俳句ラボの結果発表

第1回 俳句ラボ テーマ×季語で一句|「名刺」×「梅」③

俳句ラボ NEW

俳句ラボへようこそ

皆さんようこそ、俳句ラボへ。
各回に提示されるテーマと季語の発想をかけ算して俳句を生み出す研究所です。
組み合わせからどんな化学反応が起こるかは、あなた次第。
さぁ、実験を始めましょう。

第1回のお題

 
テーマ
名刺
×
季語
 

 

「日本語上手いね」春夜のサワー

骨の熊猫

名刺の裏二月生まれの子です

星瞳花

逆にというか、「春夜」「二月」までキッパリと別の季語で挑んでこられるとアウトー! って判定言い渡しやすいなあ(笑)。しかも「梅」の使い方が人名の「梅子」て!

ちなみにというか、しばらくは挑みやすいように「テーマ×季語」で出題していくんですが、ゆくゆく慣れてきたら「テーマ×テーマ」での出題もしていきたいと思ってます。《骨の熊猫》さん、《星瞳花》さん、キミたちの力はその時のためにあるッ!

家藤正人

香る名刺の主は子ちゃん

舞矢愛

キャバ嬢の手書きの名刺月夜

茂木 りん

や出張先の嬢の名刺

福間薄緑

まさかの「梅子」二人目がいたのでご紹介。それっぽい二句も添えると夜職っぽい感じが三割増し。昔『クレヨンしんちゃん』でこんな話あった記憶がうすぼんやりとあるな……ひろしがキャバクラ名刺見つかってみさえにバチクソ怒られる回……。今のコンプライアンスな時代に放送したら多方面から怒られそうなエピソードですこと。

ポイント

金色の名刺の探偵社

帝菜

はい、「金の名刺」で「探偵」とくれば、これはもう『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』なんだよね。蘭ねーちゃんがバトるタイプの映画久しぶりで嬉しかった思い出。山崎和佳奈さん亡くなられたのいまだにショックなのよ……ご冥福をお祈りいたします。

“難しい”

百枚目の俳句名刺や枝垂

鈴白菜実

俳号に見覚へ晴れて花の兄

渥美こぶこ

俳号の軽きよの香の白き

ぷるうと

俳号と俳句の名刺月夜

若宮 鈴音

祥聖の俳号名刺花の兄

ヒマラヤで平謝り

匂ひ草オレの所属はいつき組

おりざ

が香や名刺の裏に初音の句

霧賀内蔵

ふふむ組長名刺の四枚目

青野みやび

俳号名刺+αの句がけっこうあって嬉しかったのでいくつかご紹介。この原稿が公開されるのは第8回おウチde俳句大賞の結果が東京日比谷の松本楼で発表されるころでしょうか。みんなが俳号名刺を手に交流する姿を思い描くとわくわくします。授賞式の様子はYouTubeライブ配信もあるので、ぜひご覧くださいませませ!

良き

やまずは十枚名名刺刷る

くさもち

ふふむ名刺作成十五枚

めぐえっぐ

一輪配るあてなき名刺積み

夏の町子

初めて名刺刷る時って何枚必要なものなのか見当つかなかったりするよね。しかも僕のようなコミュニケーション苦手マンにとっては配るあてがないのに刷っちゃった……って現実に一人で打ちのめされたりするんだ。悲しいね。「白梅や」「梅ふふむ」「梅一輪」と作者の心理状態に応じて姿の移り変わる梅が愛おしい。

良き

「会長」の横画多し窓に

壱時

華穂といふ棒ふんだんな名よ

弥栄弐庫

名刺に書かれた文字そのものに焦点を当てた描き方。曲線ではなくまっすぐな棒・横画のイメージが枝ぶりの良い梅のイメージと重なるのかもしれませんなあ。「名よ梅よ」の優しい詠嘆の畳みかけもグッド。

ポイント

自己紹介噛んだ白微笑んだ

碧西里

こちらは口語の畳みかけ。「~んだ~んだ」で事実を言い留めてるんだけど、状況説明の前半+季語の擬人化の後半の組み合わせによって心情を察させます。はにかみの表現として「微笑んだ」という動詞を選んできたバランス感覚が良いのはもちろんのこと、「白梅」という色の指定も効果的。仮に「紅梅」だったら艶やかすぎて鼻についてたんじゃないかなあ。色による特徴の違いをうまく使いこなしております。

良き

混色のや転職するべきか

薫空ろろ

既に紹介した句に「源平梅」もありましたが、ここでは「混色の梅」として描かれています。固有名詞で表現した場合と比べて、機知や相対の要素が減って、色の印象だけが鮮明になりますね。「混」の一字が入り乱れる紅と白を映像的に際立たせます。そしてその混色の梅のせめぎあいが「転職するべきか」という自問自答へと転化されていくわけです。その手にはスカウトにもらった名刺なんかが握られているのかもしれません。梅を際立たせつつ、名刺から一捻りを加えた物語性が巧みであります。

ポイント

の香やこりゃあ詐欺師にあたったか

たきるか

梅が効いてるかどうかは正直わかんないんだけど……なぜかこの句が気になってしまう! 「こりゃあ詐欺師にあたったか」ってフレーズに心惹かれてるのは間違いないんだけど、なんで心惹かれるのだろう。過去の大なり小なりの「これは……マズったかもしんねぇ……」って事案の最中の感情がパッチワークのように自分の中に再現されていくからなんだろうか。買ったCDや小説がハズレであることを薄々気づき始めた瞬間とか、通販した商品が届く気配がなかったりとか、そういう細々とした失敗の記憶が。記憶と不安が忍び寄って来るように、梅の香もどこかから鼻孔の奥へと漂ってくるのかもしれないなあ。

フレーズに気を取られて「名刺」が発想の出発点だったことをうっかり忘れそうになったけど、この句の奥に名刺が存在するのだと思うと、なかなか深刻な詐欺事案になっていきそうでコワイ。契約書とかまいてない? だいじょぶそ?
《④に続く》

ポイント