第72回「木の実のカーテン」《ハシ坊と学ぼう!⑦》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
指ふとし老医むく柿揺れてある
幸香
夏井いつき先生より
「夫は84歳まで現役の医師でした。器用なのに手は太くごっつかったです。その手で毎年のように干し柿を作って食べていました」と作者のコメント。
今、剥いているのか。すでに剥き終わって、干し終わっているのか。時間軸がどこにあるのか、迷わされました。
「夫は84歳まで現役の医師でした。器用なのに手は太くごっつかったです。その手で毎年のように干し柿を作って食べていました」と作者のコメント。
今、剥いているのか。すでに剥き終わって、干し終わっているのか。時間軸がどこにあるのか、迷わされました。


毬栗をくぃっと踏みて割るナース
小川さゆみ
夏井いつき先生より
「ナース」という人物が最後に出てくる展開は、意外性があって良いという評価と、いきなり「ナース」が出てきて面食らったという評価とが、同じぐらいの割合になりそうな作品です。
「ナース」という人物が最後に出てくる展開は、意外性があって良いという評価と、いきなり「ナース」が出てきて面食らったという評価とが、同じぐらいの割合になりそうな作品です。


草の実やメンコ吊られし店の跡
木ぼこやしき
夏井いつき先生より
「昔の駄菓子屋さんには、大小のメンコが吊られていて、くじで何等が当たるかによって、もらえる大きさが違いましたよね。年齢がバレますね」と作者のコメント。
「草の実」と「メンコ」が吊られている店の取り合わせは良いのですが、「吊られし」から一気に「跡」となると、店はもうないという展開が早すぎて、少々損。時間の流れをもう少し操作して欲しいところです。
「昔の駄菓子屋さんには、大小のメンコが吊られていて、くじで何等が当たるかによって、もらえる大きさが違いましたよね。年齢がバレますね」と作者のコメント。
「草の実」と「メンコ」が吊られている店の取り合わせは良いのですが、「吊られし」から一気に「跡」となると、店はもうないという展開が早すぎて、少々損。時間の流れをもう少し操作して欲しいところです。


団栗を拾う子蹴る子通学路
おケイちゃん
夏井いつき先生より
「通学路」は、ありがちな着地。下五をもう一工夫すると、様々な展開が広がってきます。
「通学路」は、ありがちな着地。下五をもう一工夫すると、様々な展開が広がってきます。


鵯が鵯呼ぶ赤い実のレストラン
ゆりかもめ
夏井いつき先生より
「バラの小さな実が赤くなると必ず鵯が来るので、何種類かのバラを植えてあります。鵯の食堂です」と作者のコメント。
鳥たちがやってくる実のなった木を「レストラン」とする比喩は、かなり手垢がついています。独自の表現ができるとよいのですが。
「バラの小さな実が赤くなると必ず鵯が来るので、何種類かのバラを植えてあります。鵯の食堂です」と作者のコメント。
鳥たちがやってくる実のなった木を「レストラン」とする比喩は、かなり手垢がついています。独自の表現ができるとよいのですが。


赤い実を吊るす秋風に鳴るように
渡辺鬼
夏井いつき先生より
「後半が冗長な気がして『秋風鳴るように』も考えたのですが、風が鳴るのではなく、実が鳴ると言いたかったので、助詞『に』を残しました」と作者のコメント。
後半の「に」を残したのならば、前半の「を」をとるのが、選択としてはベターでしょう。
「後半が冗長な気がして『秋風鳴るように』も考えたのですが、風が鳴るのではなく、実が鳴ると言いたかったので、助詞『に』を残しました」と作者のコメント。
後半の「に」を残したのならば、前半の「を」をとるのが、選択としてはベターでしょう。


傷つきし友の魂木苺や
旅路
夏井いつき先生より
「運良く新鮮なものを買うことができても、優しく洗っただけで傷ついてしまう木苺の儚さと、若い頃の友が重なります」と作者のコメント。
下五の「や」はバランスが取りにくくて難しい型です。構成を一考してみましょう。
「運良く新鮮なものを買うことができても、優しく洗っただけで傷ついてしまう木苺の儚さと、若い頃の友が重なります」と作者のコメント。
下五の「や」はバランスが取りにくくて難しい型です。構成を一考してみましょう。


干し柿や母思い出す甘さかな
ごとう真樹
夏井いつき先生より
「や」「かな」と切れ字が重なりました。どちらか一つ外して、推敲しましょう。
「や」「かな」と切れ字が重なりました。どちらか一つ外して、推敲しましょう。


枯葉踏む音も送信す病床へ
宇佐
夏井いつき先生より
語順を一考しましょう。「病床へ」からではないでしょうか。
語順を一考しましょう。「病床へ」からではないでしょうか。


栗二キロ三時から配信ライブ
とり
夏井いつき先生より
数詞を並べることを狙ったのだと思いますが、あまり効果はありません。「栗二キロ」をどう「配信ライブ」するのか、それを書いたほうが映像が明確になります。
数詞を並べることを狙ったのだと思いますが、あまり効果はありません。「栗二キロ」をどう「配信ライブ」するのか、それを書いたほうが映像が明確になります。


おにぐるみ愛に囚はれ愛家族
ま猿
夏井いつき先生より
「家族を構成する第一次的単位、すなわち妻と夫、母と子、父と子──その三角関係には、揺るがせに出来ない強固な『愛』が構築され、時にそれは『呪縛』にもなり得るのではないかとの思いから作った句です。鷹羽狩行の句に〈胡桃割る胡桃の中に使はぬ部屋〉とありますが、一見無意味なその隙間が実は大切なのかも知れません。それがあるからこそ、成立する幸福もあるのではないかと思うからです」と作者のコメント。
表現したい方向性は理解できます。ただ、下五「愛家族」という言葉に違和感を持ちます。
「家族を構成する第一次的単位、すなわち妻と夫、母と子、父と子──その三角関係には、揺るがせに出来ない強固な『愛』が構築され、時にそれは『呪縛』にもなり得るのではないかとの思いから作った句です。鷹羽狩行の句に〈胡桃割る胡桃の中に使はぬ部屋〉とありますが、一見無意味なその隙間が実は大切なのかも知れません。それがあるからこそ、成立する幸福もあるのではないかと思うからです」と作者のコメント。
表現したい方向性は理解できます。ただ、下五「愛家族」という言葉に違和感を持ちます。



