写真de俳句の結果発表

第70回「ベランダの桔梗」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊 NEW

第70回のお題「ベランダの桔梗」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

きちかうや文目もしらぬ恋もするかな

⑦パパ

夏井いつき先生より
「和歌『時鳥鳴くや五月の菖蒲草あやめも知らぬ恋もするかな』の本歌取りのつもりです。桔梗の花言葉は『永遠の愛』とのこと。亡き夫への愛を貫く隙の無い美しい寡婦に、狂おしいほどの恋心を抱いてしまった自分を想像して詠みました」と作者のコメント。

本歌取りとは、本歌を押さえた上で、独自の展開を工夫するべきものです。中七下五がほとんど同じですから、本歌取りというよりは、本歌パクリというものになりました。
“ポイント”

簪はカラー袴は抹茶色

渋井キセ乃

夏井いつき先生より
「二年後の卒業式のヘアスタイルを考えあぐねている知り合いの女子大生が、インスタで見つけたスタイルです。ご本人は桔梗を使いたいと言っていたのを、思い出したことから詠みました」と作者のコメント。

この「簪」の「カラー」の花が、生花であれば、確かに夏の季語になりますが、それが造花だと、季語としての鮮度は落ちてきます。生花の場合も、卒業式でのヘアスタイルとなれば、季節感はどうなるのか。色々、悩ましい句でした。
“ポイント”

紫の五弁にそっと秋気触れ

広泉

夏井いつき先生より
「桔梗の花を見る時、夏の終わりを最初に実感します」と作者のコメント。

「そっと」は有りがちな措辞ですが、これを生かすとすれば、後半「~に秋気触るそっと」とする一手も。こうすれば、人選です。
“参った”

三匹のこぶたの話桔梗咲く

トウ甘藻

夏井いつき先生より
「兼題写真は、マンションのベランダと見ました。石の家に風が来ることから、晴明の相剋、紫式部の物語など考えましたが、上手くまとめられず、離れ過ぎでしょうか?」と作者のコメント。

上五中七のフレーズに対して、下五の季語は悩ましいほど動きます。上五中七になんらかの工夫をして音数を減らして(「三匹のこぶた」あるいは「こぶたの話」にして)、下五の季語が動きがたい仕掛けをすることは、できるかもしれません。
“ポイント”

桔梗咲く海馬の奥の恋し妣

土井あくび

夏井いつき先生より
「恋し」が「妣」に接続するのならば、「恋しき」と連体形になります。
“参った”

我が家の家紋(剣)片喰桔梗咲く

宙海(そおら)

夏井いつき先生より
「弟の孫の男の子のために、家紋を調べたら、剣片喰でした」と作者のコメント。

この括弧は、どう読めばよいのでしょう。
“難しい”

白桔梗倹しき年金暮らしかな

浜 けい

夏井いつき先生より
「白い桔梗には、無駄の無い、潔い雰囲気を感じます。現実の我が年金暮らしは雑事と雑念に塗れていますが。白桔梗のような暮らしは憧れです」と作者のコメント。

「年金暮らしかな」という詠嘆があれば、「倹しき」と書かなくても想像できますね。この四音をどう使うか。人選は目の前です。
“ポイント”

白桔梗咲きたり祖母嫁ぎし日も

央泉

夏井いつき先生より
「花がお題の時は、花言葉を見ます。白桔梗は、清楚と従順でした。今どきの子が清楚とか従順とかは死語に近いんじゃない? 祖母や母の時代なら、清楚とか従順を心に刻み結婚したのではと思い、詠みました」と作者のコメント。

語順を少し替えると、調べが落ち着きます。

添削例
桔梗咲く祖母の嫁ぎし日も白く
“ポイント”

晴明社プーさん桔梗と自撮りせん

ゆづぷー

夏井いつき先生より
これは、絵本なのでしょうか? この字面では、状況が掴みづらいかと。
“ポイント”

和を以て尊し桔梗の凛と咲く

俳句笑会

夏井いつき先生より
「人と人とのつながりを重んじる日本人の美徳を、桔梗の凛と咲く姿に託してみました。古くは万葉集の時代から秋の七草として愛されてきた桔梗。秋風に揺れながらも真っ直ぐに花を咲かせる姿は、逆境に負けない芯の強さと、周囲と調和する日本人の精神性を体現しているかのようで、十七条憲法の一節を拝借して、句にしてみました」と作者のコメント。

「和を以て尊し」と「桔梗」の取り合わせを良しとした時、下五「凜と咲く」は、もう書く必要のない情報になります。桔梗という花は、そんなふうに咲きますので。今回、並選の中に、「凜と咲く」「凜々と」などの言葉が数多くみられますが、「桔梗」という季語が内包している情報だと考えるべきです。
“ポイント”

空高き退院の朝桔梗咲く

柳本あらら

夏井いつき先生より
「退院や桔梗の風に深呼吸」と作者のコメント。

コメント欄に書かれているのは、迷った末の第二案でしょうか。二択でしたら、第二案を推します。人選です。
“ポイント”

2ラウンドの洗濯終ふ桔梗笑ふ

野々 かりん

夏井いつき先生より
「ベランダにたくさんの洗濯物を干し終え、やれやれと植木鉢の植物に水を遣ります。『咲く』を『笑う』とも言うと知ったので、そこに自分の気分もいれてみました」と作者のコメント。

「2ラウンド」という表記も含めて、面白い句です。「終ふ」と書かなくても、「2ラウンドの洗濯」に「桔梗笑ふ」を取り合わせるだけで、充分。あとは調べを整えると、人選ですね。
“参った”

桔梗越しゆく川のあり座禅石

謙久

夏井いつき先生より
どういう映像なのか、少し読みを迷います。桔梗を越していくと、やがて川がある? 桔梗に川の水がかかっている? 更に「座禅石」は、どこにあるのか?
“参った”