写真de俳句の結果発表

第70回「ベランダの桔梗」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

第70回のお題「ベランダの桔梗」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

哲学の師喜寿の桔梗は濃紫

くぅ

夏井いつき先生より
微調整してみましょう。

添削例
哲学の師は喜寿桔梗こむらさき
“ポイント”

雲の峰バジル千切りし指を嗅ぐ

川口祐子

夏井いつき先生より
「千切り」を、平仮名で「ちぎり」としたほうが、表記がすっきりします。そうすれば、人選です。
“ポイント”

手術待つ揺れる心や桔梗濃し

紺太

夏井いつき先生より
「手術を控え、心の浮き沈みがありますが、桔梗を眺めていると勇気づけられ、心が穏やかになります」と作者のコメント。

「手術待つ心」と書けば、「揺れる」は書かなくても伝わります。節約できた音数をどう使うか。ここが、人選への道です。
“ポイント”

蓙に巻き出荷待つキキョウ並ぶ土間

米美

夏井いつき先生より
「子どもの頃、祖父母が桔梗を作って、市場に出していました。今はダンボールに入れますが、昔は無かったので蓙(ござ)に巻いてたなあ、と思い出して書きました」と作者のコメント。

特別な意図がない場合は、季語としての「桔梗」は漢字あるいは平仮名書きするのが基本です。
“参った”

大根干す夜景の真中十三階

さら紗

夏井いつき先生より
語順は大切です。この内容でしたら、「十三階の」と上五を字余りにして、中七下五をゆったりと。

添削例
十三階の夜景に大根干しにけり
“ポイント”

赤紫蘇や紫衣の勅許の知らずとも

土取

夏井いつき先生より
「~知らずとも」がちょっと理屈かな。
“参った”

すこやかに逝く桔梗こよいの君よ

ただ地蔵

夏井いつき先生より
「人生最初に担任した生徒のお通夜で、彼の顔を見た時の気持ちです。十三年前に彼はガンになり、当時『余命五年』と言われていたそうです。驚きました。何故か最近頻繁にメールがくるようになり、彼が自費出版で出した本の話や好きな音楽の話などしました。なくなる時は全然苦しまずに、思いの丈を綴った本を出し、満足して眠るようになくなったと聞きました。パキッとした青い輪郭の桔梗は、まるで彼みたいです」と作者のコメント。

語順を少し替えると、追悼句として豊かなものになります。

添削例
すこやかに逝くや桔梗の君今宵
“ポイント”

静脈の透ける手の人桔梗挿す

丸山和泉

夏井いつき先生より
「子供の頃、伯母が『桔梗はこうやって咲かすのよ』と笑いながら指で蕾にそっと触ると、ポッと音がして花になった記憶があります。その時桔梗を知り、ずっと好きな花でしたが、ある時よく見たら葉脈が毛細血管のように見えました」と作者のコメント。

「静脈の透ける手」と「桔梗」の取り合わせが良いですね。「~の人」と説明するよりは、その手と桔梗を映像として描写すれば、人選は目の前です。
“ポイント”

両開き窓のヨットや紅茶の香

むい美縁

夏井いつき先生より
「晴れた日には、六甲の麓の部屋の中からでもベランダ越しに芦屋のヨットが見え、ちょっとキラキラした気分になります」と作者のコメント。

この書き方ですと、この「窓」が「ヨット」のものであるのか、「窓」から「ヨット」が見えているのか。やや不正確です。
“ポイント”

喜寿近し初の合唱白桔梗

団塊のユキコ

夏井いつき先生より
「コーラスの仲間が喜寿近くに入会し、初めての曲を皆で仕上げ、歌いました。彼女は感動して涙ぐみました。その姿はとても美しく、周りの仲間も気持ちを新たにしました」と作者のコメント。

〈喜寿近し/初の合唱/白桔梗〉それぞれ斜め線の所に、意味の切れ目があるので、三段切れになります。この場合でしたら、「喜寿近き」と連体形にすると、解消することはできます。
“ポイント”

向日葵や向こう旗は立っている

東ゆみの

夏井いつき先生より
「旗は自分で見つけるもの。ベランダから空を見て思いました」と作者のコメント。

句材、句想よいですね。一音足りない中七は、気になります。
“ポイント”

白桔梗強かな根の子宮なり

富永三紀

夏井いつき先生より
句材には魅力があります。「強かな根の子宮」が取り合わせなのか、比喩なのか。もう少し明確に書きたい。
“ポイント”

ベランダに篭る植木鉢と跣

鰯山陽大

夏井いつき先生より
「ベランダは玄関から一番遠い場所。そこを跣で篭城している。外には出てきているけど、心の一番奥で根を張って花を咲かせようとしている。『跣』という季語に込められた、無垢さの中にある未熟さみたいなものを詠んでみました」と作者のコメント。

書きたい内容と書かれた言葉の間に、溝があります。この内容が、100パーセント伝わるような言葉の選択。挑みがいのある句材ですね。
“参った”

夕暮れの街灯消えて揚花火

雨野理多

夏井いつき先生より
第23回『カメラと夕焼け』〈街灯を消してあと五分で花火〉の推敲です。『あと五分』は説明なので外しました。街灯を消す自分ではなく、街灯が消えた街方がより描きたい光景に近そうなので修正。街灯が消えることと、花火が揚がるまでに時間経過が発生するので『消えて』としたのですが、散文的なようにも思うので、悩ましいです」と作者のコメント。

「夕暮れ」は無くてもよいですね。前半を「街頭の消えて」として、後半をあと一工夫。
“参った”

凍返る鉢は二つに土白し

市子希子

夏井いつき先生より
「二つに」は、増えた? 割れた?
“ポイント”