第47回 俳句deしりとり〈序〉|「いづ」①

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第47回の出題
兼題俳句
ガヤ島のホテル部屋より泳ぎ出づ 伊藤 恵美
兼題俳句の最後の二音「いづ」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「いづ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
いづいづいづ思い付かずに日短か
花岡貝鈴


出雲路に競ふ荒星啼くうさぎ
大月ちとせ
出雲路の桜は紅し一人旅
のぐちゃん
出雲路やぎぼしに積もる京の雪
唯野音景楽
出雲路や異人邦人蜆汁
北斗星
出雲路や雲曳きゆく龍蛇神
種月 いつか
出雲路や砂の器の冬枯るる
おりざ
出雲路や神の行き交ふ冬の空
はるを
出雲路をいざいざ襷稲穂波
飯村祐知子
出雲路を香気ふんぷん神集ひ
金魚
出雲旅冬日に伸びる木の鳥居
岸来夢
出雲から秋の便りとお福分け
輝虎
出雲から雪の街へとフルムーン
内田ゆの
出雲てふ日の入るところ年惜しむ
西川由野
出雲なる神の裾引く雨氷かな
那乃コタス
出雲には「ばけばけ」ファンや冬間近
シラハマナオコ
出雲にはいつも神在り神無月
スマイリィ
出雲には神もお化けも湯婆抱く
山内彩月
出雲の御守り色褪せ煤払ひ
赤味噌代
出雲の神のややこしや蜜柑剥く
コミマル
出雲の神は注連作ご覧なる
京あられ
出雲の地契交わすや大社凍て
びんごおもて
出雲の地同僚越しの山赤し
あがりとむらさき
出雲へと神の旅立ち雲流る
沙魚 とと
出雲へと神は不在や神無月
あさり丸
出雲へのナビ丁寧に紙の旅
松本厚史
出雲への一本道や淑気満つ
真秋
出雲への特急は「満」神の留守
だいやま
出雲までゆきたし蝶の多きかな
丸山美樹
出雲より神は来ませりクリスマス
ヒマラヤで平謝り
出雲より来し花嫁よ秋麗
宗元
出雲より流れくる雲冬田道
千夏乃ありあり
出雲阿国めきたるけふの花吹雪
片山千恵子
出雲去る神のギフトの初雪よ
尾長玲佳
出雲行きのバスに旅寝や年越す夜
キャロット えり
出雲行き毛糸編む手や揺れに揺れ
斎藤 マカロン
出雲行き列車冬日に吸ひ込まれ
咲葉
出雲発夜行ベッドににごり酒
かたじん
出雲崎しほさゐ近き宿に覚む
やどかり
出雲蕎麦に父の初恋石蕗の花
巴里乃嬬
出雲そば割子の残りづゆわずか
みそちゃん
出雲そば昨日の夜はキミの傍(そば)
すけたけ
出雲社に蕎麦よ香し神議り
昇椿
出雲社に玉砂利の音や神無月
閏星
出雲社に詣でて四十余度の春
白石ルイ
出雲社の玉砂利冷たし一人旅
桃華
出雲大社の聳え立つ松うらら
みえこ
出雲大社新嘗祭これの試食はないのかね
横山雑煮
出雲大社神在月の豪雨よ
天雅
出雲大社友と行ったよ縁結び
メグ
出雲族の伝説冬虹のかすか
豆くじら
出雲富士杯へなみなみ神在月
むい美縁
今回の出題句となった《伊藤 恵美》さんの〈ガヤ島のホテル部屋より泳ぎ出づ〉に対してアプローチの仕方を迷った人も多かったようですね。「兼題句は歴史的仮名遣いで『出づ』って書いてるけど、『いず』でもいいの? 『いづ』じゃなきゃダメなの?」って具合のお悩みがちらほら。しりとりは基本的に発音をベースに考えてますから、「いづ」でも「いず」でも今回はOKです。トップバッターになった《花岡貝鈴》さんも「いづ」で考えた結果、思考の迷路に陥ったんじゃないかと推測します。ちなみに「出雲」は歴史的仮名遣いだと「いづも」と書くので「いづ」に拘る方にもバッチリ対応!


