写真de俳句の結果発表

第59回「色っぽい流木」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊 NEW

第59回のお題「色っぽい流木」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

よろこびを余さずくるむチューリップ

伊藤 恵美

夏井いつき先生より
第53回〈よろこびをくるむ形よチューリップ〉第55回〈よろこびをこぼさぬやうにチューリップ〉と二回ハシ坊をいただきました。推敲して再々チャレンジいたします」と作者のコメント。

この句想として、ひとまずの完成形になったと思います。ただ、前回も書いたかもしれませんが、細見綾子さんの〈チューリップ喜びだけを持つてゐる〉という先行する名句がありますので、「チューリップ」+「よろこび」の取り合わせで、細見さんの作品から切り離されるところまでいくのは、かなりの離れ業かと思います。
“ポイント”

海へ向くデッキチェアと足の裏

谷川ふみ

夏井いつき先生より
「『デッキチェア』は季語でいいのでしょうか? 悩みましたが……」と作者のコメント。

季語としては、少々弱いかと思います。無季だけど夏の季感があるとするか、やはり明確な季語を入れるか。悩んでみて下さい。
“ポイント”

優等生よ酔芙蓉にはなれなくて

パンダスミレ

夏井いつき先生より
季語「酔芙蓉(すいふよう)」を比喩に用いると、季語の鮮度が落ちるとされます。
“参った”

絵日記の海星と海月謎の木と

ゆりかもめ

夏井いつき先生より
並列の型をとりたいのならば、「海星と海月と謎の木と」と並べるべきでしょう。「絵日記」に描かれた「海星」と「海月」なので、無季の句となりますが、夏の季感はあります。
“ポイント”

子も我もグラスボートに酔ひにけり

宮崎和湖

夏井いつき先生より
明確な季語はありませんが、夏の季感はあります。「子も我も」と状況を書くよりは、上五に季語を入れたほうが得策でしょう。
“参った”

夕波や「母のない子」を唄ひし日

ちえ湖

夏井いつき先生より
「親の小言が鬱陶しく感じていた子供の頃の夏休み。従姉妹と一緒に夕暮れの浜でカルメン・マキの『時には母のない子のように』を歌った思い出です」と作者のコメント。

「夕波」は季語ではないので、無季の句としては成立しています。このまま無季とするか、上五に何らかの季語を取り合わせるか。再度、自問自答してみましょう。
“参った”

打ち上げし流木迎ふ月の道

林 廉子

夏井いつき先生より
「打ち上げし」が過去で、「迎ふ」が現在。微妙な時間軸に違和感を持ちました。
“ポイント”

9年ぶり海パン流行りはショート丈

佳奈

夏井いつき先生より
特別な意図がない限りは、漢数字を使うのが定石です。
“良き”

スマホOFF波と太陽と砂日傘

柚伽

夏井いつき先生より
発想は分かりますし、良いです。季語「砂日傘」に「太陽」の存在は入っていると考えて下さい。並列の場合は、一つ違う方向性のモノを入れると、効果的だったりします。
“参った”

浜万年青五年前まで魔女の弟子

のなめ

夏井いつき先生より
発想は面白いのですが、「浜万年青」という季語がベストなのか、判断を迷います。
“難しい”

砂日傘かたむけて平和登校

松りんご

夏井いつき先生より
「海水浴に来たが、子供たちが海からなかなか上がってこない。太陽が沈み始め、ビーチパラソルの影がずれて傾ける。明日は8月6日の平和登校日よ」と作者のコメント。

作者コメントを読まないと、俳句の文言だけでは句意が読み取れません。まずは、「子どもたちが海からあがってこない」で一句、「砂日傘を傾ける」で一句、という具合に、何句かに分けてみましょう。
“ポイント”

大暑に脚線美我ニヤリ

イチゴミルク

夏井いつき先生より
「木が脚線美に見えて……」と作者のコメント。

流木が美しい足に見えたのならば、それを描写しましょう。「我ニヤリ」は不要です。
“参った”

磯もぐり番犬ならぬうつぼの巣

古都 とおる

夏井いつき先生より
巣穴から顔を出す「うつぼ」を「番犬」に喩えたのでしょうか。ならば、上五「磯もぐり」から書くのではなく、「うつぼ」を真っ向から描写してみることをオススメします。
“難しい”

働きばちハットのつばに羽伸ばす

太井 痩

夏井いつき先生より
第53回『火の山公園のチューリップ』の〈帽発たぬ働蜂やずる休み?〉〈働き蜂化けて半時ハットピン〉に対するご指導ありがとうございました。推敲句の『展開が、少々分かりにくい』というご指摘から、今回は『働く気のない働き蜂がいた!』という作句当初の気持ちをストレートに表現するよう努めました。あと頭韻と脚韻を入れてみました。まだまだ暗中模索の日々で恐縮ですが、よろしくお願いします」と作者のコメント。

「帽」「ハット」は動かし難い言葉なのでしょうか? 作者コメントにあるように、作句当初の「働かぬ働き蜂や」という思いを大切にされることをオススメします。
“ポイント”

秋汀に簡体ハングル仮名のゴミ

太井 痩

夏井いつき先生より
上五の「に」は、散文的になりがちな助詞の使い方。要一考です。
“参った”

夏草は不在の友の影を出す

柑青夕理

夏井いつき先生より
「夏草の影に、ここにはいないはずの友人が見えた気がしました。気配を感じてすぐに目を戻すと、そこには誰もおらず、夏草があるだけでした。旅行先なので知り合いはいないはずなのですが、手を挙げていたように見えたのでシルエット的にも友人かなと。不思議なこともあるものですね」と作者のコメント。

書こうとしている内容はとても良いです。印象深い。惜しいのは、「~は~を出す」という叙述。一年後の夏草の時期に、再度季語の現場に立ってみましょう。その頃には、更なる俳筋力もついていますし、季語の現場で手に入れられる言葉もあるでしょう。句材を寝かせてみることも、大切な熟成法です。
“良き”

秋の乗る透けし舟あり水平線

丸山美樹

夏井いつき先生より
「秋を感じるのは水平線かなぁと思いました。暑さに参っている自分の心かもしれませんが。水平線を越えて、秋の乗る小さな舟が見える気がしました」と作者のコメント。

作者コメントの言葉のほうが、素直に読者の心に入ってきます。「秋の乗る小さき舟や」とすれば、上五中七が整います。
“ポイント”

にんげんが触れてきたのよ野良海月

織璃無

夏井いつき先生より
「無人島の探索の過程で、いつの間にかクラゲや白ガヤに刺されていた、という経験をクラゲ側から詠みました。クラゲからすれば人が近づいてきただけ。ましてや足で踏み潰そうとしてくる。なら触手が偶然触れても仕方ないよねという嘆きとボヤきを、『のよ』に込めました。クラゲは個で過ごすのが多いそうですが、その中でも捻くれた性格の個体であるのかなと、『野良』をつけました。他の水中生物に愚痴っているのかもしれません」と作者のコメント。

「野良」とつけた意図は分かりましたが、逆に意図が見えすぎて損をしています。下五の着地を再考してみましょう。
“ポイント”