写真de俳句の結果発表

第66回「お台場の桜」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊 NEW

第66回のお題「お台場の桜」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

遊び舟台場の跡を遠ざかり

る・こんと

夏井いつき先生より
中七ですが、「跡」が必要ならば「砲台跡を」とすればすっきりしますし、現代のお台場という地名を押し出すのであれば……

添削例
お台場を遠ざかりゆく遊び舟
“ポイント”

使はれぬ初蝶3カメに眺む

いかちゃん

夏井いつき先生より
「使はれぬ」のは、「初蝶」? 「3カメ」? 句意が明確に読み切れませんでした。
“ポイント”

夜の校庭老桜の朧に浮かぶ

おおいおちゃ

夏井いつき先生より
「『浮かび』か『浮かぶ』で迷いました。夜、ライトアップされる土浦市の真鍋小学校の校庭の真ん中にある桜を、教室から見ました」と作者のコメント。

「老桜の朧に」とあれば、「~に浮かぶ」は不要でしょう。語順も含めて、再考してみましょう。
“参った”

季節感与えるビル間の桜かな

英曙

夏井いつき先生より
「季節感与える」は感想です。どんな情景を見たから、このような感想を抱いたのか。その映像を描写してみましょう。
“ポイント”

奴がゐた窓暮れて落下紛々

猫おっと

夏井いつき先生より
「仲良しで悪友(麻雀のメンツ)だった高橋くんは、新学年早々、家の事情で転校してしまった。窓際の席は授業中も部活が終わってももちろんそのままで、暗くなって風が出てきて、やたらと花びらが舞っていた、という高校時代の話です。あ〜半世紀近く前のことだ!!」と作者のコメント。

ご本人が変換ミスに気づいて、もう一句、投句されてました。送信ボタンを押す時に、再度見直して下さいね。
“ポイント”

紫禁城天子の階に猫の恋

風友

夏井いつき先生より
「紫禁城」と「猫の恋」の取り合わせには、惹かれます。中七は要再考です。
“難しい”

機関車の発車の笛や散る桜

小林 昇

夏井いつき先生より
下五の季語は、まだまだ動きそうです。
“ポイント”

山彦の応ふ桜と防災無線

沢拓庵

夏井いつき先生より
「多摩川沿いの桜並木を散歩中、『子どもたちの下校時の見守りを……』との防災無線のアナウンスと、遅れてその反響音が聞こえてきました。〔山彦〕たる〔木霊〕は、耳が佳いので、防災無線や下校時の子ども達や町の人の声に応えて返すだろうし、『桜の蕾が開く微かな音(ゴースト・ノート)』にも応えるはず。この防災無線の輪唱めく音から、春が来る長閑さを感じました」と作者のコメント。

良き句材、発想です。あとは調べの調整でしょうか。
“ポイント”

香水を買ふてサラリーマンの頰

紅緒

夏井いつき先生より
「買ふ」が助詞「て」に接続する時は、連用形になりますので「買ひて」となります。音便を発生させることもできます。音便については、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』【音便シリーズ】を参照して下さい。
“ポイント”

解体のショベルが眠る花の塵

まさと澄海

夏井いつき先生より
「近所で住宅の解体があり、昼はショベルが音を立てて動いていたのですが、夜は現場に置かれたまま静かに止まっていました。『眠る』というのは擬人法で気をつけて使わないと陳腐になりかねないとは思いつつ、三音で効率が良いので使いました。この是非を知りたいです」と作者のコメント。

「眠る」を使った意図は理解できます。「夜は現場に置かれたまま」であることを明確にするのであれば、下五を「夜の花」あるいは「夜の桜」とするのも一手です。
“ポイント”

砂混じるシャワーちよろちよろ熱砂の地

志無尽おたか

夏井いつき先生より
第64回『砂漠のホテル』で〈茶色なるシャワーか細き熱砂の地〉ハシ坊に取り上げていただき、ありがとうございました。先生の『砂のまじった水がちょろちょろ出るだけ、という映像が描写できるとベスト』というお言葉を、そのまま推敲させていただきました。ただ、この場合『砂混じる』と『熱砂の地』はともに砂を表しますが、俳句でいう『近すぎる』ということになりませんか?」と作者のコメント。

良い疑問です。そこを回避するためには、「砂混じるシャワー」だけで、出にくい感じは伝わりますので、「ちよろちよろ」の四音を「熱砂」という季語の補強に使うと、こちらが強い印象になります。完成は目の前ですね。
“ポイント”

渇望する街辻むこうは茅花

文月蘭子

夏井いつき先生より
「お台場のような埋立地、つまり人が集まるために造られた街は、賑やかで、無駄なく設計された楽しい街であります。しかし建物の裏側、道路一本隔てて商業施設のない通りは、閑散として雑草がはびこるような地帯があったりします。その雑踏と虚無の対比を詠みたいと思いました。でも難しいです。まだまだこれからも推敲していこうと思います」と作者のコメント。

表現したい内容に共感を抱きます。「渇望する街」あるいは「渇望の街」と、「茅花」の取り合わせを良しとした時、「辻むこうは」と説明しているのが邪魔な気がします。取り合わせるだけで、当然遠近感は生まれてきますので。
“ポイント”

オフィスからふわと飛ぶ夢花朧

窪田ゆふ

夏井いつき先生より
「子どもの頃、高いところから飛び降りる夢をよく見ました。高層階のオフィスで遠くにぼんやりと群がり咲く桜を見ていたら、ふわっと飛んでみたくなる衝動に駆られて、大人になってもまたそんな夢をみるかもしれないと思いました。例えば仕事で行き詰まっていたり、社内恋愛で悩んでいたり……。でも、何の悩みもなく、ただ本当に飛べそうな気になったのかもしれない。そんなことを、OL経験のない私は都会のオフィスに重ねて妄想しています。」と作者のコメント。

高層階から飛び降りる夢なんですね。この書き方だと、「オフィスからふわと飛ぶ夢」が現実逃避を意味していると読まれる可能性のほうが高いかと。俳句として考えた時、「高層階のオフィスで遠くにぼんやりと群がり咲く桜を見ていたら、ふわっと飛んでみたくなる衝動」を書いたほうが、季語の鮮度が高くなるのではないかと考えます。
“ポイント”