第70回「ベランダの桔梗」《ハシ坊と学ぼう!⑦》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
楊梅流す夫を鳥眺めをり
和花
夏井いつき先生より
「ベランダで、楊梅(やまもも)をこすり洗う夫の背を、鳥の気配とともに眺めていた場面を詠みました」と作者のコメント。
「流す」という書き方で、「こすり洗う」という様子を伝えるのは、少し無理があります。
「流す」という書き方で、「こすり洗う」という様子を伝えるのは、少し無理があります。


静動脈めく花脈や桔梗咲く
山崎さわさわ
夏井いつき先生より
「『咲く』が要らないのかと随分、推敲しましたが、他の適切な二文字が思いつきませんでした。上五中七が重いので、『咲く』があってもいいのではと思いましたが、どうでしょうか?」と作者のコメント。
敢えて「咲く」という動詞が効果を表すケースもありますが、基本的には「桔梗」とあれば「咲く」は不要です。この句の場合でしたら、「静動脈めきて」「静動脈めける」として、そのまま「桔梗や」「桔梗の」と繋げることも可能です。そうなると、そもそも「咲く」という動詞を使う必要もなくなってきます。
敢えて「咲く」という動詞が効果を表すケースもありますが、基本的には「桔梗」とあれば「咲く」は不要です。この句の場合でしたら、「静動脈めきて」「静動脈めける」として、そのまま「桔梗や」「桔梗の」と繋げることも可能です。そうなると、そもそも「咲く」という動詞を使う必要もなくなってきます。


けたましきキンカ頭の鵯の狂
近平御坊
夏井いつき先生より
「けたましき」は、「けたたましき」の入力ミスでしょうか。もしそうだとすると、「~の狂」の部分とイメージの重複があります。
「けたましき」は、「けたたましき」の入力ミスでしょうか。もしそうだとすると、「~の狂」の部分とイメージの重複があります。


サイレンや桔梗こと濃きバルコニー
升 丁茶
夏井いつき先生より
「手元の歳時記では、『露台』の傍題として『ベランダ』『バルコニー』がありましたが、歳時記の記述から、アパートやマンションなど現代の居住空間におけるそれらは季語にあたらないと判断しましたが、どうなんでしょう……。過去のハシ坊では、『ベランダ』を季語としていなかったようでした」と作者のコメント。
「露台」の傍題となっておりますが、使い方によっては、季語としての力をあまり発揮しない場合もあります。ですから、「ベランダ」については、ケースバイケースで判断しています。
①季語として機能している。
②脇役の季語として、季重なりを成立させている。
③季語としての機能はほとんど読み取れない。
この句の場合は、「サイレンや」という上五に対して「桔梗」を取り合わせる面白みはあります。ただ、後半の措辞は「バルコニー」という言葉の選択も含めて、一考の余地があります。
「手元の歳時記では、『露台』の傍題として『ベランダ』『バルコニー』がありましたが、歳時記の記述から、アパートやマンションなど現代の居住空間におけるそれらは季語にあたらないと判断しましたが、どうなんでしょう……。過去のハシ坊では、『ベランダ』を季語としていなかったようでした」と作者のコメント。
「露台」の傍題となっておりますが、使い方によっては、季語としての力をあまり発揮しない場合もあります。ですから、「ベランダ」については、ケースバイケースで判断しています。
①季語として機能している。
②脇役の季語として、季重なりを成立させている。
③季語としての機能はほとんど読み取れない。
この句の場合は、「サイレンや」という上五に対して「桔梗」を取り合わせる面白みはあります。ただ、後半の措辞は「バルコニー」という言葉の選択も含めて、一考の余地があります。


陽に透けて潤む桔梗や受けり鉢
樂山 詩恩
夏井いつき先生より
「陽に透けて瑞々しく輝く桔梗の鉢は、誰かにとって大事なものであったという情景を詠んでみました」と作者のコメント。
「~や」に続く「受けり鉢」をどう解釈すべきか。悩みました。
「~や」に続く「受けり鉢」をどう解釈すべきか。悩みました。


薄明の色蓄ふる桔梗かな
海原帆布
夏井いつき先生より
「桔梗の色は、トワイライトの空の色を吸収しているのではないかと思わせるものであるため、そのまま詠んでみました」と作者のコメント。
発想が美しいですね。「蓄ふる」の部分、更に良き言葉との出会いがあるような予感がします。そうなった時、下五「かな」が不要になるケースも出てくるかもしれません。
「桔梗の色は、トワイライトの空の色を吸収しているのではないかと思わせるものであるため、そのまま詠んでみました」と作者のコメント。
発想が美しいですね。「蓄ふる」の部分、更に良き言葉との出会いがあるような予感がします。そうなった時、下五「かな」が不要になるケースも出てくるかもしれません。


夜の硝子舗装や織女めく桔梗
つゐのひかる子
夏井いつき先生より
「演劇の帰り道、夜のカレット舗装(ガラス舗装)が、天の川のように無数の煌めきを放っていた光景を今も覚えています。舗道の天の川に、織姫のような桔梗。そんな情景を表したかったのですが、果たして読み手にも同じ景色が見えるだろうかと、少し不安があります」と作者のコメント。
「夜の硝子舗装」と「桔梗」の取り合わせは美しいと思います。季語「織女」を比喩に使うというアイデアは分かるのですが、季語「桔梗」に過剰なイメージが重なるため、取り合わせの美しさが逆に削がれてしまいます。
「演劇の帰り道、夜のカレット舗装(ガラス舗装)が、天の川のように無数の煌めきを放っていた光景を今も覚えています。舗道の天の川に、織姫のような桔梗。そんな情景を表したかったのですが、果たして読み手にも同じ景色が見えるだろうかと、少し不安があります」と作者のコメント。
「夜の硝子舗装」と「桔梗」の取り合わせは美しいと思います。季語「織女」を比喩に使うというアイデアは分かるのですが、季語「桔梗」に過剰なイメージが重なるため、取り合わせの美しさが逆に削がれてしまいます。


