第72回「木の実のカーテン」《ハシ坊と学ぼう!⑮》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
ビア粕育ち贄の鶏喰む桐一葉
オアズマン
夏井いつき先生より
「第69回ハシ坊〈ビア粕育ち贄の鶏喰う秋祭り〉を推敲しました。先生から、季語「秋祭り」を外し、別の季語を取り合わせてまとめてはどうかとご提案いただきました。句の背景には、ふくよかに育った鶏の命が桐一葉とともにある、という思いがあります。桐の植えられた庭で豊穣を祝う祭事は終わり、家族はそこに『農事の定め』の兆しを改めて見いだすこととなります」と作者のコメント。
なるほど、そういうことを書きたかったのですね。もう一つ、アドバイスを重ねます。この句は、十七音の器に盛るには内容が多すぎます。言葉をギュウギュウに押し込んでいるので、意味が分かりにくくなっているのです。「ビア粕育ち」ということを入れたいお気持ちは分かりますが、句の本質は「贄(となる)の鶏(が何かを啄んでいる)」光景にあるのではないかと。だとすれば、「ビア粕育ち」である云々は、一度諦め、別な句=「ビア粕育ちの鶏」として切り分けるのが得策です。更に、「喰む」は、鶏が何かを啄んでいるのか、人間が鶏を食べているのか。この書き方では分かりませんので、作者の意図が読者に伝わるように、書き直す必要があります。
「第69回ハシ坊〈ビア粕育ち贄の鶏喰う秋祭り〉を推敲しました。先生から、季語「秋祭り」を外し、別の季語を取り合わせてまとめてはどうかとご提案いただきました。句の背景には、ふくよかに育った鶏の命が桐一葉とともにある、という思いがあります。桐の植えられた庭で豊穣を祝う祭事は終わり、家族はそこに『農事の定め』の兆しを改めて見いだすこととなります」と作者のコメント。
なるほど、そういうことを書きたかったのですね。もう一つ、アドバイスを重ねます。この句は、十七音の器に盛るには内容が多すぎます。言葉をギュウギュウに押し込んでいるので、意味が分かりにくくなっているのです。「ビア粕育ち」ということを入れたいお気持ちは分かりますが、句の本質は「贄(となる)の鶏(が何かを啄んでいる)」光景にあるのではないかと。だとすれば、「ビア粕育ち」である云々は、一度諦め、別な句=「ビア粕育ちの鶏」として切り分けるのが得策です。更に、「喰む」は、鶏が何かを啄んでいるのか、人間が鶏を食べているのか。この書き方では分かりませんので、作者の意図が読者に伝わるように、書き直す必要があります。


藁の馬葺く飯桐の実をひと挿し
市子
夏井いつき先生より
句材、光景、良いですね。「葺く」が必要かも含めて、一考してみましょう。
句材、光景、良いですね。「葺く」が必要かも含めて、一考してみましょう。


赤なぞと揶揄のセーター肌白し
光猫ふう
夏井いつき先生より
「赤より、秋の飾り、雪兎で作り、上記の句に。以前、都電に赤いセーターを着た年配の女性が乗っていました。乗り合わせたおばあちゃん二人が、『赤なんて着ちゃってさ』と言っていました。私には似合っていて素敵に見えました。〈彼の人のセーター赤し肌白し〉だと、それだけの句かと。ネガティブな措辞ですが、掲句としました」と作者のコメント。
下五「肌白し」は率直な感想かもしれません。が、上五中七の「揶揄」が他人に向けられたモノなのか、自嘲なのか。それをわかるように書くことが、この句においては必要なのではないかと。
「赤より、秋の飾り、雪兎で作り、上記の句に。以前、都電に赤いセーターを着た年配の女性が乗っていました。乗り合わせたおばあちゃん二人が、『赤なんて着ちゃってさ』と言っていました。私には似合っていて素敵に見えました。〈彼の人のセーター赤し肌白し〉だと、それだけの句かと。ネガティブな措辞ですが、掲句としました」と作者のコメント。
下五「肌白し」は率直な感想かもしれません。が、上五中七の「揶揄」が他人に向けられたモノなのか、自嘲なのか。それをわかるように書くことが、この句においては必要なのではないかと。


帰宅せば蓑虫二寸ほどずれて
かときち
夏井いつき先生より
「出かけるときに庭木や塀などで見かけた蓑虫が、帰ってきたときには少し移動していて、「あれっ、さっきより少し動いていないか?」と気づいた場面です。虫は苦手ですが、蓑虫が蓑ごと移動する姿はかわいらしくて、少し好きです」と作者のコメント。
上五「帰宅せば」は不要でしょう。ここをどう展開させるかで、一句は様々に変容していきます。
「出かけるときに庭木や塀などで見かけた蓑虫が、帰ってきたときには少し移動していて、「あれっ、さっきより少し動いていないか?」と気づいた場面です。虫は苦手ですが、蓑虫が蓑ごと移動する姿はかわいらしくて、少し好きです」と作者のコメント。
上五「帰宅せば」は不要でしょう。ここをどう展開させるかで、一句は様々に変容していきます。


大地震(なゐふ)るや栗鼠蓄へよ木の実降る
夜汽車
夏井いつき先生より
「地震」と書いて「なゐ」と読みますが、「大地震る」で「なゐふる」と読めるのでしょうか?
「地震」と書いて「なゐ」と読みますが、「大地震る」で「なゐふる」と読めるのでしょうか?


