写真de俳句の結果発表

第72回「木の実のカーテン」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

第72回のお題「木の実のカーテン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

担々麺吊り蜀椒のある店で

西茉生

夏井いつき先生より
「兼題写真の赤い実は、日本の山椒ではなく中国産の花椒だと思いました。季語『山椒の実』の傍題に、『蜀椒』がありました。こんなカーテンを下げた店があったら、担々麺や麻婆豆腐はさぞ旨いだろうと思いました」と作者のコメント。

最後の助詞「で」だけ一考して下さい。
“ポイント”

どんぐりよ素直になれぬもどかしさ

ゆきみ

夏井いつき先生より
「どんぐりを集めて遊んでいた頃は、きっと純粋無垢で素直な子どもでした。大人になって思うのは、素直になることが一番難しいということです。相手に素直に気持ちを伝えたくても、上手くできなくて、もどかしいことがよくあります。上五に『よ』を使うのは初めてで悩みましたが、『や』よりも『よ』の方が、自分の表現したいことが伝わるのではと思いました」と作者のコメント。

「どんぐりよ」と語りかけるような表現を選んだのは良い判断です。惜しいのは下五。「素直になれぬ」と書けば、そこにある「もどかしさ」は言わずもがなの感情です。
“ポイント”

空の墓洗ふ家族の佳き日かな

七味

夏井いつき先生より
「空の墓」とは、まだ遺骨を納めてない墓? 墓じまいの法要を終えたばかりの墓?
“難しい”

走り去るシルバーカーや木の実降る

水野 フィトンチッド

夏井いつき先生より
「シルバーカー」に対して「走り去る」という書き方に違和感があります。
“難しい”

おでん煮く母の「おかえり」珠暖簾

翠雨

夏井いつき先生より
「『煮く』は『炊く』が正しいのかもしれませんが、関西ではおでんを関東煮と言うので、あえて『煮』を使いました。おでんを煮く時は、煮込むために早めに台所に立っていた母。学校から帰ってきた私に、珠暖簾越しに『おかえり』と声をかけてくれた思い出を詠みました」と作者のコメント。

「煮く」は、強引過ぎます。
“ポイント”

埋もれる葡萄、埋もれる口癖

たけろー

夏井いつき先生より
読点に頼らない、別の工夫もありそうです。
“ポイント”

丸太椅子ふたつへ蔓梅擬たるる

猪子石ニンニン

夏井いつき先生より
「建物から外にと、景を考えました。『へ』がいるかどうか迷ったのと、丸太椅子、蔓梅擬(つるうめもどき)と、バランスをとったつもりなのですが……」と作者のコメント。

ご自身も迷ったということですが、「へ」は不要でしょう。「たるる」は「垂るる」の意ですか? ここも一考の余地がありそうです。
“ポイント”

地下川の無音の層や断ちて滝

丨呂 ih

夏井いつき先生より
「原句は、第65回並選〈地下に川流るる層や断ちて滝〉。推敲句は、第69回ハシ坊〈地下川の層の白糸いづる滝〉です。原句に立ち返り、再度推敲しました。 富士の豊かな地下水脈(無音の層)が、崖で突如断ち切られて無数の白糸となる、静岡の『白糸の滝』のダイナミックな景を詠みました」と作者のコメント。

そもそもこの句の発想が、説明に傾いている点が気になります。これを描写にするためには、あなたの眼球にはどんな映像が映っているのか。そこにヒントがあります。
“難しい”

胡桃にはハンマーを月には探査機を

柿司  十六

夏井いつき先生より
中七の「を」を外せば、人選です。
“ポイント”

夫婦岩と一塊の鵜の黒さ

種月 いつか

夏井いつき先生より
「第68回『監視カメラに鵜』〈夫婦岩鵜の動かざる青嵐〉の推敲句です。強風で岩にじっとしている鵜の様子です。〈夫婦岩一塊の鵜の黒さ〉と最後まで悩み、言葉の質量を考えて『と』を入れました」と作者のコメント。

「鵜」を季語として立てるという方針が定まりましたね。確認ですが、「一塊の鵜」とは複数の鵜のかたまりという認識ですか? それとも一羽を「黒さの塊」と捉えた措辞でしょうか? この書き方だとそこが微妙に分かりにくいです。
“ポイント”

ごみ箱の映画の半券長き夜

咲山ちなつ

夏井いつき先生より
「ごみ箱」とした時と、「屑かご」「屑入れ」などと書いた時と、微妙にニュアンスが変わってきます。どんな場所のどんな大きさの「ごみ箱」なのでしょう?
“難しい”

掌中にオリーブ抱ふ爆風下

出雲のたみちゃん

夏井いつき先生より
どういう状況なのでしょう? この「爆風」は戦闘? 「掌中」とありつつ、「抱ふ」という動作のささやかな違和感など。
“難しい”

豆腐買うゴーヤ二階の窓の外

みえこ

夏井いつき先生より
「グリーンカーテンのゴーヤが、二階まで伸びました」と作者のコメント。

一見、良い取り合わせのように思ったのですが、よくよく考えると、「豆腐買う」という動作=人物は、一体どこにいるのか。「二階の窓の外」のゴーヤを眺める位置だとすれば、そこに豆腐屋さんがある? 豆腐売り場がある? 次第に分からなくなってきました。 
“難しい”

ローズヒップうつろう時や秋は赤

萌黄多恵

夏井いつき先生より
「野薔薇が州花のカナダ・アルバータ州では、自宅近くの丘にも初夏には多数の野薔薇が咲き、優しい紅色で彩りを添えます。秋にはローズヒップが実り、ビタミンCが豊富で、栄養価の高さだけでなく、可愛らしい赤い色も喜ばれています」と作者のコメント。

中七「うつろう時や」という詠嘆は、一種の感想です。どんな光景を見たから、そのように感じたのか。あなたの眼球に映った光景を描写すれば、読者も同じ感慨を抱いてくれるのです。
“ポイント”