第65回「バスからの眺め」《天》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

天
第65回
遠雷や空は信じるより薄い
丸山美樹
「遠雷や」という詠嘆に、読者である私たちも思わず空のはたてへ視線を向けます。
遠い雷がかすかにかすかに響いています。その空を眺めていると、ほんとうの「空」は、私たちが信じているほどの容積がないのではないか、と思えてきたのです。雷は、鳴り響くためのエネルギーを溜める必要があるのだろうけれど、空は本当は薄っぺらい表皮に過ぎないから、こんなふうに弱々しく鳴っているのではないか、と。
句意が読み解けていくと更に、「信じるより薄い」という呟きは一つの寓意として、私たちの心へ重層的に染みわたっていきます。
私たちの目に映るもの、心が信じるものは、本当は薄っぺらいものではないか。愛だとか信頼だとか平和だとか、人間が憧れる全ての思いもまた、不信感という分厚い土台の表皮に過ぎないのではないか、と。
比喩には、直喩・隠喩・寓喩と三種類が想定できますが、「空は信じるより薄い」という寓喩が、「遠雷」という季語の詩的本質を掴んでいることに、ささやかな感動を抱いた作品です。


