写真de俳句の結果発表

第71回「芒野と風車」《ハシ坊と学ぼう!⑪》

ハシ坊 NEW

第71回のお題「芒野と風車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

骨めくアンテナ炯る寒鴉の眼よ

前田いろは

夏井いつき先生より
「第68回『監視カメラに鵜』にて〈骨めくアンテナ統べる寒鴉よ〉をハシ坊に取り上げていただきました。『やろうとしていることは良い。「統べる」と説明するのではなく「寒鴉」の表情を描写することで、読者にそれを読み取らせることができればベスト』とご教授いただきました。そこで『寒鴉』を『かんあ』と読んで音数を節約し、鋭く光る鴉の眼(炯眼)にフォーカスして推敲しました」と作者のコメント。

良い推敲案です。最後のブラッシュアップとしては、下五「よ」が、一句の緊張感を削ぐので、「~眼」と、体言止めにするのがベストではないかと。以下のようにすれば、堂々たる人選です。

添削例
骨めけるアンテナ炯る寒鴉の眼
“ポイント”

二十八基の風車居並ぶ芒原

秋月あさひ

夏井いつき先生より
「二十八基の風車」という数詞の迫力がよいですね。となれば、「居並ぶ」は不要でしょう。
“ポイント”

風車回る丘が枯野となりてなほ

渡海灯子

夏井いつき先生より
「風車回る丘」と書かなくても、「風車の丘」とすれば、回っているであろうことは想像できます。更に「丘」「野」と地理に関する情報が重なりますので、ここにも改善の余地があります。例えば、「風車の丘の枯れ極む」とすれば、短く書けてしまいます。
“ポイント”

移り来し海辺の芒我ひとり

ロージー

夏井いつき先生より
「瀬戸内から千葉へ引っ越してきて、海が見たくて太平洋で我慢。風車が舞うなかで広い海をよく眺めていました」と作者のコメント。

「移り来し海」で一度切って、ツーカットの映像にしてみましょう。全体の意味・光景が分かり易くなります。原句の言葉をできるだけ使いつつ添削。

添削例
移り来し海や芒に我ひとり
“ポイント”

みどり児のうぶ毛なよよか糸芒

小田毬藻

夏井いつき先生より
「みどり児のうぶ毛」のほうが主役になっていて、季語「糸芒」は見立てに使われているような印象が残ります。季語を再考してみましょう。
“ポイント”

喘息の吾子へシールを貼る朧

のんきち

夏井いつき先生より
通称として「シール」と呼んでいるのだろうと推測しますが、薬品としては「テープ薬(貼付薬)」と書くほうが、正確ではないかと。季語も含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

天高く自然の恵み大風車

高木友

夏井いつき先生より
「空がきれいだなぁと感じたところから想像しました」と作者のコメント。

「自然の恵み」だなあというのは、感想に過ぎません。「空がきれいだなぁと感じた」という、その映像を描写しましょう。
“ポイント”

竹尺にまろき血ありや憂国忌

沼野大統領

夏井いつき先生より
「竹尺にある赤い点を、珠をなす血に見立てました。真直ぐと伸びる定規に鮮血があるという景は、三島由紀夫を悼むのに合っていると感じました。『ありや』としたことで、定規に実際の血がついているわけではないということを明示しました」と作者のコメント。

「竹尺」と「憂国忌」は、意外性もありつつ、接点も作れそうで、興味深い取り合わせです。ただ、「~にまろき血あり」の見立ての正体が分かると、意図が少々前に出てきてしまって、やや興ざめします。
“難しい”

ナウシカの降り来むごとき芒原

薫空ろろ

夏井いつき先生より
「ナウシカが金色の王蟲の触手の上を、両手を広げて歩く姿や、メーヴェに乗って地上へ降り立つ姿などをイメージしました。芒野原もなんだかその様子に似ていて、ナウシカがやって来そうだと思ったので、この句を詠みました」と作者のコメント。

表現したい内容には共感します。中七が少々もたついています。「ごとき」と直喩にしないほうが、詩的リアリティが確保できそうです。
“ポイント”

ひたひたの夕日の中を花薄

佐藤ゆま

夏井いつき先生より
「~の中を」は、推敲の余地がありそうです。
“難しい”

宇奈月の尾花なびくや赫く染む

肴 枝豆

夏井いつき先生より
「宇奈月には、かつて萱場として利用されたすすき原が存在しているという。実際には見ておらず、想像で詠みました。ただ、過去に兵庫県・砥峰高原で、まるで生き物のように風になびく尾花を見たことがあります。太陽が次第に傾き、尾花全体が赤く染まっていく様子を思い出しながら詠みました」と作者のコメント。

「太陽が次第に傾き、尾花全体が赤く染まっていく様子」を表現したい時に、「染む」という有りがちな動詞に頼らずに描写できないか。ここが、工夫のしどころです。更にいえば、「宇奈月の尾花」と書けば、すでに、かすかな風に揺れる光景は見えてきます。
“ポイント”

風死して峰の風車ら立ちん坊

こりゆばんばん

夏井いつき先生より
「季語『風死す』が直接すぎるのか、悩みました」と作者のコメント。

そうですね。季語「風死す」を信じれば、下五の光景は想像できますよね。
“ポイント”

航空機事故の図鑑に赤い羽根

岡根喬平

夏井いつき先生より
「こちらの句は、航空機墜落事故の写真が載っている図鑑に、赤い羽根を置く光景を詠みました。やがて犠牲者の古血の朱殷が滲み出して、羽根が変色すると思いました。そして、大空を飛び続けたかった航空機の未練を、羽根が断ち切ってくれると考えました」と作者のコメント。

中七「に」だけが気になります。語順も含めて、最後のブラッシュアップを。
“参った”

芒野の風車ドンキは来ないけど

なんくる

夏井いつき先生より
「兼題写真より、『ドン・キホーテ』の物語が浮かびました」と作者のコメント。

「ドン・キホーテ」を「ドンキ」と省略してしまうのは、いかがなものかと。
“参った”

ラ・マンチャの炎天の大地白き風車

桃華

夏井いつき先生より
描こうとしている光景は良いのですが、中七下五それぞれの字余りが気になります。
“参った”