俳句deしりとりの結果発表

第47回 俳句deしりとり〈序〉|「いづ」②

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第47回の出題

兼題俳句

ガヤ島のホテル部屋より泳ぎ出づ  伊藤 恵美

兼題俳句の最後の二音「いづ」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「いづ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

いづうでっせ」と念押しされし年用意

桐山はなもも

いづう」にて鯖寿司食めばコンチキチン

池田義昭

いづう」寄り祇園会の夜の御進物

おこそとの

いづうにて鯖寿司求めはや家路

瀬文

いづうの御持たせ持て成しは走り茶

草深みずほ

いづうの鯖寿司や竹の皮にも香

窪田ゆふ

いづうの鯖寿司祇園の石畳

信茶

いづうの鯖寿司紙皿に盛る新居の夜

かなかな

いづうの寿司買うや退職の夕焼け

鈴木そら

いづうは右手一人熱燗は左手

日月見 大

いづう寿司いなりと鯖の七五三祝

ズッキーニン

《桐山はなもも》さん、いきなり「「いづうでっせ」と念押し」してくるあたり、よっぽど有名で素敵なお店なんです……?

調べてみると件の「いづう」は天明元年(1781年)創業の京寿司専門店。鯖姿寿司を名物にしているとのこと。うーむ、創業240年以上とはさすが京都!  昔からいづうの鯖寿司はハレの日の味として好まれたようです。並んでる句も退職、七五三祝、新居など、ハレを連想させるものがちらほら。《かなかな》さんの「紙皿に盛る新居の夜」は格調ある鯖寿司に対して「紙皿」の粗末さがミスマッチかと思いきや、この落差によってまだ家財道具の揃いきってない「新居」の愛すべきからっぽな空間が見えてきます。
“ポイント”

井筒屋を知らぬ嫁来る大晦日

大森 きなこ

井筒屋のコートつっかけごみ出し日

くぅ

井筒屋のネオン赤々夜半の冬

梅田三五

井筒屋の屋上足立の峰凍る

感受星 護

井筒屋の縞の袋やクリスマス

ピアニシモ

井筒屋の袋抱へし年始かな

小笹いのり

井筒屋の地下から抱う聖菓かな

芝歩愛美

井筒屋の八つ橋パキリ冬の旅

なつのおわり

井筒屋は祖母の定番歳暮かな

有川句楽

ハイ、わたくしも知りませなんだ「井筒屋」。九州ではトップクラスの百貨店だそうです。ということは《大森 きなこ》さんの〈井筒屋を知らぬ嫁来る〉は九州地域以外からのお嫁入りだったんでしょうねえ。地域性の描き方として案外面白い。「地元の人間だったら必ず知ってるはずのもの+否定」の型として各自の地域に当てはめて考えるといろんなバリエーションが作れそうですね。愛媛だったらどんな句が作れるかなあ。柑橘の具体的な品種名とか入れても成立しそう。

“とてもいい“

井筒ワインひとりであけて小正月

千葉水路

井筒ワインもらった新米あげた

千暁

井筒ワインロゼ上高地は雪に

百瀬はな

「井筒」シリーズは結構いろんなバリエーションがありました。「井筒ワイン」は長野県塩尻市にあるワインメーカー。長野はお米の品質も良いと聞きますが、《千暁》さんの句みたいにワインとお米の物々交換(?)したりするのかな。《百瀬はな》さんは名詞止めで切れを作ってから「上高地は雪に」と展開を切り替えたのが良いですね。ニュースを耳にしているともとれるし、窓から上高地を見晴るかしているともとれます。ロゼワインの淡い淡紅色と雪の色彩の対比も綺麗。
“良き”
 

井筒より声か蜥蜴の立ち止まる

骨のほーの

井筒には触れづにそっと幽霊よ

黒猫

井筒より出づる御霊や今日の月

紫黄

井筒姫佐保姫に逢ひ身を嘆く

宙海(そおら)

井筒姫浮き世に消ゆる恋蛍

都築減斎

「井筒」は井戸の地上部分にある囲みのこと。円筒状だったり方形だったりします。なぜか幽霊や御霊といった単語が出てくるのは、伊勢物語に材を採った謡曲や歌舞伎狂言などがあるからのようですね。演目によってバリエーションはあるようですが、紀有常の娘である井筒姫が登場するお話だとか。世阿弥の作った謡曲では、紀有常の娘の霊が在原業平との思い出を語り、井筒を回りながら、水に自分の姿を映して昔を懐かしむそうな。死んだ貴人の霊が身の上を語るのってちょっとシェイクスピアっぽいよね。洋の東西問わずこういった発想は物語のパターンとして愛されやすかったんだろうか。句としては個人的には《骨のほーの》さんの抑制された描き方がけっこう好き。逸話や霊に寄せすぎず、蜥蜴の停止を映像化することによって少しの不穏さを醸し出しております。
“良き”

