写真de俳句の結果発表

第23回「カメラと夕焼け」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊

第23回のお題「カメラと夕焼け」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

夕焼や喪服で並盛ボタン押す

立石神流

夏井いつき先生より
語順の問題です。「喪服で押す並盛ボタン」と整えて、下五に季語をおいてみましょう。
良き

沈みゆく夕日染めかはる秋の田

仁科游凜

夏井いつき先生より
「染める」は不要な説明です。そして、夕日とは「沈む」ものです。
“ポイント”

暗室に浮かぶ静寂の夕焼けかな

北斗星

夏井いつき先生より
暗室の窓の夕焼けですか、それとも現像液の中に現れてくる夕焼けですか。それによって「浮かぶ」の要、不要の判断が変わってきます。推敲してみましょう。
良き

燃ゆるごと闇るる岩木や夏帽子

みなごん

夏井いつき先生より
「闇るる」とはどういう意味?
“難しい”

杖で立ち夕焼空に夢と書く

藤齋

夏井いつき先生より
「私は脳梗塞で倒れ、早三年になりますが、いまだにリハビリを続けています。少しづつ良くなって来ましたが、まだまだ不自由な生活を送っています。なんとか少しでも前向きになれたらと思いながら、外に出てみたら夕焼空。思わず指先で『夢』と書いてみました」と作者のコメント。

なるほど、そういうことが書きたいのですね。ならば、微調整でいいかな。上五を「杖で立つ」と終止形で言い切って、そこから展開していきましょう。

添削例
杖で立つ夕焼空に「夢」と書く
“ポイント”

夕焼けや白球追いかけ校舎燃ゆ

猫屋ハチワレ

夏井いつき先生より
「夕焼け」や夕日に対して、「燃ゆ」はありがちな表現。
“参った”

フォーカスの先に夕焼け託す夢

優花里

夏井いつき先生より
俳句における「夢」という言葉は、なかなか難しいのです。この句の場合でしたら、上五中七はちゃんと映像になっているのですが、下五「託す夢」でぼんやりとしたイメージになっていくからです。
良き

美術室窓越し君に夕焼け色

桐山はなもも

夏井いつき先生より
「高校時代の思い出です。句の中の『君』は、実際には自分自身で、見ているのが相手なのですが、同じ教室内で見ているのではなく、教室の外から見ている状況がわかるかどうか、少々不安です」と作者のコメント。

コメントにあるような状況は読み取れません。あくまでも「君」は、君です。
さらに、「夕焼け色」は、夕焼けのような色という比喩の意味になりますよ。比喩になると、季語の力は少し弱まります。推敲してみましょう。
“難しい”

ヒマワリや黄昏時の濃いブルー

千思

夏井いつき先生より
季語としての「ヒマワリ」は、「向日葵」と漢字で書くのが定石です。
良き

反転し浮かぶピエロの夕焼けかな

夏井いつき先生より
「茜と黒→東京電力→TEPCO→CM→切り絵芝居→もう一度茜と黒→モノトーン→ルビンの壺→影の中に見えるもの→写真の反転、という連想と行動の帰結が生じました。晩夏の夕暮れで、ひぐらしの鳴き声が聞こえてきそうなんですが、それとは別で、気まぐれに天地反転した写真のなかには、ピエロの顔らしきものが見える夕焼けにも見えてきました。私にはこんなふうに見えたけど……という気持ちで『かな』を添えました」と作者のコメント。

コメントには、発想の流れが書かれていますが、俳句そのものは、そこまで読み切れません。この発想の流れの一つ一つで、一句ずつ作っていくぐらいの感覚で、切り取ってみましょう。
そして、君のこの俳号は、どう読むのですか?
“ポイント”