写真de俳句の結果発表

第70回「ベランダの桔梗」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊 NEW

第70回のお題「ベランダの桔梗」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

菩薩の矜持のごと桔梗凛と立つ

天亨

夏井いつき先生より
「毎年庭に咲く青紫の桔梗の花を今年も楽しんでいますが、先日、近くの寺の観音菩薩の脇に一列に咲き誇っている桔梗の花を見て、句作しました。信念を持ち、誇りを曲げない心を持っているかのような桔梗の花の、気高い立ち姿にシャキッとしました」と作者のコメント。

「桔梗」に対する「菩薩の矜持のごと」という比喩には、独自性がありますが、そうなってくると、そもそも「凜と立つ」という措辞は、言わずもがなということになります。
“ポイント”

屋上に桔梗遠景の富士山

凛ひとみ

夏井いつき先生より
語順は逆でしょう。「遠景に富士」を前半において、「屋上に○○桔梗」あるいは「屋上に桔梗○○」で、再考してみましょう。
“ポイント”

満月のテラスに獣の糞いびつ

天六寿(てんむす)

夏井いつき先生より
「『獣(しし)』と読んでください。我が家は東京の隣ですが、二階のベランダにハクビシンが来て糞をします。今は地方では熊が出たり、鹿が出たり、東京でもアライグマ、ハクビシンなど人と動物の住む境目がなくなってきました。この句は最初に『満月や』と詠嘆しましたが、『糞いびつ』で少しだけ流れが止まる感じがしたので、『満月のテラス』として上五中七を繋げてみたのですが、その判断が正しかったか疑問です」と作者のコメント。

「テラス」という場所をどうしても言いたいのであれば、中七の「に」は不要です。そうなれば、「獣」を無理矢理「しし」と読ませる必要もありませんね。助詞「に」をとれば、人選です。
“参った”

もつれ合いつつ宙を舞う黒揚羽

草葉野つゆ

夏井いつき先生より
「舞う」という動詞は必要ですか?
“ポイント”

吸ひたしや桔梗の蕾の空気

峠の泉

夏井いつき先生より
「裏葉柳色(うらはやなぎ)した桔梗の蕾を見る度に、中の空気はさぞかし澄んでいるのだろうと思います」と作者のコメント。

発想がとても良いです。「吸ひたしや」とするよりは、「中の空気はさぞかし澄んでいるのだろう」という発想を大切にするほうが、「桔梗」という季語が生きるのではないかと。
“参った”

北半球へロトルア湖発つ虹送る

宙朔

夏井いつき先生より
「もう20年近く前、夫の定年直後、彼も私も元気だった頃、いくつかの国へ出かけ、レンタカーでの旅を楽しみました。ニュージーランド北島のロトルア湖畔で、激しい雨が上がり、自分の足元から立ち上がる、手に触れられるかのような“虹の誕生”に出会って、言葉もないほどの感動でした」と作者のコメント。

この素晴らしい光景をたった十七音で表現するのは、なかなか難しいことですね。「北半球へ」とあれば、最後の「送る」が不要かもしれません。
“ポイント”

無口な父と興ずるや花歌留多

夏海 凛

夏井いつき先生より
「季語を先に置くか、後に置くか悩みました。無口な父で子どもと関わるのが不器用でした。終戦の年に生まれた父自身も親に遊んでもらった記憶もないと思いますが、父なりの遊びだったのでしょう。花歌留多や将棋で遊んでくれました。子どもには難しい遊びでしたが、それでもたまの大切な時間でした」と作者のコメント。

中七「や」と詠嘆したいお気持ちも分かりますが、「や」を外す方が調べがなめらかになります。

添削例
無口なる父と興ずる花歌留多
“ポイント”

会議前ロビーに高きモンステラ

はるいち

夏井いつき先生より
「勤めている会社の会議室のロビーに、大きなモンステラが植えてあるという句です。仕事中にもかかわらず、大きなモンステラを見る度、次の夏はどこに旅行に行こうかなと、思い馳せています」と作者のコメント。

中七下五のフレーズは、光景がありありと伝わります。「モンステラ」という観葉植物を何らかの季節の季語として使っているのか、無季として仕上げているのか。前者であれば、上五「会議前」という状況を説明するよりは、「○○○○や」と、何らかの四音の名詞(抽象名詞を含む)を詠嘆するとよいです。後者であれば、上五に的確な季語を取り合わせるという選択肢もでてきます。
“ポイント”

潔いよい桔梗の青や祖母の青

鈴木 リク

夏井いつき先生より
上五「潔い」とすれば、人選です。
“ポイント”

桔梗爆ぜ深呼吸する五稜郭

和脩志

夏井いつき先生より
「桔梗」と「五稜郭」を取り合わせる意図は分かるのですが、「爆ぜ」「深呼吸する」が的確かどうか、悩ましいところです。
“ポイント”

一輪の桔梗咲きおり離婚する

長谷部憲二

夏井いつき先生より
「中七を『~咲きおり』『~咲きたり』『~の咲きて』で迷いましたが、静かに事が進んだイメージにしたく、掲句としました」と作者のコメント。

季語としての「桔梗」は、咲いていることが前提ですので、敢えて「咲く」が必要だというケースは少ないのです。まして「一輪の桔梗」ならば、咲いていますものね。
“ポイント”

錠剤の鮫とは膝へ桔梗咲く

沼野大統領

夏井いつき先生より
「発想の元は、桔梗の莟が骨の関節の部分に似た形をしていると思ったことです。ふと最近流行りの骨粗鬆症向けのサプリメントに、鮫の軟骨が含まれているという宣伝文句を思い出しました。錠剤・鮫・膝・桔梗という一見関係性の希薄な名詞が結びついていく面白さを詠みました」と作者のコメント。

やろうとしていることは理解しました。が、詩としての更なる精錬度を求めたいと。
“ポイント”

荒梅雨やゆらゆらゆきかう鯉のひげ

ふく

夏井いつき先生より
「鯉のひげの嗅覚、エサを求める感覚を知りました。激しく降る雨の中でも、鯉はマイペースで過ごす光景を詠みました」と作者のコメント。

目の付け所は良いです。描写の精度を上げたいところです。
“ポイント”

花束や紫めきて秋づきて

一井かおり

夏井いつき先生より
やろうとしていることは良いと思います。語順その他、一考してみましょう。
“ポイント”