老手品師のワンルーム金魚飼ふ
森ともよ
夏井いつき先生より
語順を替えたほうが調べが落ち着きます。
添削例
金魚飼ふ老手品師のワンルーム
語順を替えたほうが調べが落ち着きます。
添削例
金魚飼ふ老手品師のワンルーム


味噌汁や母の手早し珠のれん
鶴喰 照
夏井いつき先生より
〈味噌汁や/母の手早し/珠のれん〉それぞれ斜め線のところで意味が切れてしまう三段切れです。語順を再考してみましょう。
〈味噌汁や/母の手早し/珠のれん〉それぞれ斜め線のところで意味が切れてしまう三段切れです。語順を再考してみましょう。


深き森野鳩の声や木の実降る
道草散歩
夏井いつき先生より
語順を替えると、ニュアンスも変わってきます。例えば……
添削例
木の実降る森や野鳩の声深き
語順を替えると、ニュアンスも変わってきます。例えば……
添削例
木の実降る森や野鳩の声深き


国王崩御リンゴンベリーの艶も紅
乃咲カヌレ
夏井いつき先生より
「8月、家族でノルウェーに滞在していたとき、ハーラル5世国王が亡くなられました。国民に親しまれていた国王だったようで、さまざまな場所に国王の写真が飾られ、蝋燭やお花、メッセージが手向けられていました。『リンゴンベリー』は北欧では欠かせない果実で、歳時記で和名の『苔桃の実』が初秋の季語であることを知り、『リンゴンベリー』を季語として使いました」と作者のコメント。
下五を「紅き艶」とすれば、人選です。
「8月、家族でノルウェーに滞在していたとき、ハーラル5世国王が亡くなられました。国民に親しまれていた国王だったようで、さまざまな場所に国王の写真が飾られ、蝋燭やお花、メッセージが手向けられていました。『リンゴンベリー』は北欧では欠かせない果実で、歳時記で和名の『苔桃の実』が初秋の季語であることを知り、『リンゴンベリー』を季語として使いました」と作者のコメント。
下五を「紅き艶」とすれば、人選です。


空き缶の木の実つまみて小さき指
ゆいか
夏井いつき先生より
「子供が幼い頃、裏山で拾ってきた色々な木の実を空き缶に集めていました。時々、一つずつ摘んでは『これが一番好き』と言いながら見せてくれたのが、懐かしい思い出です」と作者のコメント。
「木の実をつまむ」とすれば、人選です。
「子供が幼い頃、裏山で拾ってきた色々な木の実を空き缶に集めていました。時々、一つずつ摘んでは『これが一番好き』と言いながら見せてくれたのが、懐かしい思い出です」と作者のコメント。
「木の実をつまむ」とすれば、人選です。


手水社に木の実ころがり水優し
静岩
夏井いつき先生より
「手水社に木の実」と書けば、ころがっているのは分かります。
「手水社に木の実」と書けば、ころがっているのは分かります。


災害報道我鬼胡桃擂る
ともちゃ
夏井いつき先生より
「自然災害の報道が続くテレビを見ながら、なすすべもなく胡桃味噌を作っている苛立ちを詠んでみました」と作者のコメント。
作者コメントを読むと、なるほどそういうことかと分かりはしますが、一句の字面だけではそこまで読み解くことは困難です。まずは、「我鬼」を外して、この場の様子を描写してみましょう。それが出来れば、「我鬼」と書かなくても、その心情は伝わってきますから。
「自然災害の報道が続くテレビを見ながら、なすすべもなく胡桃味噌を作っている苛立ちを詠んでみました」と作者のコメント。
作者コメントを読むと、なるほどそういうことかと分かりはしますが、一句の字面だけではそこまで読み解くことは困難です。まずは、「我鬼」を外して、この場の様子を描写してみましょう。それが出来れば、「我鬼」と書かなくても、その心情は伝わってきますから。


あずまやの木の実のれんや走る雲
永順
夏井いつき先生より
「初めは〈東屋の揺れる木の実でひとやすみ〉なんて考えましたが、風や雲にも思いを馳せながら、たくさんの言葉を集めるのが楽しかったです。結果、この句になりましたが、自分なりに頑張りました! 俳句は楽しいです。」と作者のコメント。
「や」と詠嘆したいお気持ちは分かりますが、「木の実ののれん走る雲」と並列で畳みかけるほうが、光景が鮮やかになります。上五は、確かに「あずまや」の写真ではありますが、この上五次第で、一句が更に化ける可能性もあります。
「初めは〈東屋の揺れる木の実でひとやすみ〉なんて考えましたが、風や雲にも思いを馳せながら、たくさんの言葉を集めるのが楽しかったです。結果、この句になりましたが、自分なりに頑張りました! 俳句は楽しいです。」と作者のコメント。
「や」と詠嘆したいお気持ちは分かりますが、「木の実ののれん走る雲」と並列で畳みかけるほうが、光景が鮮やかになります。上五は、確かに「あずまや」の写真ではありますが、この上五次第で、一句が更に化ける可能性もあります。


キャプテンの声新しや木の実時
田上南郷
夏井いつき先生より
上五中七のフレーズを生かすとすれば、季語は動きそうです。
上五中七のフレーズを生かすとすれば、季語は動きそうです。