井筒文の筆致のひかり藍浴衣

トウ甘藻

「井筒文」は文様の名前。井戸の縁を木で四角く組んだ形=井桁を文様化したものだそうです。いくつかバリエーションがあるようで、紋章のデザインでは井筒は「井」が菱形に変形したもので、井桁は「井」が正方形のものを表して区別してるそうな。ふむふむ。上五によって、この句は菱形になった「井」の形だと読みが確定できるわけですね。句を映像化する上で重要な情報を歌い出しに配置する語順が的確です。最初、藍浴衣に糸で縫い取られた文様に対する描写かと思ってたんですが、それなら「筆致」って言わないんじゃないの(?)と迷いが生まれております。手にしている器やお猪口だと考える方が妥当……かもしれないなあ。
“ポイント”

いづれ春永に」流麗なる青インク

東風 径

綺麗な字の書ける人に憧れます。「流麗なる青インク」が筆跡を映像化してて良いですねえ。……と、好きな句ではあるのですが季語の扱い方としては疑問が残ります。「春永」は新年の季語。年始に末永いことを祝う言葉です。しかし「いづれ春永に」とした場合は手紙の結びなどに使う文句となり、「いつかひまな時に」といった意味になります。カギ括弧で括ってあることや後半の描写を考慮すると、手紙の一文と考えるのが妥当でしょう。そうなると、「春永」がどれだけ季語としての力を発揮できるかは怪しくなります。手紙に「いづれ春永に」と書くということは、今は春永ではない、ってことですからね。季語を立てるために好意的に解釈すれば、以前こう結ばれた手紙を受け取った作者がようやく春永の時期を迎え、懐かしさと期待を胸に手紙を読み返している光景……と読めば、春永の季感が強まるかなあ。ちょっと強引ではあるけれど。

“とてもいい“

Is this a pen」から学ぶ桜まじ

小鳥遊こはく

Is this a pen? No, it isn't 根木打

弥栄弐庫

Is this a pen? Yes,それはわたしの春のペン

藍創千悠子

Is this a pen?受験子らの反復

のなめ

今回の英語ネタ。僕の世代だと英語の授業が始まったのって中学生からだったんですが、当時の英語の教科書に載ってた気がしますねえ、このフレーズ。一定年代以上の人は共通体験として記憶してるんじゃないかな。《小鳥遊こはく》さんの句はこの前提があるから、初学あるいは学び直しの状況だとすんなり納得できるんだと思う。……それはそれとして、《弥栄弐庫》さんの「根木打」ってマニアックすぎない!? 逆に見てみたいわ!
“良き”
 

出づの活用コンビニのおでん買う

小鳥遊

出づれども出でず蒲団の端からは

のりこうし

出づるなら出でよほはほは大嚔

万里の森

出づるかに雲うすあかく冬の月

日永田陽光

出づるものすべてこそばゆし春光

鳥乎

いづる日はしづむ日ブラジルの夕焼

瓦 森羅(もりら)

出づる鰐叩き続ける寒き夜

不二自然

出でず、出でたり、出づ、出づること、出づれども、出でよ!(回答時間3秒)

ということで「出づ」の活用シリーズ。みんなちゃんと活用に正解できててえらい! 個人的には《不二自然》さんの句の無為さと「寒き夜」との取り合わせは結構好き。ワニワニパニック、時々やりたくなるよね。時々叩き損ねてくそっ! てなるのまでセット。寒き夜という時間と空間に打撃音とBGMが響いているのです。
“良き”

んぞの漢文を解く隙間風

ゆりかもめ

花不散復開乎(いずくんぞはなちらずしてまたさくか)

家守らびすけ

いづくんぞ枯草の露のまばゆし

古み雪

いづくんぞ鮪の頬を煮込まむや

阿部八富利

いづくんぞ揺蕩ふ春を掴まんや

山内三四郎

いずくんぞ…師の声柔く目借り時

太之方もり子

いずくんぞ何にあらんや関東煮

吉野川

んぞ人の秋思を知るべきや

⑦パパ

んぞ星見上げんや寒鴉

西野誓光

んぞ来世あらばと初日の出

玄子

んぞ死を知らん」鬼百合畑

藻玖珠

んぞとか就中とか夜食

潮湖島

読み方知らなかったら「安んぞ」は「やすんぞ」だと思うだろうし、「焉んぞ」はそもそも読めないよなあ。「いづくんぞ」は《家守らびすけ》さんの句を見てもわかるとおり、漢文訓読の用語です。《阿部八富利》さんや《山内三四郎》さんのように、「いづくんぞ~ん(む)や」の形では反語を表し、「どうして~だろうか。いや~ない。」といった意味になります。非常に難しい型ですが、《山内三四郎》さんの句は、優しい中七の展開がグッド。どうして揺蕩う春を掴むだろうか。(いや掴まない。)こんなにおおらかに春はわたくしの眼前を彩ってくれているのに、みたいなニュアンスでしょうか。漢文の言い回しを活かした一句。

《③に続く》
“良き”