第64回「砂漠のホテル」《天》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

天
第64回
水筒の蓋に砂漠の天道虫
苔間きい
砂漠を旅する人たちにとって、飲み水の確保は最も重要な生きるための術。水分補給の水筒を手にとれば、「天道虫」がいることに気付きます。こんな砂漠に生きる命の存在に驚きます。天道虫も、自分の命を守るために必要なわずかな水の存在を嗅ぎつけるのでしょうか。その小さな体に満ちる健気な生きる力。助詞「の」「に」「の」と繋いでいく構成によって映像的な作品になりました。
とはいえ、「砂漠」に本当に「天道虫」がいるのかと気になり、調べてみようとしましたら、投句に添えられた作者のコメントに気付きました。
「アメリカに短期留学した時に、ロサンゼルスからラスベガスまで片道7時間の砂漠の一本道をドライブした際の休憩中に、一匹の天道虫がペットボトルの蓋にとまっており、こんな砂漠の中でも生きて水を求めているのだなと生命力を感じました」
まさに実体験の強味というヤツですね。実際は「ペットボトル」だったとのことですが、「水筒」としたのは音数の上でも、砂漠における詩的リアリティの点においても良い判断。砂色一色の砂漠における天道虫のなんと鮮やかな命の色でしょうか。


