写真de俳句の結果発表

第68回「監視カメラに鵜」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊 NEW

第68回「監視カメラに鵜」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

五月闇老女不明を告ぐ有線

浜千鳥

夏井いつき先生より
「告ぐ」は、「告げる」の文語形です。ガ行下二段活用なので、「有線」に意味が繋がるのだとすれば、「告ぐる」となり下五が字余りになります。悩ましいですね。季語も少し近いかと思われますので、全体を推敲してみましょう。
“難しい”

不夜城の明けて日傘の男子帰す

深川文吉

夏井いつき先生より 
面白い展開の句で、興味を惹かれます。ただ、「不夜城の明けて日傘の男子」という展開が、完全に読み解けなくて……。また、後の「帰す」ですが、一体どれなんだろうと、これまた悩んでおります。

き・す【帰す】
[動サ五]「き(帰)する」(サ変)の五段化。
[動サ変]「き(帰)する」の文語形。
かえ・す〔かへす〕【帰す/▽還す】
[動サ五(四)]《「返す」と同語源》
1 もといた所に行くようにしむける。帰らせる。
2 野球で、走者が本塁を踏むようにさせる。
“ポイント”

脇役を生き抜く矜持川鵜の目

花豆

夏井いつき先生より
「努力しなくても、場の中心になる人がいます。一方で、『そういえば、いたね』程度の存在の薄い人がいます。私は後者です。でも、悔し紛れでもなく、変にかまわれない方が心地よいのです。このまま、その他大勢の隅っこで、でも、自分の内面は豊かに生き抜けたらいいと思うのです」と作者のコメント。

上五中七のフレーズを、自分のものとして結球させるとなれば、今回の兼題写真に捉われず、自分の「矜持」を象徴できるような季語を選び直してみて下さい。大切な一句になりますように。
“ポイント”

女鵜庄の放ち鵜飼や宇治の池

久木しん子

夏井いつき先生より
「宇治の池」で、放ち鵜飼いという試みが始まっているということを、今回初めて知りました。上五「鵜庄」は「鵜匠」の変換ミスだとは思いますが、この内容だと並選どまりになります。人選を目指すとすれば、新聞の見出しのような書き方ではなく、女鵜匠の様子や表情、鵜の動きなどを描写することを心がけてみましょう。
“ポイント”

行列の日傘に驟雨たくる裾

みやもとや

夏井いつき先生より
第61回『鯛焼屋の行列』《ハシ坊と学ぼう!⑮》〈行列の日傘に驟雨歌手公演〉の推敲句です。これに対して先生からは、『上五中七の季語を含むフレーズとても佳いですね。下五が何のために並んでいるのかの説明になったのが勿体ない』とのお言葉を戴きました。それから作っては寝かし、捨てては作りを繰り返し、何とか自分で納得のいく句に辿り着いたと思い、再度投句させていただきます」と作者のコメント。

なるほど、そうきましたか。この句には、季語が「日傘」「驟雨」と二つ入っているのです。実際にこのような光景には出会うわけですから、そこを描こうとしたチャレンジを褒めたいわけです。二つの季語を同等に生かすために、最後の勝負が下五ですから、ここで下五で視線がぐっと下がって「たくる裾」となると、「日傘」は置いてけぼりになってしまう。ここが、この句の工夫のしどころになります。もう少し寝かせて、俳筋力を更に鍛え、数年後に再チャレンジされることをオススメします。佳句に仕上げたいですね。
“参った”

吾ら老ひを厳重監視市民プール

水越千里

夏井いつき先生より
「市民プールは、65歳以上は一日100円で利用可能。その為、平日の昼間は65歳以上の人ばかりプール使っています。若い監視員が、数人で見守ってくれています」と作者のコメント。

大袈裟に言ってるのは分かるのですが、「厳重監視」とまでくると犯罪者を囲ってる? と深読みされるのではないかと、ささやかな老婆心。作者コメントにある思いとも、少しブレそうです。
“ポイント”

荒梅雨や監視カメラは無情なり

清桜人

夏井いつき先生より
「『無情なり』は、説明になってしまうのではないかと思いながら投句しました」と作者のコメント。

そうですね、そこに気づいているのは正しいです。「無情」とは、何かを見てそう思ったという感想ですから、眼前の映像を描写することで、読者に「無情なり」と感じさせるのが俳句の骨法です。
“ポイント”

砂肝に砂金を秘めし鵜のあらん

清水縞午

夏井いつき先生より
「カメラがレントゲンのような発想です。〈砂肝に砂金隠せし鵜匠かな〉と迷いましたが、こちらはちょっと面白がりすぎて、リアリティを欠くと思い、掲句のようにしました」と作者のコメント。

面白がって作っても、勿論良いわけですが、うーむ……その発想が、季語「鵜」にとってシアワセなのかどうか。悩ましいところです。
“良き”

山瀬ぞ断崖の叫び碧に消ゆ

一 富丸

夏井いつき先生より
「山瀬」は、やませ風のことですね。四・八・五というかなり不安定な破調です。特に、中七は極力七音にするのが定石。語順も含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

廃島のライブ映像愛鳥日

青き柚子丸

夏井いつき先生より
「廃島」という言葉はあるんですかね? 造語だとしても、ちょっと引っかかる言葉です。
“良き”

川幅を埋め尽くす鵜やギャングごと

八重山吹

夏井いつき先生より
「近くの川の堰に鵜の大群が来て魚を呑み込み、魚がいなくなるまで何度も来てさらっていく。真っ黒い色もあってギャングのように見えます」と作者のコメント。

「川幅を埋め尽くす鵜」というのは凄まじい光景ですから、下五「ギャングごと」のような比喩はむしろ逆効果。むしろ、残り五音を「鵜」の様子を描写するために使いましょう。
“難しい”

紫陽花や退院は最後の友を見舞う

砂糖香

夏井いつき先生より
「高校時代の親友が進行性のガンで厳しい状況にある。五月から在宅で緩和ケア治療と聞いていた。七月に同級生が集まる予定があり、彼も『生きて参加したい』と言っていた。七月までは保たないかも。会いたい。でも、お見舞いになんて行きたくない」と作者のコメント。

「見舞う」と書く必要はありません。

添削例
紫陽花よ最後の退院の友よ
“ポイント”

骨めくアンテナ統べる寒鴉よ

前田いろは

夏井いつき先生より
やろうとしていることは良いと思います。「統べる」と説明するのではなく、「寒鴉」の表情を描写することで、読者にそれを読み取らせることができれば、ベストです。
“良き”

せせらぎや餓鬼うらはらに魚吐く鵜

沼野大統領

夏井いつき先生より
「飢えていてもお腹がポッコリ出るというのは、餓鬼も人間も鵜も同じだと感じました。『うらはらに』の読みがブレるところだとは思いますが、頭韻を優先しました。上五の『や』は、詠嘆というよりは単なる場面設定としての『や』です」と作者のコメント。

ご本人も指摘していますが、「うらはらに」の読みのブレは気になります。頭韻よりも、そちらが優先されるべきではないかと。更に、上五は場面設定ということですが、「鵜」という生き物の特性として、得なのか損なのか。一考の余地はありそうです。
“難しい”