写真de俳句の結果発表

第71回「芒野と風車」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊 NEW

第71回のお題「芒野と風車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

更地跡兄妹黙し虫時雨

鯉昇り

夏井いつき先生より
「第58回『趣味は機織』並選〈更地立ち兄妹で聴く虫時雨〉を推敲しました」と作者のコメント。

語順を替えて、句またがりの型にすると、一句の姿が整います。

添削例
兄妹の黙す更地の虫時雨
“ポイント”

すすき原まづ空の色みづで描く

千葉水路

夏井いつき先生より
語順を逆にすれば、人選です。

添削例
まづ空の色みづで描く芒原
“ポイント”

雁渡し山端のぽつと窓あかり

猫紫

夏井いつき先生より  
「風車の写真と季語『雁渡し』が合わさることで、明るくきらびやかな大都会と、足元のひっそりとした生活という、画面の外でつながっている大きな風景を描きたい、と考えました。ありがちな発想の中で、ばたばたしている段階からなかなか抜けられません。作って投句することでしか先へは進まないと、自分でお尻をたたいています」と作者のコメント。

「雁渡し」という大きな時空を持った季語と、「山端(やまはな)」=山の端というある程度の広さを持った言葉で、前半ができあがっています。そこから、「窓あかり」への展開が、やや急です。
“ポイント”

季重なり

下駄でゆく夜店に光る風車

和花

夏井いつき先生より
「夜店」が季語ですね。下五、音数からすると「風車(かざぐるま)」と読むのかなと判断できますが、「風車(かざぐるま)」は春の季語になります。
“ポイント”

波打つ芒間跳ねるタロウの耳

於春

夏井いつき先生より
「間」の一字が気になります。
“ポイント”

大風車夏松原の櫂となる

にかちん

夏井いつき先生より
「夏松原」という季語の使い方には、違和感が残ります。
“ポイント”

梅雨明けに短パン履けば足二本

樽越

夏井いつき先生より
「梅雨明けや」とすれば、人選です。
“難しい”

風車いま読書の速度野分晴

升 丁茶

夏井いつき先生より
意欲的に挑んでいるのは分かります。ただ、「風車」に対する「読書の速度」という比喩が、分かるような分からないような……。
“ポイント”

風車建つ更地に薄先駆けり

宮本 夏生

夏井いつき先生より
「風車の建設はきっと大掛かりな工事で、建った頃はまだ辺りは更地みたいな状態だったのかなあと想像しました。『先駆けり』で、言葉の使い方として合っているのか? 『先駆けて』の方がいいか、悩みました」と作者のコメント。

風車の立つ予定地なのですね。描こうとしている光景は良いです。下五「先駆けり」と説明してしまっては、勿体ない。風車の立つ予定の更地に、薄のみがある。その光景を描写すれば、読者には「先駆けり」の思いは伝わるのです。
“難しい”

風車かな芒野わたる海の風

岸友之

夏井いつき先生より
「投稿二ヶ月目、頑張ります!」と作者のコメント。

兼題写真は、あくまでも発想のジャンピングボードですから、そこに映っている光景を全て詠み込まないといけないわけではありません。この句の場合でしたら、中七下五「芒野わたる海の風」は広々とした光景や海風の匂いなども伝わってくる良きフレーズです。上五を、「風車」に拘らず、いろいろ試してみましょう。例えば「○○○○や」として、四音の季語ではない様々な言葉を当てはめてみる、というトレーニングをしてみて下さい。思わぬ言葉が、美しい詩の火花を飛ばす瞬間を体験できるでしょう。
“ポイント”

芒野や束ねし茅に便乗す

ジュクトマト

夏井いつき先生より
「道に迷って、軽トラの荷台に乗せてもらった思い出です」と作者のコメント。

この字面だけで、「軽トラの荷台」に積まれた「茅束」だとは分かりにくいです。
“参った”

芒原足裏で息をする風車

いろり

夏井いつき先生より
「足裏で息をする」は、芒原に立つ作者自身の感覚なのでしょうか? それとも、「風車」の? 読みを迷いました。
“参った”

誰そ彼や袖引きたるは芒かあらぬか

今村大儀

夏井いつき先生より
表現したいニュアンスは分かります。そのムードを作ろうという思いがやや過多になっていて、言葉が多すぎるという結果になっています。上五「誰そ彼や」は、黄昏の意味もこめてこの書き方を選んでいるのだと推測しますが、季語そのものを「夕芒」とでもすれば、黄昏時なのだなということを読者はきちんと読んでくれます。
“参った”