写真de俳句の結果発表

第59回「色っぽい流木」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

第59回のお題「色っぽい流木」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

セピア色の母子並んで棒アイス

林雪

夏井いつき先生より
「母が入院したので、話の種にと昔の写真を探したら、幼い頃家族で海の近くへ遊びに行った時の白黒写真が出てきました。皆で棒アイスをしゃぶっています。『セピア色』で昔の写真とわかるでしょうか」と作者のコメント。

「セピア色」はなんとなく雰囲気があるので、非常によく使われる凡人ワードです。写真であることを率直に書かれることをオススメします。
“ポイント”

夜の秋ノートの端にメモを書く

われもこう

夏井いつき先生より
「ノートの端にメモ」とあれば、「~を書く」は不要です。
“ポイント”

夜半過ぎたりしスーパーに海ぶどう

にわなづな

夏井いつき先生より
「夜半(やはん)」とも読めますので、中七の「し」を外せば、人選です。
“参った”

赤ビキニ脚が老いたる腹までズキン

芳実堂

夏井いつき先生より
俳句というよりは川柳?
“ポイント”

目を逸らす木の股清き百日紅

芳実堂

夏井いつき先生より
上五を全く別な方向にもっていくと、中七下五は生きる可能性があります。
“参った”

ヤドカリやコップの中でおならする

白羊

夏井いつき先生より
特別な意図がない限り、動物・植物の季語は漢字あるいは平仮名で表記するのが定石です。(勿論、カタカナの表記しかないものは致し方ありませんが。例:チューリップ等)
“参った”

夏凪に流木誰ぞ待つからむ

山内三四郎

夏井いつき先生より
「夏の浜辺に打ち上げられた流木は、『誰かを待っているのではないか』という問い・推量を句にしました。『待つからむ』は古い文語表現ですが、夏凪の静けさを伝えるには良いと判断して用いています」と作者のコメント。

もっとさらりと書いてもよいのかも。

添削例
誰ぞ待つ流木ならん夏の凪
“ポイント”

くにゃくにゃといと長き足おおうなぎ

絵美

夏井いつき先生より
「兼題写真の長い流木を見て、長い脚だなと思い、作句しました。季語探しに苦労しました」と作者のコメント。

兼題写真を見ている人は、流木の足を「くにゃくにゃといと長き足」と想像できますが、俳句は字面が全てなので、「おおうなぎ」に「長き足」がある? と誤解してしまいます。まずは、俳句の基本型からコツコツ練習していきましょう。YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』や、『世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)を参照してください。
“ポイント”

異動告げし煙草休憩冬枯れよ

有海無音

夏井いつき先生より
下五の季語を「冬枯るる」とすれば、人選です。
“良き”

季語なし

流木皆椎名林檎になりたがる

明日ぱらこ

夏井いつき先生より
「林檎」は季語ですが、「椎名林檎」は季語ではないなあ……。
“参った”

祖母の骨紙のやうなり八月尽

歩帆

夏井いつき先生より
語順が惜しいです。季語は動く可能性はありますが、亡くなったのが「八月尽」だったのならば、私的な必然性はありますね。

添削例
八月尽紙のやうなる祖母の骨
“ポイント”

宇宙人足を置き去り海水浴

発泡美人

夏井いつき先生より
兼題写真があれば、伝えたい内容は理解できますが、写真を知らない人には「宇宙人が足を置き去りにする?」という疑問だけが残ります。
“難しい”

海の家ただ居るだけで高揚感

いろは

夏井いつき先生より
その「高揚感」をかきたてている光景を描写してみましょう。
“ポイント”

南アの夏菓子ひったくるマントヒヒ

やまだ童子

夏井いつき先生より
句材はとてもおもしろい。「夏菓子」は、「氷菓」のこと?
“参った”

いうれいにゑくぼならみづのいたづら

青に桃々

夏井いつき先生より
「いうれいにゑくぼ」という発想は面白いです。もうこれだけで、一句にできる材料がそろっている感じもします。
“難しい”

母は杖に寄り掛りすぎ道灼くる

高橋寅次

夏井いつき先生より
「すぎ」は、歩いて過る? 「寄り掛かる」度合いが過ぎる? そのあたりが読み解き難かったです。
“ポイント”

生脚の皮掻き壊し朱夏は雨

古瀬まさあき

夏井いつき先生より
上五中七は治療? 「朱夏は雨」で無理やりおさめた感じが気になります。
“参った”

星飛んで龍涎香を嗅ぎぬべし

みづちみわ

夏井いつき先生より
下五は少々気取りすぎかも。もっとさらっと書けば、季語が主役として立ってきそうです。
“良き”

月光の魔法のとけて人魚かな

広島 しずか80歳

夏井いつき先生より
「かな」があまり効いてないので、以下二択を提案。
①下五を「ゐる人魚」と名詞止にする。
②〈月光の魔法は泡となり人魚〉という形にする。
いかがでしょう。
“ポイント”

流木の値札十万夏の果

こもれび

夏井いつき先生より
「デパートで流木のオブジェを見つけました。そこら辺にいくらでも転がっていそうなものに見えますが、値段はビックリ! 『流木』は季語ですが、売られているものなので、『夏の果』を季語として用いました」と作者のコメント。

「流木」は季語にならないかと……。下五の季語はさらに動く可能性もありそうです。
“ポイント”