第68回「監視カメラに鵜」《ハシ坊と学ぼう!⑧》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
草田男忌監視カメラの淡々と
津々うらら
夏井いつき先生より
「季語を非常に悩みました。最初は全く違う季語で考えていましたが、なんだか違う気がして、歳時記を見て『草田男忌』と合わせてみようと思いました。最後まで迷ったのは、傍題の『炎熱忌』にするかです。炎熱忌だと、下五の『淡々と』とのバランスがいやらしく思えたので、『草田男忌』にしましたが、忌日の季語が苦手で、そもそも合ってるのか不安です」と作者のコメント。
忌日の季語の扱いが難しいのは、その人物の人生や業績といった情報が季語にがっつり載っかってくるので、バランスの取り方が一筋縄ではいかないからです。しかも、「忌」と「監視」という二つの言葉の持つイメージも際どく、中七下五のフレーズに忌日の季語を取り合わせるのは、ますます難題だなあと思う次第です。
「季語を非常に悩みました。最初は全く違う季語で考えていましたが、なんだか違う気がして、歳時記を見て『草田男忌』と合わせてみようと思いました。最後まで迷ったのは、傍題の『炎熱忌』にするかです。炎熱忌だと、下五の『淡々と』とのバランスがいやらしく思えたので、『草田男忌』にしましたが、忌日の季語が苦手で、そもそも合ってるのか不安です」と作者のコメント。
忌日の季語の扱いが難しいのは、その人物の人生や業績といった情報が季語にがっつり載っかってくるので、バランスの取り方が一筋縄ではいかないからです。しかも、「忌」と「監視」という二つの言葉の持つイメージも際どく、中七下五のフレーズに忌日の季語を取り合わせるのは、ますます難題だなあと思う次第です。


血走るまなこよ夕焼受く嘴
文月蘭子
夏井いつき先生より
「嘴」に掛かるのなら、「受くる」となります。全体の調べを再考して、一句を完成させて下さい。


嘴のいきなりアップ画像は鵜
槇 まこと
夏井いつき先生より
「『いきなりアップの』と『の』を入れるか迷いました。あった方が自然な流れになるように思いましたが、中八になってしまうので、悩んだ結果入れないことにしました。どういう風に考えたら良いのでしょうか?」と作者のコメント。
この内容でしたら、自分の眼球に映った順に書いてあげると、読者はその映像を共有しやすくなります。例えば、以下のような書き方もできます。「嘴」は「はし」とも読みます。
添削例
いきなりの嘴や画像は海鵜らし
「『いきなりアップの』と『の』を入れるか迷いました。あった方が自然な流れになるように思いましたが、中八になってしまうので、悩んだ結果入れないことにしました。どういう風に考えたら良いのでしょうか?」と作者のコメント。
この内容でしたら、自分の眼球に映った順に書いてあげると、読者はその映像を共有しやすくなります。例えば、以下のような書き方もできます。「嘴」は「はし」とも読みます。
添削例
いきなりの嘴や画像は海鵜らし


逆襲の鵜や監視カメラへ糞
藤田ほむこ
夏井いつき先生より
「うちの近くの監視カメラに、たぶん青鷺だと思うのですが白い糞が……それで思いついた一句です」と作者のコメント。
下五が一音余りますが、以下のようにすると人選です。
添削例
逆襲の川鵜や監視カメラへ糞
「うちの近くの監視カメラに、たぶん青鷺だと思うのですが白い糞が……それで思いついた一句です」と作者のコメント。
下五が一音余りますが、以下のようにすると人選です。
添削例
逆襲の川鵜や監視カメラへ糞


コンタクトコール小風の夏初月
とひの花穂
夏井いつき先生より
「コンタクトコールとは、動物や鳥が群れの仲間と連絡を取り合い、居場所を知らせるために発する鳴き声のことです。最近、朝散歩を始めました。まだ、三日目です。鳥の声がよく聞かれますが、よく聞くと本当に会話をしているみたいです。そして、『角川 俳句大歳時記』で『夏初月』を見つけ、響きも美しく大好きになり、この句を作りました」と作者のコメント。
「コンタクトコール」八音と「夏初月」五音を取り合わせるとすれば、残りの音数は僅か。「小風(こかぜ)の」がベストかどうか、悩ましいところです。ここの一工夫が、人選への壁です。
「コンタクトコール」八音と「夏初月」五音を取り合わせるとすれば、残りの音数は僅か。「小風(こかぜ)の」がベストかどうか、悩ましいところです。ここの一工夫が、人選への壁です。


