写真de俳句の結果発表

第70回「ベランダの桔梗」《ハシ坊と学ぼう!⑪》

ハシ坊 NEW

第70回のお題「ベランダの桔梗」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

オアシスのラクダまばたき去年今年

殻ひな

夏井いつき先生より
第64回『砂漠のホテル』で並選をいただきました〈オアシスにラクダ寝入って去年今年〉の推敲句です。ハシ坊の皆さんへのアドバイスを読んでいて、『去年今年』という季語はもっと短い一瞬を切り取った方がいいのかなと思い、瞬きにしました」と作者のコメント。

考え方は良いですね。語順は逆かな。

添削例
去年今年を瞬くオアシスの駱駝
“ポイント”

何一つ身にならぬ吾に一重草

殻ひな

夏井いつき先生より
「あれこれと興味が散ってしまい、何一つ身になりません。俳句も一時期は人選をいただけていましたが、最近は忙しさにかまけて推敲が足りず、人選から遠ざかっています。 お花は季節になればちゃんと咲くのになぁと、自分をもどかしく思います」と作者のコメント。

上五中七のフレーズは、せめて「~や」と切れを入れたいですね。下五の季語がベストかどうか。考えてみましょう。
“参った”

紫の蕾分かれて桔梗花

チョコ婆

紫の風船裂けて桔梗花

チョコ婆

夏井いつき先生より
「【一句目】桔梗の花の蕾は風船のような形をしていて、先から少しずつ分かれて開き、5枚の花びらがつながっている形に咲くと知りました。咲く様子を知らなかったので、そうなんだと感動しました。【二句目】もう今回も苦し紛れ……。一句目もそれなりに推敲を重ねたのですが、『蕾分かれて』で意味がわかるのかなあ。また、蕾が風船のような形ということも押さえたいし。でも、『風船裂けて』では、もっと分からないかな、と迷いつつ……投句します」と作者のコメント。

二句の推敲過程は理解しました。「紫の蕾分かれて」よりは、「紫の風船裂けて」のほうが確かに伝わりやすいです。が、桔梗の花の咲き方を、紙風船にたとえる発想は、それなりにありました。
“ポイント”

すずらんや運ぶる風に花言葉

べにりんご

夏井いつき先生より
「すずらんの香りが風とともに運ばれてきたときに、花言葉って何だったかなぁと思い出している時のことを詠みました」と作者のコメント。

「運ぶる」ではなく「運べる」と書きたかったのかもしれませんが、だとしても、何が何を運ぶのか。そこが分かるような書き方を考えてみましょう。
“ポイント”

きちかうや男子の健やかに愚か

髙田祥聖

夏井いつき先生より
「むずかしい! つい手癖で詠んでしまいます!」と作者のコメント。

「きちかう」は動かない?
“参った”

アフガンのめぐる水路や麦の波

朝野あん

夏井いつき先生より
第64回『砂漠のホテル』のハシ坊〈アフガンに水路めぐらし麦の波〉にて、語順と切れのない形を再考するようにと、ご指導を頂きました。『医療よりもまず水だ』と奮闘した中村医師のことをよりよく詠みたいと思います」と作者のコメント。

上五の助詞を「を」とすれば、人選です。
“ポイント”

猛暑日のパソコン暴走どうなるの?

しげ尾

夏井いつき先生より
「山口県での梅雨明け宣言。テレビ放送に合わせたかのようにパソコンが暴走しました。原因不明。三人のプロに対応してもらっています」と作者のコメント。

下五「どうなるの?」まで書くと、俳句というよりは日記になってしまいます。語順も含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

薄闇に金魚ふわりふわりねむる

志村肇

夏井いつき先生より
第67回『下町の白壁』並選〈薄闇にねむる金魚のふわふわと〉の推敲作です。フーちゃんという名の、金魚のオランダ獅子頭です。フーは眠るとき、熟睡して砂利の上にへたり込むか、半分寝た状態でふわふわゆっくり泳ぎます」と作者のコメント。

ただの金魚ではなく、「オランダ獅子頭」の存在感のほうが、描きたいことに似合うのではないでしょうか。

添削例
薄闇にオランダ獅子頭ねむる
“ポイント”

帰り道朝知らざりし桔梗かな

紫桜

夏井いつき先生より
中七に「朝知らざりし」とあるので、上五で「帰り道」と説明する必要はありませんね。
“ポイント”

アイロンを掛ける桔梗涼やか

田中亀子

夏井いつき先生より
「室内で、ほぼ無心になって丁寧にアイロンをかけていました。ベランダに目を向けると桔梗が、凛として清々しく咲いています。今の気持ちと桔梗の様子がシンクロしたのを詠みました」と作者のコメント。

「涼やか」という形容動詞には、
① すがすがしく、さわやかなさま。
② いかにも涼しそうなさま。
二つのニュアンスの意味があるようです。作者のコメントを読んでみると、実際そこに「桔梗」が咲いている光景のようですが、文字面だけだと「桔梗」柄の何かにアイロンを掛ける行為を、「涼やか」だとする句意のようにも読めてしまいます。
“ポイント”

紫の凛と佇む桔梗かな

あさり丸

夏井いつき先生より
「桔梗」や「紫」という色に対して、「凛と」という措辞は、かなり使われます。今回の並選を確認してもらえば、かなりの数あることが分かります。
“ポイント”

桔梗咲く空の彼方に故郷や

あらまち一駒

夏井いつき先生より
下五「や」は、バランスが取りにくい難しい型です。語順が逆でしょう。

添削例
故郷は空の彼方や桔梗咲く
“ポイント”

「ポーチュラカ」ベランダからの答えなり

夏井いつき先生より
「松葉牡丹だと思っていた花を確かめたら、ポーチュラカでした。『角川俳句大歳時記』で『ベランダ』は夏の季語になっているので、松葉牡丹のかわりに『ポーチュラカ』を使ってみましたが、『季語なし』となってしまうのでしょうか?」と作者のコメント。

「ポーチュラカ」は「花すべりひゆ」ですから、これも季語の一つと考えるべきかと。作者ご自身が、どちらを季語として強く描きたいのか、そこを自問自答してください。「ベランダ」は「露台」の傍題ですので、次のようなやり方も可能です。

添削例
露台に名問えば「ポーチュラカ」と答ふ
“ポイント”

タワマンの気密の毒よ大西日

水きんくⅡ

夏井いつき先生より
「タワマンの気密」と「大西日」の取り合わせは、良いですね。面白い句になりそうな予感。「~の毒よ」が、やや言い過ぎ。
① この音数を使って、違う言い方にするか。
② 季語の描写にこの音数を使うか。
二択でしょうか。
“ポイント”