬ひらく

猫日和

夏井いつき先生より
「今年のみかんは豊作だそうです。店頭にみかんが並ぶと冬の到来です。みかんの皮を剥いた時の香りを思い、詠みました」と作者のコメント。

みかんの香りが冬をひらくという感覚には、共感します。ただ、「みかん」「冬」どちらも季語なので、表現に工夫は欲しいところです。
“参った”

季重なり

冬晴れやふぐ提灯の影寒し

夏井いつき先生より
「冬晴れ」と「寒し」、季語が二つになりました。どちらか一つにしましょう。
“参った”

季重なり

冬冴ゆる変わらへんねビリケンさん

横須賀うらが

夏井いつき先生より
「冴ゆ」だけで冬の季語なので、上五を推敲しましょう。
“ポイント”

大銀杏見上げる空の迫り来て

北川茜月

夏井いつき先生より
「大銀杏」とは、大きな銀杏の木のことでしょうか。「銀杏」の場合は、「銀杏黄葉」「銀杏散る」などとすれば、季語になりますが、銀杏の木そのものでは季語になりません。「銀杏」を「ぎんなん」と読ませれば、銀杏の実を指す季語にはなります。
“良き”

ご無沙汰のビリケンさん遠足ぶり

犬山侘助

夏井いつき先生より
「想像で書きました。小学生の頃の遠足。通天閣のビリケンさんを見た時の足は、今よりも色が擦れていませんでした。本当にご無沙汰なんだなと思いました」と作者のコメント。

「遠足」は確かに季語ですが、句意としては、小学生の頃の遠足ぶり=今、遠足で来ているわけではない……ということになりますので、季語としての鮮度はとても低い。想像も大事な要素ですが、まずは実体験を俳句にするとこから、俳筋力をつけていきましょう。実体験ほど、リアリティ&オリジナリティのある句材はありません。
“ポイント”

ふぐ鍋の淡し結婚しない娘と

ぐわ

夏井いつき先生より
河豚鍋が「淡し」とはどんな感じなんでしょう。味? 河豚が少ない? イメージ? ここをもう少し明確にしたい。
“難しい”

初旅の路地を軽やかソースの香

星鴉乃雪

夏井いつき先生より   評価    並 
このままでも並選以上は確保できているのですが、「~を軽やか」の部分。位置や言葉の選択について、再考してみる価値はあります。
“ポイント”

君の肩あと二センチや浜日傘

柳翠

夏井いつき先生より   評価    並 
第59回『色っぽい流木』〈黒髪のなびく横顔夏の海〉を並選にしていただきました。表したかった『素敵だなと思う人と海にきてドキドキしている感じ』が伝わるように変えてみました」と作者のコメント。

「素敵だなと思う人と海にきてドキドキしている感じ」は確かに伝わります。そういう意味で、並選の評価はできます。ただ、好きな人=「君」と二センチで触れることができる、というような類想はかなりあるかと。更に、上五中七の言いたいことに対して、季語「浜日傘」が添え物になっている点にも、推敲の余地はありそうです。
“ポイント”

冬日和地底の太陽を探す

のなめ

夏井いつき先生より
「前回の1970年の大阪万博のモニュメント・太陽の塔の4つ目の顔『地底の太陽』が行方知れずだと、初めて知りました」と作者のコメント。

句材は面白いと思います。が、これを成功させるためには、「冬日和」のような季語では、受けとめきれないのではないかなあ。今すぐ、この句材を結球させるのは難しいかもしれません。来年、再来年と俳筋力の指標だと思って、ゆっくり育てて下さい。
“難しい”

大阪やビリケンさんもくしゃみかな

シラハマナオコ

夏井いつき先生より
「や」「かな」と、切字が重なりました。感動の焦点がブレるということで嫌われます。どちらかを外して、推敲してみましょう。
“ポイント”

夏果てぬ青春の欠片よ何処

とおる

夏井いつき先生より
「高校3年生の夏休みの一ヶ月間、大学受験の為の夏期講習を受けるために大阪の親戚に泊めてもらった時の、大阪の下町の猥雑さや喧騒が忘れられません。今でも時々カラオケで『大阪で生まれた女』を歌っています」と作者のコメント。

このような感慨を抱くことには共感します。ただ、この句には具体的な映像がないため、読者としては食い足りないのです。作者コメントに、具体的な言葉がいろいろ入っています。俳句は、描写であることを念頭に、再考してみましょう。
“参った”