第72回「木の実のカーテン」《ハシ坊と学ぼう!④》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
満月やぬるき羊水胎児浮く
在在空空
夏井いつき先生より
「木の実のカーテンということで、いっぱいあることから『豊かさ』を連想しました。そこで、豊かさとは何だろうと考え、たくさんあっても安心がなければ豊かにはなれないなぁと思い、『安心』にたどり着きました。人間が明日のことを心配せず、全力で安心していたのは胎児の時だけなのではないか。十分に安心している様子を描写したつもりですが、伝わるでしょうか?」と作者のコメント。
作者の意図を最大限尊重したとして、中七下五の語順は気になります。
「木の実のカーテンということで、いっぱいあることから『豊かさ』を連想しました。そこで、豊かさとは何だろうと考え、たくさんあっても安心がなければ豊かにはなれないなぁと思い、『安心』にたどり着きました。人間が明日のことを心配せず、全力で安心していたのは胎児の時だけなのではないか。十分に安心している様子を描写したつもりですが、伝わるでしょうか?」と作者のコメント。
作者の意図を最大限尊重したとして、中七下五の語順は気になります。


茶碗蒸しの匙は木製茸干す
斎 柊子
夏井いつき先生より
「茶碗蒸しの匙は木製」というフレーズの後に「茸」とあるので、茶わん蒸しに入っているのかと思えば、まだ「干す」段階なのだという。その時間軸の違和感が気になります。
「茶碗蒸しの匙は木製」というフレーズの後に「茸」とあるので、茶わん蒸しに入っているのかと思えば、まだ「干す」段階なのだという。その時間軸の違和感が気になります。


黄金海刈る音に飛ぶイナゴかな
紫陽
夏井いつき先生より
「見事に実った田んぼで、機械が動くたびに沢山の虫が飛び立つ様を詠みました」と作者のコメント。
季語としての「イナゴ」は、特別な意図がない限りは、漢字あるいは平仮名書きするのが基本です。
「見事に実った田んぼで、機械が動くたびに沢山の虫が飛び立つ様を詠みました」と作者のコメント。
季語としての「イナゴ」は、特別な意図がない限りは、漢字あるいは平仮名書きするのが基本です。


新刊の表紙を撫でる良夜かな
藤井 春
夏井いつき先生より
「新刊を買うと、表紙を撫でて手触りを確かめてしまいます。『表紙ざらざら』など、具体的に描写したほうがよいのでしょうか?」と作者のコメント。
そうですね、「良夜」という季語と響きあうような、あるいは反発し合うような、そんな描写が入ってくると、人選が近くなります。
「新刊を買うと、表紙を撫でて手触りを確かめてしまいます。『表紙ざらざら』など、具体的に描写したほうがよいのでしょうか?」と作者のコメント。
そうですね、「良夜」という季語と響きあうような、あるいは反発し合うような、そんな描写が入ってくると、人選が近くなります。


木の陰の閉じた心と栗の実と
夕暮派れもんさわー
夏井いつき先生より
「閉じた心」と「栗」の取り合わせは良いですね。例えば、前半を「○○○○な閉じた心と」あるいは「○○○○の閉じた心と」として、後半を「毬栗と」とでもしてみましょう。こうすると、俳句の型として整ってきます。○の部分の四音を考えてみましょう。さあ、ここから俳句の筋トレが始まりますよ。
「閉じた心」と「栗」の取り合わせは良いですね。例えば、前半を「○○○○な閉じた心と」あるいは「○○○○の閉じた心と」として、後半を「毬栗と」とでもしてみましょう。こうすると、俳句の型として整ってきます。○の部分の四音を考えてみましょう。さあ、ここから俳句の筋トレが始まりますよ。


蜻蛉群れ季節を運び風にのる
結城
夏井いつき先生より
「蜻蛉が群れをなして、風にのって飛んでいました。まるで秋を連れてきたようでした」と作者のコメント。
中七「季節を運び」の部分が、説明になります。説明と描写の違いについては、『夏井いつきの俳句添削事典』を参照してください。
「蜻蛉が群れをなして、風にのって飛んでいました。まるで秋を連れてきたようでした」と作者のコメント。
中七「季節を運び」の部分が、説明になります。説明と描写の違いについては、『夏井いつきの俳句添削事典』を参照してください。


立ち入れぬ森に木の実の降り積もる
かの藤子
夏井いつき先生より
「放射能で汚染され、立ち入れない山に降り積もるものを詠みたいと思いました」と作者のコメント。
「立ち入れぬ」にも様々な理由があります。「放射能」ならば、それが分かるような書き方をするほうが、作者の意図が伝わりやすくなります。
「放射能で汚染され、立ち入れない山に降り積もるものを詠みたいと思いました」と作者のコメント。
「立ち入れぬ」にも様々な理由があります。「放射能」ならば、それが分かるような書き方をするほうが、作者の意図が伝わりやすくなります。


臥竜梅這ふて弱法師見上げけれ
伯人


納屋に吊る玉葱の香と土佐日記
笙湖
夏井いつき先生より
取り合わせは意欲的なのですが、最後にいきなり「土佐日記」へと飛ぶ、この距離感にちょっとついていきづらかった。
取り合わせは意欲的なのですが、最後にいきなり「土佐日記」へと飛ぶ、この距離感にちょっとついていきづらかった。


市田村角曲がりても柿簾
柴 野鍛冶
夏井いつき先生より
「長野県に住んでいる私は、兼題写真を見て、市田地区(旧市田村、現在、高森町の市田地区)の干し柿が頭に浮かびました。その時期になると、地方テレビ局のニュースで柿簾が映し出されます。全国の干し柿シェアの三割という市田柿の里は、地域全体、どこに行っても柿簾です」と作者のコメント。
「市田村」と書きたい気持ちも分かりますが、そこを歩いている感じを素直に書いてもよいですね。
添削例
どの角を曲がりてもまた柿簾
「長野県に住んでいる私は、兼題写真を見て、市田地区(旧市田村、現在、高森町の市田地区)の干し柿が頭に浮かびました。その時期になると、地方テレビ局のニュースで柿簾が映し出されます。全国の干し柿シェアの三割という市田柿の里は、地域全体、どこに行っても柿簾です」と作者のコメント。
「市田村」と書きたい気持ちも分かりますが、そこを歩いている感じを素直に書いてもよいですね。
添削例
どの角を曲がりてもまた柿簾


夏闇や古屋を恐るる孫号泣
遊空里
夏井いつき先生より
「第69回『日本最古のビアホール』並選〈孫の慄き築百年に無月〉の推敲句です。古い家の薄暗さと、そこに恐怖を感じた子供の様子を描きたかったのですが、季語の選び方と、もっと具体的に描写をすることを意識して考えてみました」と作者のコメント。
孫が号泣したとか、孫が慄いたという出来事に重点を置くよりは、その「築百年」の古屋の様子を描写できればよいのですが。
「第69回『日本最古のビアホール』並選〈孫の慄き築百年に無月〉の推敲句です。古い家の薄暗さと、そこに恐怖を感じた子供の様子を描きたかったのですが、季語の選び方と、もっと具体的に描写をすることを意識して考えてみました」と作者のコメント。
孫が号泣したとか、孫が慄いたという出来事に重点を置くよりは、その「築百年」の古屋の様子を描写できればよいのですが。



