写真de俳句の結果発表

第56回「百日紅の名所」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

第56回のお題「百日紅の名所」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

法螺貝の響く高音百日紅

めたぽ

夏井いつき先生より
「法螺貝」「高音」と書けば、響いてますよね。
“ポイント”

百日紅あかるく死出の風呂へ日々

沼野大統領

夏井いつき先生より
「我が家には、ちょうど風呂場から見える位置に百日紅があります。流石に入浴の際は閉めるのですが、掃除のときなどは湿気らないように窓を開けることが多く。日常に欠かせない場所ですが、私の祖父(享年77)が入浴中に居眠りをして旅立った場所でもあります。そんな場所でも日々の営みは続いてゆく。助詞『へ』は『を』『に』と迷いましたが、内外をあまり意識せず『風呂へゆく』という日常性を強調する為に『へ』としました」と作者のコメント。

一族にとって強烈なエピソードですね。ただ、たった十七音でエピソードを語るのはとても難しい。現状としてこれをキープしておき、一年ごとに「百日紅」とこのエピソードに挑戦していきましょう。自分では気付かないうちに俳筋力はついていきますから、ある時いともカンタンに、佳き中七下五がでてくる日が必ずきます。
“ポイント”

広縁の沼に移れり夏の空

肴 枝豆

夏井いつき先生より
「広縁に座ると、目の前の沼に夏の青い空が映っている。水辺のそばで縁側に立たずみ、暑い盛りでも涼しく過ごせているさまを表現しました」と作者のコメント。

作者コメントからすると、「移れり」なのか「映れり」なのか……。どちらにしても、少しずつ推敲すべき点があります。ご自身が表現したかったことを、再度確認してから推敲にかかりましょう。
“参った”

百日紅吃音症は個性なり

梅田三五

夏井いつき先生より
「百日紅の花言葉は『雄弁』。一方で自分の言いたいことをうまく話せない人もいる。それはそれで個性なのではないかと思い、詠みました」と作者のコメント。

確かにその通りなのですが、俳句としては「~は個性なり」が説明の言葉になっています。表現したいことを諦めず、ここをもう一押し、描写に徹してみましょう。
“ポイント”

海示す一枝咲かせり百日紅

海色のの

夏井いつき先生より
「他の枝には一つも花がないのに、何かを指し示すように一枝だけたくさん花をつけた百日紅を見て面白いなと思ったことがありました」と作者のコメント。

「海示す一枝」とあり「百日紅」とあれば、それは咲いていることを意味します。ここを再考してみましょう。
“ポイント”

伯母はは叔母の背におしゃべりな百日紅

海色のの

夏井いつき先生より
「伯母はは叔母」と人物を並べ、「おしゃべりな百日紅」を取り合わせることで、光景が見えてきます。「~の背に」が必要かどうか。一考してみましょう。
“参った”

経響く高野の寺や百日紅

一石 劣

夏井いつき先生より
「高野山の普賢院の芭蕉堂前に古い百日紅が植っているとのこと、芭蕉とも『ホトトギス』ともゆかりのあるとのことで、題材にしました。父の墓が高野山にありますので、今度訪ねてみようと思います」と作者のコメント。

「高野」と「百日紅」という句材はよいと思います。ただ、「高野」「寺」「経」、それぞれの単語が近すぎるのが勿体ないですね。
“ポイント”

御簾上げて湖面の色に百日紅

幽香

夏井いつき先生より
中七の終わり「~の色に」という表現だけが、少々引っ掛かります。
“ポイント”

害虫や抵抗虚し百日紅

四季奈津子

夏井いつき先生より
「~や」の切れ字、「~虚し」の終止形で切れる、三段切れです。どちらか一カ所、繋ぎましょう。
“参った”

御降嫁の心地や躑躅楕円めく

蜘蛛野澄香

夏井いつき先生より
「第14代将軍・徳川家茂の正室となった和宮様。降嫁は皇族が非皇族に嫁ぐことです。親王様と婚約をしていたにもかかわらず、歴史上唯一、武家に嫁ぐことが決まった和宮様の気持ちを、庭園で見つけた楕円の躑躅に重ねました」と作者のコメント。

かなり複雑なことを書こうとしているのは理解しました。「~心地や」と詠嘆した後の、「躑躅楕円めく」という措辞が、読者をどこまで説得できるか。微妙に不安は残ります。
“ポイント”

百日紅若芽にうどんこ宿を借る

いくと改めて明石の上いくと

夏井いつき先生より
中七下五の句意が、イマイチ分かりません……。
“ポイント”

季重なり

還暦の革ジャンが行く新樹光

雀子

夏井いつき先生より
「革ジャン」も季語ではありますが……。
“ポイント”

百日紅共に滑った友は亡く

春霞

夏井いつき先生より
「友人の家の庭にあった百日紅。よく二人で滑って遊んだ想い出です」と作者のコメント。

木に登って「滑った」ということが、どこまで伝わるか。少々懐疑的です。
“ポイント”

百日紅ラテ氷に映えしテラス席

すみだ川歩

夏井いつき先生より
「~に映えし」は説明の言葉になります。更に、「ラテ氷」は飲み物? かき氷? そのあたりも気になります。
“参った”

絶望未満笑っておくれ百日紅

Broken Bow

夏井いつき先生より
「絶望未満」と「百日紅」の取り合わせは佳いですね。中七が、とても勿体ないです。再考してみましょう。
“ポイント”

6号路ふと見上れば『セッコク』ぞ!

朝夕人

夏井いつき先生より
「高尾山の6号路を登っていると、人だかりが。皆木の上を眺めたり三脚で写真を撮ってました。見上げるとはるか上の杉の大木の枝にセッコクの真っ白な花が!」と作者のコメント。

俳句において、「ふと見上げれば」という措辞はほとんど不要です。さあ、ここからが本当の意味での創作。情報の取捨選択をしてください。
“ポイント”