俳句ラボの結果発表

第5回 俳句ラボ テーマ×季語で一句|無人駅 × 金木犀①

俳句ラボ NEW

俳句ラボへようこそ

皆さんようこそ、俳句ラボへ。

各回に提示されるテーマと季語の発想をかけ算して俳句を生み出す研究所です。

組み合わせからどんな化学反応が起こるかは、あなた次第。

さぁ、実験を始めましょう。

第5回のお題

テーマ
無人駅
×
季語
金木犀

俳句ラボでは三つの観点から見て、それぞれの分野ごとに上位句の称号を贈ります。

題して、俳句ラボの三つのフラスコ。

最もテーマに優れた句に贈られるのが「輝けるテーマのフラスコ」。

最も季語を際立たせた句に贈られるのが「輝ける季語のフラスコ」。

そして最もわけのわかんない未知の展開を果たした句に贈られるのが「珍奇なる謎のフラスコ」。

毎回、それぞれのフラスコを一句以上選んでいこうと思います。

ポイント
さぁ、それでは実験結果を見ていきましょう。

研究室のシャーレ

各分野からは外れるけど紹介しておきたい句のコーナー。

これはルール的にどうなのよ? とか今後の検討材料になりそうな素材を研究室のシャーレとして記録しておきます。

今回は出題意図についてまず書かねばなりますまい。

 

木犀や初の句集は「無人駅」

小田茉由(コミマル改め)

かつてYouTube『夏井いつき俳句チャンネル』にて、凡人あるある脱出シリーズという一連の動画を収録しました。どの動画だったか記憶が定かではないのですが、たしかその最中に「つい使ってしまいがちな句材」について話したおぼえがあります。

今回出題のテーマとなった「無人駅」はまさにその一種なのです。

詩歌の世界との親和性が高いというか、組み合わせると “絵になる”素材なのでしょう。その証拠に、《コミマルさん改め小田茉由》さんの句が実話か創作かはわかりませんが、試しに検索してみると川柳句集、詩集、歌集など複数の書籍が出てきます。

そして、俳句に限定して考えた場合、こういった「つい使ってしまいがちな句材」は類想に陥ってしまいやすい落とし穴でもあるのです。しかも、駅の近くに植えられていそうな「金木犀」との組み合わせともなると――

 

香の満ちて 金木犀や 無人駅

池上 胤臣

無人駅金木犀の香りかな

平野みふみ

この香り金木犀か無人駅

砂糖香

下車ひとり金木犀の香る駅

ふくのよきしま

ベンチには金木犀の香無人駅

伯人

木犀の香り手繰りて無人駅

信茶

金木犀どこにあるのか無人駅

風の母

金木犀香のにぎやかに無人駅

ばちゃ

金木犀の香纏って出でる無人駅

つんちゃん

金木犀香りの先の無人駅

せんのめぐみ

発車ベル金木犀の香無人駅

団塊のユキコ

無人駅金木犀の香り立つ

桜貝

深々と金木犀の匂ふ無人駅

とも女

満ちたるは木犀の香のみ無人駅

えりまる

陽に香る金木犀や無人駅

尾長玲佳

木犀の香や実家近くの無人駅

鈴なりトマト

類想の落とし穴「無人駅」×香りの印象が強い「金木犀」×季語の本意に含まれる「香」、三種の掛け合わせによって、ご覧の通り。

それぞれに「下車」や「ベンチ」といった状況の情報を足したり、組み合わせる動詞を工夫したり、努力の跡はうかがえるのですが、やはり根本的なところで発想が似通っている点は否定できません。

忘れてはいけないのは、この俳句ラボにおいては「テーマはあくまでテーマにすぎない」ってことです。無人駅の光景を描くためには必ずしも「無人駅」という言葉を使う必要はないのです。いかに「無人駅」という言葉を使わずに、無人駅っぽさが出せるか? 今回の出題にはそういった意図があります。

出題されたテーマを出発点に発想を広げていく、その練習と実験を重ねていくのが本コーナーの目的です。

フラスコ&試験管に残った句から、それぞれの発想やテクニックを学んで参りましょう。

《②に続く》

良き