鵜裁くやカメラ木立は冬の罪
猪子石ニンニン
夏井いつき先生より
「上五は『や』でいいのか、また『カメラと木立』のほうがいいのか、迷いました」と作者のコメント。
句意をどう読み解けばいいのか、迷いました。何が誰が「鵜(を)裁く」のか? 「冬の罪」という季語の使い方も、気になります。
句意をどう読み解けばいいのか、迷いました。何が誰が「鵜(を)裁く」のか? 「冬の罪」という季語の使い方も、気になります。


立ち騒ぐ烏賊のすだれに浜鴉
竹庵
夏井いつき先生より
ちょっとした語順の効果なのですが、「烏賊」という季語を少しだけ主役に押し出してやりましょう。
添削例
烏賊干すや浜に鴉の立ち騒ぐ
ちょっとした語順の効果なのですが、「烏賊」という季語を少しだけ主役に押し出してやりましょう。
添削例
烏賊干すや浜に鴉の立ち騒ぐ


千年の孤独を背負う夕海鵜
花岡貝鈴
夏井いつき先生より
「子供の頃、鵜飼を見に連れて行ってもらいました。美味しい鮎をゲットした! と思ったら人間に取られちゃって……何とも可哀想な漁だと思いました。大人になってから鵜飼の鵜は海鵜で、岸壁に巣作りする鵜を捕まえてきて、漁に使うとテレビで見て、知らない土地で見知らぬ仲間と漁に使われる鵜が何とも哀れな気がしました。調べたら、鵜を使う漁は1,300年もの歴史があると知りました。夕と海鵜の間、一拍置きたいです」と作者のコメント。
「千年の孤独」と「海鵜」を取り合わせるとした時、「~を背負う」がやや散文的。この部分をどう改善するかによって、人選に手が届く可能性がでてきます。
「子供の頃、鵜飼を見に連れて行ってもらいました。美味しい鮎をゲットした! と思ったら人間に取られちゃって……何とも可哀想な漁だと思いました。大人になってから鵜飼の鵜は海鵜で、岸壁に巣作りする鵜を捕まえてきて、漁に使うとテレビで見て、知らない土地で見知らぬ仲間と漁に使われる鵜が何とも哀れな気がしました。調べたら、鵜を使う漁は1,300年もの歴史があると知りました。夕と海鵜の間、一拍置きたいです」と作者のコメント。
「千年の孤独」と「海鵜」を取り合わせるとした時、「~を背負う」がやや散文的。この部分をどう改善するかによって、人選に手が届く可能性がでてきます。


洗濯機二回まはして燕かな
小鉢


喪家なる玄関ドアにどでかい蛾
天六寿(てんむす)
夏井いつき先生より
「新盆の頃、監視カメラの映像を見ていると、玄関ドアに今まで見たことのないほど大きな蛾がとまっていました。その姿を見た時、子どもの頃、祖母から『故人が蝶や蛾に乗って帰ってくるから、その時期に殺生してはいけない』と教えられたことを思い出しました。俳句にする際、『喪家なる』という文語と『どでかい』という口語を併せてはダメかと思い、〈喪家なる玄関ドアに蛾の大き〉も考えましたが、蛾の描写のインパクトがないので、文語と口語を使いました」と作者のコメント。
文語と口語の混在は、場合によっては味わいになったりするので、絶対にダメだとは言いません。が、基本的には統一するのが定石です。そして、この句ですが、「喪家(そうか)なる」ではなく「喪の家の」とすれば、「なる」という文語を使わなくてもいいので、敢えて文語にする必要は見つけにくいかと。
文語と口語の混在は、場合によっては味わいになったりするので、絶対にダメだとは言いません。が、基本的には統一するのが定石です。そして、この句ですが、「喪家(そうか)なる」ではなく「喪の家の」とすれば、「なる」という文語を使わなくてもいいので、敢えて文語にする必要は見つけにくいかと。


