俳句deしりとりの結果発表

第47回 俳句deしりとり〈序〉|「いづ」③

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第47回の出題

兼題俳句

ガヤ島のホテル部屋より泳ぎ出づ  伊藤 恵美

兼題俳句の最後の二音「いづ」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「いづ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

いづれのおんかたにかある草の花

たかみたかみ

いづれの御時にか冬薔薇の息密か

ぐわ

いづれの御時にも尻を刺す蚊よ

白沢ポピー

源氏物語「桐壺」冒頭を連想させるフレーズ。久保田万太郎や松根東洋城の本歌取りでも知られています。女御や帝の御代を思わせる格調高さから一転、《白沢ポピー》さんの愛すべきくだらなさに笑ってしまいましたわ~(笑)。そりゃあ帝だって蚊に尻を刺されもするよなあ……。
“良き”
 

いずれかの進路選べぬ吾子芭蕉

飛来 英

いずれかを選べと上司手に蜜柑

塩田奈七子

いずれにも似ぬ子眠るやクリスマス

ガリゾー

いづれがと秋刀魚ごときに迷ひをり

一生のふさく

いづれかの泉に夜毎いづる龍

はなぶさあきら

いづれにも属さぬざざ虫と一献

佐藤儒艮

いづれも二百円山積みの襟巻

在仏変人

いづれ選るべきかは冬の雲重し

せんのめぐみ

れかにハワイ旅行の宝引

みづちみわ

れにも一日一笑狸汁

槇 まこと

いづれにしても着膨れてをりにけり

亘航希

いずれにせよ北窓塞がねばならぬ

ぞんぬ

いずれにせよ無月だってまた無職

藤井 春

いづれにせよその幽霊は祓へません

常磐はぜ

いづれにせよ遅刻鍋焼うどん吹く

高尾一叶

「いづれ」「いずれ」シリーズはかなりの数が届いていました。興味深いのは「いづれ」が意味するものの違いです。大別すると複数の中から選択するニュアンスを含んだものと、時間のニュアンスを含んだものに分けられます。まず取り上げたのは前者のグループ。違う言葉に言い換えるとすれば「どっち」「どれ」「どの」といったニュアンスでしょうか。《塩田奈七子》さんの句はドキッとさせてから下五で落とす俳諧味が落語っぽい面白さ。蜜柑くれる上司、ええやん!

扱いが微妙なラインにあるのは、《ぞんぬ》さんの「いずれにせよ北窓塞がねばならぬ」をはじめとした「いずれにせよ」シリーズです。行動の選択肢が提示されていると考えるべきか、結果的には○○になる、という遠くない未来について言及している=時間の要素と捉えるべきか。どっちだろう。
“良き”
 

いづれまた」彼の言葉を覆う雪

大久保一水

いずれまた」スタンプ捜す秋の夜

秋野たんぽぽ

れまた飲もうよおしと来ぬ賀状

風蘭

いずれ又来る道歩む冬の道

しせき

いずれ来る別れを知りて春の雪

夢佐礼亭 甘蕉

いづれとはいつのことなの雪だるま

田原うた

いずれオレかオレ以外か仏の座

渥美こぶこ

いずれ勝つボードゲームと冬灯

柑青夕理

いづれ会ふ子のエコーの手冬麗

瀬央ありさ

いづれみな死ぬるさだめや大みそか

中岡秀次

いずれみな向かふパライソ冬銀河

中島    紺

いづれまた淋しきみづに雪兎

にゃん

いづれなら今死にたきや花の下

石田なるみ

いづれ甘いみづになるなら死は螢

ノセミコ

いづれ星は死に宇宙には詩が残る

嶋村らぴ

いづれ冬銀河の遠い記憶として地球

苫野とまや

「いづれまた」の機会って結局あんまりなかったりするんだよね。もう四十年人間やってるんだ、知ってるヨ、そういうの。とまあ、未確定な未来もあれば、ほぼ確定した未来を描く句もあります。《瀬央ありさ》さんの句は「冬麗」が日に日に育つお腹の子の健やかさを思わせて愛しい取り合わせ。一方で《中岡秀次》さん以下、時間の経過から将来訪れる死を連想する人も。人の死もあれば、雪が水へ戻っていく様、果ては惑星や宇宙規模の視点を持った句まで、幅広く死を捉えています。《嶋村らぴ》さんの句は季語こそないけど、表現したい詩のエッセンスはよく伝わります。それでも我々は健気に短詩を作っていくのです、と励まされる思い。
“良き”

