俳句deしりとりの結果発表

第38回 俳句deしりとり〈序〉|「っか」①

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第38回の出題

兼題俳句

浮世絵の象ぐんにやりと往く立夏  弥栄弐庫

兼題俳句の最後の二音「っか」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「っか」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

っかっとか!俳句亀鳴く蚯蚓鳴く

西 メグル

っか」や「っと」どうしてくれよう義士祭

ヒマラヤで平謝り

っか綴る作句めぐらし春の興

ゆきえ

うんうん、そうだね、第37回が「っと」で第38回が「っか」なんてやってらんないよね。嘆きながらもみなさんが綴ってくれたしりとりを紹介していきましょう、レッツラゴー。
“良き”

六花てふ名は高貴なる白きゴミ

鹿達熊夜

武蔵野にぽっかり浮かぶ春の雲

山田 健二

あやとりで輪っか作りて春の山

へばらぎ

いきなりしりとり成立してないシリーズ。時々あるんです、出題の二音で始まる句ではなく、十七音のなかに出題の二音を入れ込んで投句される例が。ですが残念、今回は「っか」から始まる俳句がお題なのです。

 

“ポイント”

使ひ魔と集ふ種物屋の灯り

弥栄弐庫

津観音の撫で石の凹春の鳥

若宮 鈴音

ちゃん先生のつまらんジョーク卒業す

植木彩由

銀崩す四月の左遷かな

留辺蘂子

前回兼題「っと」でもあったんですが、促音「っ」を大きい「つ」に読み替えての投句もありました。作りやすくなるのは間違いないけど、どうせならやっぱり「っ」から始まる難題を共に分かち合いたいなあ。

個人的に初めて知って面白かった単語は「遣銀」。費用、特に旅費を意味する言葉なんだそうです。《留辺蘂子》さん、世知辛さが出てて良いねェ。

“とてもいい“

꿍놀이 각각에 내리는 봄빛 있다

鰯山陽大

ッカッカジュセヨ被る売り場のサンドレス

うーみん

"come with it now!"「レイジ」ライヴに煽る春

マサオカ式ぉ村椅子

今回もあるぞ外国語シリーズ。《鰯山陽大》さんは前回上五が韓国語での投句だったけど、今回は全編韓国語。読めないよ、どれが季語なんだよ!! 《うーみん》さんもたぶん韓国語。値引き交渉のフレーズだって大学の授業で教えてもらった記憶がうすぼんやりと……。

《マサオカ式ぉ村椅子》さんは英語。シャウトで煽る場面なら「come」の前に小さい呼吸のように「ッ」が発音されてるのかもしれないなあ。

“ポイント”

っかかかか」印籠へ風梅の庭

森野みつき

っかっかっかと御老公発つ梅の里

赤味噌代

っかっかっか黄門笑ふ梅の里

早坂喜熊

っかっかっか黄門様と冬ごもり

苫野とまや

っかっかっか花見に東野英治郎

ひでやん

っかっかっか日永の東野英治郎

吉野川

っかっかっか光圀の行く夏野原

高橋寅次

っかっかっか光圀笑ふ風光る

帝菜

っかっかっ麗かなるや黄門様

絵夢衷子

さあ、ここからは誰がどうみても「っか」から始まるしりとり俳句でございます。このネタたくさん届いたんだよねぇ、黄門様こと水戸黄門! そして東野英治郎! 子ども心にも黄門様は笑ってるイメージ刷り込まれてたなあ。取り合わせの季語も「梅」「花見」「日永」「風光る」など明るいものが多いのもそのせいでしょうか。
“とてもいい“

っ呵呵呵と祖父は耕す手を止めぬ

伊藤 恵美

っかっかと笑う祖母ちゃん桜草

ピアニシモ

っかっかと笑う老人秋の空

小花風美子

っかっかと笑うがん友春入日

ひろ笑い

っかっかっと笑う和尚の着ぶくれて

天風さと

っかっかっと笑ふ指圧師冬ぬくし

佐藤さらこ

っかっかっと河童わらったクロッカス

小川晴よ

っかっかっか天狗過ぎしか春霞

実相院爽花

黄門様のイメージと重なるのか、祖父や祖母をはじめ老齢の笑いをイメージした句も多かったですね。《佐藤さらこ》さんの「指圧師」は笑いの振動が指を介して伝わってくる手触りが良いなあ。「冬ぬくし」が心地良い刺激を思わせます。《小川晴よ》さんと《実相院爽花》さんの変化球具合も個人的には好き。天狗は呵々大笑するイメージあるけど、河童が笑うのは少し意外。気の良い河童から悪どいイタズラ者まで、描かれ方に幅のある生物(?)だから笑い方次第で印象がガラッと変わりそうですねえ。「っかっかっ」のあっけらかんさと「クロッカス」の取り合わせからすると、あんまり悪いヤツじゃなさそうで、ほっ。
“良き”

っかあかあ曇天仰ぐ寒鴉

沙魚 とと

っかぁー」と母呼ぶ烏春霞

かなかな

っかっかっ威喝に見つく鴉の巣

るう

ッカカカカ」朝陽に惑う鶲追い

鍋焼きうどん

っかかかと笑翡翠アイスクリン

一寸雄町

っかっと鳴いてたそがれの春の鹿

くさもち

っかっかと老猫も恋春だもん

中島    紺の子

鳴き声の「っか」シリーズ。「か」で鳴く声といえば真っ先に思い浮かぶのは鴉ですねえ。身近で観察しやすいからこその強み。日頃目にするような鳥ではありませんが、動画で確認すると「鶲」や「笑翡翠」もしっかり「っか」で鳴いていました。身体の大きさもあるんだろうけど、笑翡翠が思った以上に大声で笑っててビックリ。

鳥以外だと《くさもち》さんの「春の鹿」と《中島    紺の子》さんの「恋猫」もありました。鹿はたそがれて老猫は血気盛んな対比が愉快。「春だもん」の口語も可愛い。
“とてもいい“

ッカカカッ!鳥のつつきて山笑う

細葉海蘭

っかと開くカバの大口春浅し

クスノさとみ

っかっかっかひたすらに蟻穴をでる

はるを

っかつっかつっかつ廊下に鹿の来てのどか

金魚

動作による「っか」シリーズ。《細葉海蘭》さんは啄木鳥かなあ。音が春の山で谺する空間の広さが好き。カバが口を開ける迫力は動作の印象として理解しやすいけど、《はるを》さんの「蟻穴をでる」へのミクロな視点は意外でありました。蟻の無機質さがコワイ。《金魚》さんの「っかつっかつっかつ」は蹄の歩みのリズムがリアル……なんだけど、廊下に鹿くるの!? どういうシチュエーション!?

〈②に続く〉
“とてもいい“