鵜の糞の重さで川面に落ちた橋
のりこ
夏井いつき先生より
こう書いておられるので、嘘のような事実なのだろうと思います。句材としては面白いのですが、「~重さで~落ちた」という書き方が、原因と結果を書く説明になっています。これを描写にする工夫が、俳句の醍醐味でもあります。
こう書いておられるので、嘘のような事実なのだろうと思います。句材としては面白いのですが、「~重さで~落ちた」という書き方が、原因と結果を書く説明になっています。これを描写にする工夫が、俳句の醍醐味でもあります。


ふるさとの定点カメラの大河炎ゆ
秋野しら露
夏井いつき先生より
中七の「の」を外せば、人選です。
中七の「の」を外せば、人選です。


鵜の姿岩と同化の夕暮れ時
糸桜
夏井いつき先生より
「岩に黒いカワウがずっと動かずにいて、夕方になるとまるで岩の付属物のように見えました」と作者のコメント。
「~と同化の」は説明の書き方です。これを描写にするにはどうすればよいか。考えてみましょう。
「岩に黒いカワウがずっと動かずにいて、夕方になるとまるで岩の付属物のように見えました」と作者のコメント。
「~と同化の」は説明の書き方です。これを描写にするにはどうすればよいか。考えてみましょう。


新緑の被ひし山の赤き塔
惠桜改め さーやのママ
夏井いつき先生より
「新緑~山」とあれば、「被ひし」と説明する必要はありませんね。
「新緑~山」とあれば、「被ひし」と説明する必要はありませんね。


班長は三年不在夏近し
鳴きうさぎ
夏井いつき先生より
「町内には高齢者が多く、町内会の役を担える人が少なく、人間関係も希薄になっている。監視カメラはどこまで役に立つのかなぁ」と作者のコメント。
町内会の班長だと分かるようにすると、人選になります。上五中七はこれで良いので、町の様子が分かるような季語にしてみましょう。
「町内には高齢者が多く、町内会の役を担える人が少なく、人間関係も希薄になっている。監視カメラはどこまで役に立つのかなぁ」と作者のコメント。
町内会の班長だと分かるようにすると、人選になります。上五中七はこれで良いので、町の様子が分かるような季語にしてみましょう。


ハンカチや美し人へ“不”を少し
宙朔
夏井いつき先生より
「作句ではこうした他者の非を願うようなものは、避けるのが良識ではないかと、迷いました。ここで“不”は確かに、送る相手の不幸を、いささかでも願う作者の心根が読み取れると思います。しかしその一方で、せんない事実を受け入れ、『アンタ美人に生まれてラッキーなんだよ。悔しいけど塩せんべ、ハンカチに包んで三枚あげるわ』くらいの、いたずら心とユーモアが汲み取れないかなあと。先生のご意見を伺えれば幸いです」と作者のコメント。
たった十七音しかない俳句ですから、作者コメントの内容を全て入れ込むのは至難の業というべきでしょう。少なくとも、この書き方だと「~へ“不”を少し」の“不”がなんなのか。読者には読み解けません。さらに、中七「美し」は「人」に掛かるのだろうと思われますが、その場合は「美しき」と連体形にする必要があります。
「作句ではこうした他者の非を願うようなものは、避けるのが良識ではないかと、迷いました。ここで“不”は確かに、送る相手の不幸を、いささかでも願う作者の心根が読み取れると思います。しかしその一方で、せんない事実を受け入れ、『アンタ美人に生まれてラッキーなんだよ。悔しいけど塩せんべ、ハンカチに包んで三枚あげるわ』くらいの、いたずら心とユーモアが汲み取れないかなあと。先生のご意見を伺えれば幸いです」と作者のコメント。
たった十七音しかない俳句ですから、作者コメントの内容を全て入れ込むのは至難の業というべきでしょう。少なくとも、この書き方だと「~へ“不”を少し」の“不”がなんなのか。読者には読み解けません。さらに、中七「美し」は「人」に掛かるのだろうと思われますが、その場合は「美しき」と連体形にする必要があります。



