写真de俳句の結果発表

第71回「芒野と風車」《ハシ坊と学ぼう!③》

ハシ坊 NEW

第71回のお題「芒野と風車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

宿題は芒探しや一年生

駒茄子

夏井いつき先生より   評価    人 
「多摩川近くに住んでいます。次女が小学生の時、生活の授業で芒を採って持ってくるという宿題が出ました。夫と次女が河原に行き、芒を探し持ってきましたが、一週間ほどして、次女が『自分の芒だけ他の子と様子がちがう』と言い出しました。どうやら植物に詳しくない夫が芒に似た雑草を選んでしまったようでした。夫は『それは悪いことをした』と再度採りにいき、正しい芒を持たせました。後半のエピソードは詠み込めませんでした」と作者のコメント。

この句そのものは、シンプルに必要なことが書けています。人選です。作者コメントの最後に「後半のエピソードは詠み込めませんでした」とありますが、たった十七音の俳句に、そこまでのエピソードを書き込むことは難しいですし、お勧めもできません。この部分は、別な句として切り取ることが妥当な判断です。
“ポイント”

ダチュラ咲きサンチョ・パンサもをらぬ野は

乃咲カヌレ

夏井いつき先生より   評価    人 
人選をクリアしているのですが、「サンチョ・パンサのをらぬ野を」だと、地選に頂いて、選評を書きたくなります。
“ポイント”

萱の原埋もれる白き髑髏

青蛙

夏井いつき先生より   評価    並 
「〇〇と〇〇というお題が苦手です。両方詠み込もうとして、いつも上手くいきません。今回は一つずつ別に詠んでみました。芒野で戦場ヶ原の地名に引っ張られたせいでしょうか。古戦場を連想しました。しゃれこうべはちょっと不気味でしょうか」と作者のコメント。

写真兼題は、発想のためのジャンピングボードに過ぎません。今回の場合でしたら、「芒」と「風車」を一句に詠み込まねばならないという括りはありません。写真から、自分の体験を思い出していただくのがベスト。その体験の中に、ご自身だけの「俳句のタネ」が潜んでいるのです。ちなみに、この句は並選です。
“ポイント”

落涙を老猫の逝く流れ星

うつゝかな

夏井いつき先生より   評価    並 
「芒→箒→箒星→流れ星。20歳でした」と作者のコメント。

中七下五の取り合わせで、充分伝わります。並選は確保されています。人選を目指すとすれば、上五「落涙を」が近い。ここに改善の余地があります。
“ポイント”

風車立つ芒野眺め車中泊

高品風秋

夏井いつき先生より   評価    並 
「2026年8月から会員登録させていただきました。俳句を作り始めてまだ半年程の私ですが、ビシバシと厳しいご指導をお願いします」と作者のコメント。

ご一緒に学んでまいりましょうね。さて、この句ですが、並選は確保できています。これを人選に引き上げるためにはどうすればよいか。「風車立つ芒野」+「車中泊」とあれば、「眺め」の三音は不要です。この三音の使い方が、工夫のしどころというヤツですね。
“ポイント”

風車の羽根輸送して朝秋茜

ひつじ

夏井いつき先生より   評価    並 
〈星月夜泣いているような風車〉と作者のコメント。

もう一句が、コメント欄に入力されているようです。どちらも、並選です。
“難しい”

絶滅を危惧薄野七夜萱鼠泥狼

泥狼

夏井いつき先生より
「萱鼠は、いわゆる野良鼠とは違い、絶滅の危機に瀕しています。保護の必要があり、その為には捕獲が先決です」と作者のコメント。

この句〈絶滅を危惧薄野七夜萱鼠〉自体は並選ですが、俳句の最後に俳号がコピペされてしまっているようです。
“ポイント”

卜骨を卑弥呼占ふクニの秋

青き柚子丸

夏井いつき先生より
「白い風車が骨に見えたのと、ノスタルジーな雰囲気だったので発想を飛ばして、卜骨(ぼっこつ)にいきつきました。鹿や猪の、主に肩甲骨を削って窪みを作り、熱した棒を強く押し当てて表面にできた『卜』字型のひび割れの形や音で吉凶を占っていたそうです。卑弥呼の時代は『国』じゃなくて『クニ』と書くのが正しいようなのでカタカナにしています。妄想が広がる写真は、俳句をつくる過程がとても楽しいです」と作者のコメント。

歴史上の諸々を句材とすることがダメなわけではありませんし、この句をひとまず人選に推すこともやぶさかではありません。が、どうせやるのならば、「卜骨」の描写のリアリティの精度をあげて、妄想という名の想像力の真骨頂を見せて欲しい。
“難しい”

風を得ぬ風車(ふうしゃ)や遠く雷走る

志無尽おたか

夏井いつき先生より
「どこだったか忘れましたが、海に風車が立っていて、風が全然なくて手持無沙汰のように見えました。たまたまその日に雷雨があり、雷様の電気の方が、よっぽど効率的に発電できるんじゃないかなと思いました」と作者のコメント。

風のない風車と、遠景の「雷」の光景なのだと理解できるのですが、そもそもの疑問として、雷が発生する時って、風が起こるのではないか……と思ったりもして。科学的にはどうなのでしょう?
“ポイント”

鮭颪芒も風車も賑やかに

我妻景

夏井いつき先生より
「季重なりではあるんですが、広い土地に吹く風と芒の両方を、季語一つで表現する方法が思いつきませんでした」と作者のコメント。

たった十七音の俳句に対して、材料が多すぎます。兼題写真は、発想のジャンピングボードですから、そこに写っている光景を全て詠み込む必要はありません。表現したい光景や内容をいくつかに分けて、一つの季語を主役として丁寧に切り取っていきましょう。
“参った”

下校時や花見疲れのイートイン

摂州黒うさぎ

夏井いつき先生より
第55回『食卓に花瓶』ハシ坊③での並選句〈ボトル缶花見疲のイートイン〉を自己添削しました。前回よりやや距離を取った上五で(季語と時間的に距離がつまった懸念はあります)、映像プラス学生の声などの音も出せればと思いました」と作者のコメント。

中七下五のフレーズを良しとした時、上五をどう展開するかが、一句の成否をわけます。「ボトル缶」は「花見疲れ」に対して、近い。「下校時や」は、作者の視線がどこにあるのか、少々分かりづらいです。
“参った”

芒野や入っても入っても我一人

ゆきみ

夏井いつき先生より
「俳句では中八は避けるべきだと思いますが、『入っても入っても(いってもいっても)』で八音になりました。前へどれだけ進んでもずっと芒野が広がっている光景を詠みたく、これ以上ぴったりくる言葉が見当たらなかったので、この表現になりました」と作者のコメント。

表現したい内容はよく分かります。少し気になるのは、〈分け入つても分け入つても青い山〉という山頭火の先行句。確かに、「芒野」と「青い山」の光景は違いますが、句の根本となる発想が近いかと。
“参った”