第43回「花屋さん内のカフェ」《ハシ坊と学ぼう!④》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
春を吸ふストロー売りの紛れけり
青水桃々
緩急の激し生花やソーダ水
渥美こぶこ
サイダーや死んだ先より産まれ来る
⑦パパ
サイダーの泡のことを表現したいのか、輪廻転生という概念を表現したいのか。そこがイマイチ、読者に伝わりきらないのが問題点。
しろくまの剥製までを苺パフェ
ぷるうと
「しろくまの剥製」と「苺パフェ」は、意外性のある取り合わせ。ですが、「~までを」の状況がイマイチ分かりません。
名の哀し小さき果実よへびいちご
稲垣加代子
「~哀し」の終止形、「~よ」の詠嘆、三段切れになりました。更に、上五中七は、季語「へびいちご」の説明になりました。
囀や眼差し険しリセエンヌ
青木りんどう
特大のパフェを分けあう春の昼
Q&A
下五の季語の選択によって、様々に化ける可能性のある句です。
カフェラテのミルクふわふわ桜漬
みづちみわ
サンプルより貧相なパフェ四月馬鹿
さ乙女龍チヨ
借景は花や頷きおうて苺パフェ
広島 しずか80歳
パフェ溶けて沈黙のまま春疾風
柊まち
一口の水にも合掌へんろ道
里山まさを
惜しいのは、助詞。「にも」と書きたい気持ちは分かりますが、「も」は不要です。説明的になる上に、中八になりますからね。
ドライフラワー壁じゅう吊るす春の雷
ルーミイ
上五中七の状況は切り取れています。ただ、季語「春の雷」がベストかどうか、少々疑問です。「春の雷」は、かそけき雷。
コースター濡らす沈黙春の雷
おこそとの
上五中七の描写はよいですね。季語「春の雷」がベストかどうか、最後の悩みどころです。
金箔の苺パフェの先大谷翔平
石橋 いろり
「様々な写真集が目に入りました」と作者のコメント。
俳句の字面では、どういう状況なのか、ちょっと分かり難いです。大谷翔平がいた? と読まれるのではないかと。
燕の子目に入ればすぐねだりをり
平井伸明
「五歳のうちの子の様子です。毎日いろいろなものを欲しがり、大変です(笑)。当初は〈燕の子父のぶんまでポテトフライ〉と、マクドナルドのポテトを私の分まで取ろうとする様子を初案としていましたが、子と父が近いような気がしてたので推敲し、提出句になりました」と作者のコメント。
可愛い盛りですね。その様子を、是非一句一句に書き留めてあげて下さいね。
さて、この句ですが、原句にある「ポテト」を書くほうが、リアリティが倍増します。更に、燕の子がねだっているように読めるのも問題なので、季語も再考したほうが良さそうです。
夕暮れの花屋で苺パフェ赤し
ブチ猫
「で」は、散文的な助詞の使い方になります。「で」を外して、意味上の切れを入れて、後半を「苺のパフェ甘し」ぐらいにすると、全体のバランスが整ってきます。
熱帯夜カフェの緑のかすかな揺れ
一久恵
「カフェの冷房は、熱帯夜にありがたいです。さらに、観葉植物がクーラーの風で揺れていると、涼しさが増すように思います。観葉植物は、熱帯の植物のようなので、熱帯夜とイメージが合うと考えました」と作者のコメント。
なるほど、そういうニュアンスを表現したいのですね。「熱帯夜」という季語が最初に出てくるので、後半「かすかな揺れ」は、なんの揺れなのか、読みを迷いました。冷房の風ならば、「冷房」と書かないと伝わらないかも。
注文はカフェラテにカプチーノ春
岩本夏柿
「チャレンジとして〈注文はカフェラテにカプチーノ 春〉と『カプチーノ』と『春』の間に空白(スペース)を入れたかったのですが、入力フォームが受け付けてくれませんでした。この句の場合、『春』の前の空白は効果がないのでしょうか?」と作者のコメント。
「空白を入れたかったのですが、入力フォームが受け付けてくれません」というコメント、時折届きます。お気持ちはわかるのですが、空白という手法に頼らず、それを表現することを考えて欲しいと思うのです。
例えば、俳句の「切れ」は、まさに空白以上の効果を表現してくれるわけで、まずはそこからですね。この句の場合は、「注文は」は必要なのかどうか。そこも含めて、再考してみましょう。
珈琲の角砂糖溶く薔薇のカフェ
伊達紫檀
この内容でしたら、「角砂糖溶く薔薇のカフェ」で、伝えたいことは十分伝わります。それが、珈琲でも紅茶でも想像できますからね。上五に「○○○○や」と、全く別の情報を入れ込むと、佳句として評価が愕然と変わってきます。
一人カフェディナー無しとし苺パフェ
英曙
中七下五、言い訳をそのまま書いてしまったのが、散文的になりました。俳句は、映像ですよ。
来日の外国人や三一一
黒猫
入れたい情報があまりにも厖大。俳句は、十七音しかないので、経緯を物語ることは非常に難しいのです。俳句は、映像描写。その向こうに、さまざまな物語を想像してもらう。そのような文芸です。