伊豆の湯にゆったり漬かる冬銀河
閑か
伊豆の湯に初日登りて裸婦染める
丘ななみ
伊豆の旅サボテン見上げ一休み
希子
伊豆の旅飛び魚釣りの集魚灯
小川都雪
伊豆の海老皿に動きて年惜しむ
清水ぽっぽ
伊豆の宿投了までの霙かな
山河美登里
伊豆の宿髭ぶん回す伊勢海老来
三尺 玉子
伊豆は秋ルビ婚式はりんご飴
若林くくな
伊豆へ行く富士の初雪伴ひて
暮待あつんこ
伊豆より柿来継母また矍鑠
宙ほのか
伊豆一周ヒッチハイクの夏の空
鷹見沢 幸
伊豆急の海向き座席いわし雲
天風さと
伊豆高原の小さき聖樹の保養所よ
あま門
伊豆山に舞う風花や土石跡
閑陽
伊豆山の挙兵佐殿夏の天
狐狸乃
伊豆山へ政子走るや冬銀河
うきりん
伊豆の冬ペルリ艦隊再上陸
坂野ひでこ
伊豆諸島ひとつひとつの台風禍
青屋黄緑
伊豆沼の真雁や空を重くして
青野みやび
伊豆沼の蓮の合掌夜半の月
骨の熊猫
伊豆沼を飛び立つ雁や十万羽
板柿せっか
地名グループでは出雲に次いで多かったのが「伊豆」。湯、旅、宿、などなど、さすがは日本有数の温泉地でありますねえ。一方で《狐狸乃》さん、《うきりん》さん、《坂野ひでこ》さんのように歴史上の出来事に句材を求めたケースもあります。《狐狸乃》さんの句に出てくる「佐殿」とは源頼朝のこと。《うきりん》さんの「政子」、北条政子とあわせて鎌倉時代の逸話ですねえ。《坂野ひでこ》さんの「ペルリ」は1854年に伊豆の下田港に来航したエピソードから。それぞれ句材としてはへぇー感があるんだけど、過去の出来事を描こうとした結果、季語の鮮度が薄くなってるのが難点。僅差ではあるけど、中七の「や」で明確な切れを作った《うきりん》さんが半歩リード、って感じかなあ。


五浦(いづら)の地踏む大観に青岬
鍋焼きうどん
五浦海岸(いづらかいがん)六角堂に宵の月
よはく
五浦湾睨むる鮟鱇吊るし切り
青井季節
五浦のホテル鮟鱇の解体ショー
原島ちび助
五浦海岸の朝揚がる鮎並
銀猫
《青井季節》さん、《原島ちび助》さん、《銀猫》さんは学術的なことはさておいた食いしん坊トリオ。海産物も豊かなお土地なんですなあ。ちなみに「鮎並」は鮎を並べてるんじゃなくて、「鮎並(あいなめ)」という立派な春の季語。浅い岩礁域などに生息します。歳時記には鮎に似た味を愛でたことからついた名、と解説がありますが、その他にも各地で様々な呼び名があるようです。たとえば地方名の一つには「籾種失(もみだねうしない)」があるそうです。あまりに美味しく、来年の籾種にする米まで食べてしまうのが由来……だとか。へ~、そんなに美味しいの!? 食べてみたい!!


出石町を読めぬ人ゐて秋祭り
香亜沙
出石そば手形カタカタ秋の空
江口朔太郎
出石にて新蕎麦で競う皿の数
紫陽
出石城皿の新蕎麦二十枚
碁練者(ごれんじゃー)
出石焼白肌冴えてより白く
太井 痩
出石ではしろ田で聞こゆ辰鼓楼
老蘇Y
出石の冬空辰鼓桜すくっと
むらのたんぽぽ
出石永楽館迎春の桟敷席
国東町子
出水では鳥飛来して霜を踏む
はま木蓮
出水市の新酒届きし古希祝
落花生の花
《はま木蓮》さんと《落花生の花》さんの「出水」も読み方の規則としては「出(いず)+水(み)」となるのかな。他にも探したら日本全国に「出+○」の地名ありそうね。こちらの「出水」は鹿児島県の北西部にある市でしょうか。鶴の飛来地として有名なようです。市の鳥も鶴なんだって。市のウェブサイトを見てみると「鶴のまち俳句賞」ってコンテストが開催されててちょっと嬉しい。PDFで直近二回の結果が見られるんですが、工業高校の句、どれもリアリティがあって好きだなあ。
《②に続く》



