第56回「百日紅の名所」《ハシ坊と学ぼう!⑫》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
鯉しぶき水鏡の紫薇こっぱみじん
ズッキーニン
夏井いつき先生より
描こうとしている光景は佳いですし、「鯉しぶき」「こっぱみじん」などの言葉にはリアリティもあります。少々情報が多いので、中七を一考してみましょう。
描こうとしている光景は佳いですし、「鯉しぶき」「こっぱみじん」などの言葉にはリアリティもあります。少々情報が多いので、中七を一考してみましょう。


退職や散歩路に百日紅在り
つーじい
夏井いつき先生より
「退職や」という上五に「百日紅」を取り合わせるのは、良いですね。「散歩道に~在り」は、説明的な書き方ですので、ここを再考してみましょう。


百日紅ジャングルジムの秘密基地
コミマル
夏井いつき先生より
「近所の幼稚園には、昔から園庭に百日紅の木があります。木の後ろにジャングルジムがあるのですが、園児達はそこを段ボールやビニールで囲んで秘密基地にしています。紐が数本、百日紅の根元に伸びていて、木にも何か役割がありそうです。助詞は『の』が『は』で迷いました」と作者のコメント。
「百日紅」と「ジャングルジム」の取り合わせは、よいですね。ただ、「ジャングルジム」を「秘密基地」と見立てる句はかなりあります。「秘密基地」自体が、俳句ではよく使われる語であることも申し添えておきましょう。
「近所の幼稚園には、昔から園庭に百日紅の木があります。木の後ろにジャングルジムがあるのですが、園児達はそこを段ボールやビニールで囲んで秘密基地にしています。紐が数本、百日紅の根元に伸びていて、木にも何か役割がありそうです。助詞は『の』が『は』で迷いました」と作者のコメント。
「百日紅」と「ジャングルジム」の取り合わせは、よいですね。ただ、「ジャングルジム」を「秘密基地」と見立てる句はかなりあります。「秘密基地」自体が、俳句ではよく使われる語であることも申し添えておきましょう。


海の香を運ぶ小風や百日紅
静岩
夏井いつき先生より
惜しいです。「海の香~風」とあれば、「運ぶ」という動詞は不要です。節約できた音数をどう使うか。そこにワンランクアップの鍵があります。
惜しいです。「海の香~風」とあれば、「運ぶ」という動詞は不要です。節約できた音数をどう使うか。そこにワンランクアップの鍵があります。


サルスベリ大人になって名を理解
涼和人
夏井いつき先生より
「子供の頃、木と動物の関連性が分からなかったし、聞くこともありませんでした。単に『?』だったことが、むしろ思い出になってます」と作者のコメント。
なぜ、こんな名前がつけられているのか。それが分かることもささやかな学びです。これからも、季語になっている沢山の植物や動物と出会ってくださいね。
「子供の頃、木と動物の関連性が分からなかったし、聞くこともありませんでした。単に『?』だったことが、むしろ思い出になってます」と作者のコメント。
なぜ、こんな名前がつけられているのか。それが分かることもささやかな学びです。これからも、季語になっている沢山の植物や動物と出会ってくださいね。


百日紅退院の日のまぶしかり
三日余子
夏井いつき先生より
「『退院日』という言い方もできるのか、また、本来は『まぶしかりけり』のところを、俳句では『まぶしかり』と略すこともあると聞いたのですが、迷いました」と作者のコメント。
「まぶしかり」は、形容詞「まぶし」の連用形ですから、基本的には「まぶしかりけり」とすべきです。ただ、「けり」が続くのであるから類推できるのではないか、として省略してある場合もあります。この句の場合でしたら、「まぶし」と終止形で言い切る方法もありますので、再考してみましょう。
「まぶしかり」は、形容詞「まぶし」の連用形ですから、基本的には「まぶしかりけり」とすべきです。ただ、「けり」が続くのであるから類推できるのではないか、として省略してある場合もあります。この句の場合でしたら、「まぶし」と終止形で言い切る方法もありますので、再考してみましょう。


百日紅老ひた同士の日暮れかな
三日余子
夏井いつき先生より
「老いる」が口語、「老ゆ」が文語。「老ゆ」はヤ行の動詞なので、「老ひ」にはなりません。また、この句の場合、文語で書こうとしているのだろうと推測しますので、「老いし」とするのが妥当でしょう。
「老いる」が口語、「老ゆ」が文語。「老ゆ」はヤ行の動詞なので、「老ひ」にはなりません。また、この句の場合、文語で書こうとしているのだろうと推測しますので、「老いし」とするのが妥当でしょう。


君と行く腕組み語らう避暑散歩
蛙手
夏井いつき先生より
「君と行く~散歩」だけで「腕組み語ら」っているのだろうなと想像できますし、逆に「腕組み語らう~散歩」だけで「君」という人物と一緒なのだろうと想像できます。どちらかに絞って、余った音数の使い方を考えてみましょう。
「君と行く~散歩」だけで「腕組み語ら」っているのだろうなと想像できますし、逆に「腕組み語らう~散歩」だけで「君」という人物と一緒なのだろうと想像できます。どちらかに絞って、余った音数の使い方を考えてみましょう。


百日紅咲き終わるたる刻知らず
志澤紫子
夏井いつき先生より
「百日紅は、その名から百日ぐらい咲き続けるといわれているという事なので、このような句を詠みましたが、百日紅の説明になってしまっているのでしょうか?」と作者のコメント。
そうですね。花の終わりを知らないくらい長く(百日くらい)咲くという情報は、季語「百日紅」の中にすでに入っていると考えるべきです。まさに、それが季語の力ですのでね。
「百日紅は、その名から百日ぐらい咲き続けるといわれているという事なので、このような句を詠みましたが、百日紅の説明になってしまっているのでしょうか?」と作者のコメント。
そうですね。花の終わりを知らないくらい長く(百日くらい)咲くという情報は、季語「百日紅」の中にすでに入っていると考えるべきです。まさに、それが季語の力ですのでね。

