写真de俳句の結果発表

第72回「木の実のカーテン」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊 NEW

第72回のお題「木の実のカーテン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

明日から一日保育木の実かな

やまだ童子

夏井いつき先生より
最後の「かな」が効いていません。語順を替えるのも一手です。

添削例
木の実落つ明日から一日保育
“ポイント”

銀杏や滅菌スリッパの二時間

渥美こぶこ

夏井いつき先生より
「銀杏」がどこに転がっていての、中七下五の光景なのか。そこが、読み切れません。
“難しい”

篠笛のかそけき調べ七竈

風早 杏

夏井いつき先生より
「篠笛」と「七竈」の取り合わせは良いですね。中七「~のかそけき調べ」は、篠笛の説明になっています。音を描写したいのか、その場を映像化したいのか。自問自答してから、推敲にかかりましょう。
“ポイント”

入籍の記念の栗鼠や木の実時

まっちゃこ

夏井いつき先生より
「入籍した日が分からなくて四苦八苦。木の実時だということだけはっきりしました」と作者のコメント。

「入籍の記念」に飼うようになった「栗鼠」という意味? 作者のコメントが、書きたかったことだとすれば、「栗鼠」の情報はなくても良いのではないかと。
“難しい”

走馬燈妻の祈りの深く長きや

星埜黴円

夏井いつき先生より
「詠嘆の『や』で終わる句は難しいです。でもいつか詠めればなぁ~と、あがいております。我が家は、生を受けられなかった子が三人おります。死産のたびに悲嘆していた妻ですが、今は祈りに昇華しているみたいです。たぶん」と作者のコメント。

「妻の祈りの深く長きや」は、七七ですが、下五「や」をクリアできる素材ではあります。上五の季語「走馬燈」は少々ベタですから、全体のバランスがとれて調べも成立する季語を探してみる価値はありそうです。
“ポイント”

鬼胡桃割れてカムイの白き臓

井納蒼求

夏井いつき先生より
「アイヌの習慣のひとつにイナウ(木幣)があります。イナウはアイヌの人々とカムイを繋ぐのだそうです。狼の神のイナウは鬼胡桃で作ります。非常に固い殻を持つ鬼胡桃、割った際にその中の仁も割れると白い果肉が現れます。アイヌの人々は、動植物や山や川等の自然、人間がつくった物もカムイと考えるのだそうです。 ネイティブアメリカンの考えにも通ずるところがあり、とても共感します」と作者のコメント。

アイヌとネイティブアメリカン、興味深い話です。この句の「白き臓」とは「鬼胡桃」の果肉であり、イコール「カムイの」ものだという句意になるのですよね。そのあたりを読み解くのに、ちょっと時間がかかります。何か良い工夫はないかなあ。
“難しい”

銅像は倹約藩祖はなは葉に

さ乙女龍チヨ

夏井いつき先生より
「第30回『常念道祖神の桜』に投句した〈銅像は倹約藩祖はなははに〉の推敲です。『花は葉に』が一番分かりやすいですが、前半が漢字が多いので、やはり『はな』と平仮名にします」と作者のコメント。

この語順だと、「~藩祖は」という誤読を招きます。語順を逆にすれば解消。

添削例
花は葉に銅像は倹約藩祖
“ポイント”

蒜の皮むくバイトメリダの朝

チリンドロン

夏井いつき先生より
「『メリダ』は、紀元前25年に建設されたスペイン西部の都市です」と作者のコメント。

素材は面白いです。語順と言葉の選択次第では、人選が狙えそうです。
“ポイント”

いずこより屋根を木の実のたたく音

間 静春

夏井いつき先生より
「奈良の小さな古い寺に立ち寄りました。周囲にはコスモス畑が広がっていました。寺に入ると、どこからか木の実が落ちて、屋根を叩く音が聞こえてきました」と作者のコメント。

お寺での光景でしたら、その情報を入れると、ささやかなオリジナリティが確保できます。
“難しい”

ハタ掛けの素麺赤土へ伸ばす

清白真冬

夏井いつき先生より
「長崎の島原半島は、素麺の名産地です。ハタ掛けにした素麺は室内で乾燥させるようですが、同じく素麺の名産地の小豆島では、屋外で天日干しした後、室内で乾燥させるようです。島原半島も小豆島も豊かな赤土に恵まれた土地柄です」と作者のコメント。

「赤土」の土地だということは、作者コメントで理解しました。が、俳句のこの語順だと、「素麺」を赤土へ? という疑問が読者の脳内を駆け巡るのではないかと。
“参った”

四阿にさへ引きこもりたし木の実落つ

鈴白菜実

夏井いつき先生より
「木の実のカーテンから、『中で護られていたい』という感覚を詠みました。上五字余りは許容範囲とは思うものの、『こんな四阿のような野外の開放的な場所でさえ』という思いを表現するのに、もう少しすっきりした措辞がないかとは思いましたが、これが限界でした……」と作者のコメント。

「さへ」とした意図は、作者コメントを読んで理解はしました。が、俳句だけでは、ちょっと伝わりにくいかな。
“難しい”