第3回 俳句ラボ テーマ×季語で一句|皿 ×金魚④
俳句ラボへようこそ
皆さんようこそ、俳句ラボへ。
各回に提示されるテーマと季語の発想をかけ算して俳句を生み出す研究所です。
組み合わせからどんな化学反応が起こるかは、あなた次第。
さぁ、実験を始めましょう。
第3回のお題
研究室のシャーレ
各分野からは外れるけど紹介しておきたい句のコーナー。
これはルール的にどうなのよ? とか今後の検討材料になりそうな素材を研究室のシャーレとして記録しておきます。
井戸端の皿や薄暑の金魚坂
(季語「金魚」を使わなくてすみません。ボツで納得します。)
盛塩の皿のしづかに金魚玉
とき皿のベロ藍薄し金魚玉
他にも「金魚玉」での投句はいくつかあったのです。が、実は今回の季語に設定した「金魚」と「金魚玉」はジャンルとしては別の季語。「金魚」は動物、「金魚玉」や「金魚鉢」は人事・生活の季語なのです。かといって、季語が違いますね、と没に送るにはこの二句は金魚玉の句として上手いんだよなあ、もったいないなあ……と悩んだ末にシャーレでのご紹介。こういうタイプの句も謎のフラスコ枠に分類することを検討してみましょう。「似て非なる季語を使った場合、本来出題の季語に贈られる『季語のフラスコの座』は得られる可能性がなくなる代わりに、謎のフラスコへの道が開かれる」ってな具合。どうだろう?

(#゚皿゚) 歯痒さの歯肉に触れてみし金魚
ねえ、金魚。別れの皿がなぜふたつ?
謎のフラスコに分類しようかとも思ったけど、ちょーーっと違うな、という二句。発想が謎というわけではなく、表記の面で実験的なことをしようとしているタイプの句です。《髙田祥聖》さんの「(#゚皿゚)」は顔文字。怒って歯を食いしばってる人を表してるんですが、顔文字文化に慣れ親しんでない人も、そういう顔だと思って眺めるとなんとなくそう見えてきません?
興味深いのは《髙田祥聖》さんと《志村肇》さんの記号の使い方と、それぞれへの意味の持たせ方、十七音全体への作用に違いがみられる点です。《髙田祥聖》さんの顔文字はある意味前書きのような効果を発揮しています。最初に「この顔文字で表される心理があります」と提示を済ませてしまい、あとは十七音を純粋に楽しませてくれます。横書きで表示せざるを得ないweb上の形式に適合した、これも現代ならではの試みといえるでしょう。
一方、《志村肇》さんは句読点と疑問符を句のところどころに挿入しています。縦書き横書きを問わないのも《髙田祥聖》さんとの違いですね。区切りを明確にしたり、下五を疑問の投げかけだと視覚的にわかりやすくするなど、それぞれが読者の読みを限定するような効果を持たせています。ある意味、俳句を全く知らない人にとってはわかりやすくなる……のかなあ。個人的には、句読点や疑問符がなくてもそのニュアンスを読み解いたりするのが楽しいので、野暮に感じてしまうのだけど。時代の流れの中でこういう模索も起きていくのかもしれないね、と興味深く両句観察しております。

蔓は甘く繁る プランターに 埋めた金魚
《髙田祥聖》さんや《志村肇》さんのように実験的な表記を試みているのか、それとも五七五の間を空けないのが正しい表記だと知らずに投句してくれた人なのか、どっちだろう!?
後者の可能性を考慮して一応言っておくと、俳句は五七五の間を空けずに書くのが正しい表記です。次回はぜひ五七五の間を空けない形でのご投句をお待ちしております。
……が、この独特な詩の感覚は手練れの者っぽい雰囲気あるんだよなあ。金魚の死や埋葬をテーマにした句は他にもたくさんあったんだけど「蔓は甘く繁る」から始まる語順や、重めの字余りが感じさせる「蔓」の量感など、ちょっとレアな輝きを感じますねえ。あるいは化けそうな初心者か……? 今後に注視して参りましょう。

ということで、第3回俳句ラボはここまで。
さあ、次回はどんな輝きに出会えるでしょうか。来月もまたお会いいたしましょう。


ワハハ、ご自身で補足つけていらっしゃる。そうですねえ、金魚のフラスコには少なくとも入れにくいわなあ……。ただ、将来的にはこういう発想も許容していきたいと思ってスタートした企画ではあるので、要検討ですね。入れるとしたら謎のフラスコ枠になるかなあ。