いずこかな見えぬ雪の日岩木山

いつアナmasa

いずこへ?出雲大社に初詣

星瞳花

いずこへと向かう列車や冬の月

アルルくん

いずこへ問う人おらず冬の町

西村小市

いずこより庭に芽吹けり花水木

玉響雷子

いずこより聞こえしショパン秋時雨

花野メイ

いずこより歩いてここへ子猫達

ヨシキ浜

いづくにか五つのバック夕焼ける

加賀屋斗的

いづくにか消えし舟影冬の凪

天弓

いづくにか父に似る人燗熱し

彩汀

いづくにか木犀太極拳の朝

陽光樹

いづくにて終ふいのちや羽根布団

心寧 侑也(ここね ゆうや)

いづくにも父の手のあと雪囲

若山 夏巳

いづくへと往くか妻なき鴛鴦よ

鈴白菜実

いづくへと花盗人の口ずさび

仁和田 永

いづくより飛び来たれるや百合庭に

佐々木棗

いづくより来たりしものそいぼむしり

古都 鈴

いづくより来たる童か柿を盗り

白猫のあくび

いづこからみかん運ぶや八幡浜

柊木涙

いづこから春の来る音目を閉ぢる

夏村波瑠

いづこでも段ボール捨て煤払い

こきん

いづこともなし机上まで冬日さす

ちょうさん

いづこなり失せ物探し十二月

ちくちく慶

いづこにか行ってしまえと落ち葉舞う

天音閑

いづこにもクマ情報がてんこ盛り

つきみつ

いづこにも求人ポスターおでんの香

一人男

いづこへか逝きて往生ゆきだるま

霜川このみ

いづこへか逃げたき思慕よ曼珠沙華

佐藤さらこ

いづこへと行く瞽女なるか冬菫

大和出ユウスケ

いづこへと水路に浮かぶ桜紅葉

独楽(こま爺)

いづこまで子育てつづくかと冬夜

藤富うに

いづこもおなじ猫の恋ひとの恋

髙田祥聖

いづこも同じ秋の夕暮れ藍茜

チョコ婆

いづこも落ち葉カラカラと風に舞う

糸桜

いづこよりいでし月かと霊が問う

納平華帆

いづこよりむづむづ足の霜焼よ

ルージュ

いづこより出でる熊達冬眠せず

大本千恵子

いづこより生まるる星や冬の梅

くさもち

いづこより声の落ち来る寒すずめ

時田チクタク

いづこより蝶や淡海の波高し

草夕感じ

いづこより通ふ黒南風ほらのなか

ツナ好

いづこより来ていつ消えちまったんだ秋

うめやえのきだけ

いづくなり春光美しき摩天楼

東田 一鮎

処から出雲へ秋の寝台車

三浦海栗

処ともなき風花や頬杖に

えりまる

処とも告げずガンマン鷹渡る

海里

処にか行かんと思ふ秋気かな

みなごん

処にか傘の失くなり神の旅

百夏

処にか拾う神あり冬の空

孤寂

処にも龍淵に潜む伝説

若狭草

処へと我が胸に問ふ秋思かな

氷雪

処へと消えた手袋また一つ

ひろ笑い

処へと飛び立つ二羽の冬の雁

詠野孔球

処よりいでしゴキブリベイビーズ

こころ美人

処より漂着文や冬の空

竜酔

処行くショットの先は秋の峰

夕暮派れもんさわー

おそらく今回の最多数派となったのが「何処(いづこ・いずこ)」グループ。「いづく」も同じ意味ですね。細かいところだけど《うめやえのきだけ》さんの句は「いつ消えちまつたんだ」が仮名遣い的には正解。「いづこ」が歴史的仮名遣いなので、一句の中では表記を統一する必要がありますね。歴史的仮名遣い勉強してないからわかんねーよー! という悲鳴もあるかと思いますが、そういう場合は「いずこ」にするか「何処」と漢字表記にすれば問題を回避できます。これぞ仮名遣いライフハック。

《④に続く》
“良き”