先斗町座敷の陰や閉づ桔梗
甘陀
夏井いつき先生より
「先斗町の座敷に漂う華やぎと、その奥にある陰の気配を、閉じゆく桔梗に重ねました。桔梗の紫の品と、座敷の陰に沈む心象とが響き合えばと思い、詠みました」と作者のコメント。
「閉づ」は「桔梗」に掛かるのだと思われますが、「閉づ」は終止形なので、
①連体形にする。
②「桔梗閉づ」と語順を替える。
この二択になります。
「先斗町の座敷に漂う華やぎと、その奥にある陰の気配を、閉じゆく桔梗に重ねました。桔梗の紫の品と、座敷の陰に沈む心象とが響き合えばと思い、詠みました」と作者のコメント。
「閉づ」は「桔梗」に掛かるのだと思われますが、「閉づ」は終止形なので、
①連体形にする。
②「桔梗閉づ」と語順を替える。
この二択になります。


梅雨曇7月7日見えぬ星
雪りんご
夏井いつき先生より
俳句においては、特別な意図がない限りは、漢数字が基本です。
俳句においては、特別な意図がない限りは、漢数字が基本です。


根が咳に効果があるの桔梗ちゃん
森嶋 理子
夏井いつき先生より
「桔梗ちゃん」という擬人化(?)は如何なものかと。
「桔梗ちゃん」という擬人化(?)は如何なものかと。


凛と佇つきちかう二年目の風に
佐藤儒艮
夏井いつき先生より
「兼題写真を見て、矮化剤がきっちり効いた、買ってきたばかりの鉢だな→来年はきっと本来の丈にという連想です。『二年目』が写真を見ていないと分かりづらいかも。初案は〈面従腹背矮化剤効くきちかうは〉でしたが、理屈っぽいし擬人化だし……で却下。〈身じろぎもせず売らるきちかうの鉢〉で、矮化処理を『身じろぎもせず』としてみたけど、『売らる』が正しいのかも怪しい……という事で提出句になりました」と作者のコメント。
丈の低い桔梗は、そのような処理を施されているのですか。初めて知りました。掲出句の「凜と佇つ」が、桔梗の句としてはありがちかと思ったのですが、表現したい意図が違うことは分かりました。ただこの書き方だと、二年目の桔梗という情報しかないので、意図は伝わりにくい。悩ましいところです。
丈の低い桔梗は、そのような処理を施されているのですか。初めて知りました。掲出句の「凜と佇つ」が、桔梗の句としてはありがちかと思ったのですが、表現したい意図が違うことは分かりました。ただこの書き方だと、二年目の桔梗という情報しかないので、意図は伝わりにくい。悩ましいところです。


桔梗凛として形見の懐中時計
信壽
夏井いつき先生より
「凛とした桔梗を見ると、亡くした妻を思い出します。安物の形見の懐中時計が私の内ポケットで、今日も時を刻んでいます」と作者のコメント。
「桔梗」と形見の「時計」の取り合わせは良いです。が、「桔梗」とあれば「凜として」と書く必要はありません。それは、季語「桔梗」にすでに内包されている情報です。奥様の時計だということですから、その情報のほうが大切なのではないでしょうか。
「凛とした桔梗を見ると、亡くした妻を思い出します。安物の形見の懐中時計が私の内ポケットで、今日も時を刻んでいます」と作者のコメント。
「桔梗」と形見の「時計」の取り合わせは良いです。が、「桔梗」とあれば「凜として」と書く必要はありません。それは、季語「桔梗」にすでに内包されている情報です。奥様の時計だということですから、その情報のほうが大切なのではないでしょうか。


きちかうの蕾の割れ目泣き笑ひ
冬島 直
夏井いつき先生より
「桔梗が咲く時、『ぽん』と音がするという俳句があるのでその音を聞きたいと、YouTubeで検索しましたが、『聞こえなかった』というものが殆どでした。蕾を潰して無理やり音を鳴らしている動画もありましたが、それでは桔梗が可哀想。桔梗の蕾が開く時は、まず一文字に裂けてから他の三箇所が開く様子を見て、笑っているようにも泣いているようにも見えました」と作者のコメント。
「泣き笑ひ」と書きたいお気持ちも分かりますが、むしろ「桔梗の蕾が開く時は、まず一文字に裂けてから他の三箇所が開く」というこれを、十七音で描写する。挑みがいのある一物仕立てになりそうですよ。
「桔梗が咲く時、『ぽん』と音がするという俳句があるのでその音を聞きたいと、YouTubeで検索しましたが、『聞こえなかった』というものが殆どでした。蕾を潰して無理やり音を鳴らしている動画もありましたが、それでは桔梗が可哀想。桔梗の蕾が開く時は、まず一文字に裂けてから他の三箇所が開く様子を見て、笑っているようにも泣いているようにも見えました」と作者のコメント。
「泣き笑ひ」と書きたいお気持ちも分かりますが、むしろ「桔梗の蕾が開く時は、まず一文字に裂けてから他の三箇所が開く」というこれを、十七音で描写する。挑みがいのある一物仕立てになりそうですよ。



