第43回 俳句deしりとり〈序〉|「のき」①

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第43回の出題
兼題俳句
金糸雀の美しき黙かな女の忌 爪太郎
兼題俳句の最後の二音「のき」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「のき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
のきざかぢゃなくて乃木坂白日傘
蜘蛛野澄香
「ノキサカ」じゃなく「ノギザカ」よ生身魂
森ともよ
「のきさか」と間違えファンの圧に汗
織璃無
頑張れ乃木坂46! 最近『プレバト!!』にもメンバー出演しててうれしいね!


軒下に巣を去る燕良い旅を
柊木涙
軒下に長屋の如く燕の巣
歩歩丸
軒下は燕のインデペンデンス
骨の熊猫
軒下の声けたたまし夏燕
東九おやぢ
軒下の静かな一角燕去る
竜酔
軒下は雀の学校風涼し
発泡美人
軒下の風鈴の音闇に消へ
つきみつ
軒下に等間隔の玉ねぎよ
太之方もり子
軒下に並ぶ玉ねぎ梅雨あがる
はしま
軒下に玉ねぎ吊るす五十肩
美んと
軒下に尺玉三個雀蜂
はるを
軒下に守宮も同居へばりつく
若狭草
軒下に鮮やかすぎるキノコ生え
藤富うに
軒下の干し柿眺め見取算
夢佐礼亭 甘蕉
軒下の干柿落ちて最高値
古み雪
軒下の干茸のひび頃合いや
いちの
軒下のミンミン蝉の目の緑
落花生の花
軒下のワナ越え憎し子持ち猫
ズッキーニン
軒下にハチの巣見たり後ずさる
福田創風
軒下の蜂に脅され引きこもる
えみり
軒下の蜂の巣や不穏溢れる
飛来 英
軒下の蜂窩のデカさ手は出さぬ
大久保一水
軒下の蜩の息絶えてゆく
やぎみかん
軒下にふれふれ坊主炎天下
そうわ
軒下から鴨に投げやる蝸牛
在仏変人
軒下が恋の始まり夏の雨
すけたけ
軒下でグミ頬張って夏休み
橘あかね
軒下で雨宿りする赤蜻蛉
輝虎
軒下で運命的な夕立なう
大本千恵子
軒下で飛び交う本音送り梅雨
梅田三五
軒下で遊ぶべからず大氷柱
片山千恵子
軒下にお茶の香り若葉風
のんびりくまたん
軒下にヒスイのかけら埋めて秋
若林くくな
軒下に雨音を聞く夜長かな
歩帆
軒下に夏つばめ復職の今朝
がらぱごす
軒下に気配独りの熱帯夜
骨のほーの
軒下に逃れ夕立降る前に
律
軒下に濃き影しまう午後一時
はぐれ鞠助
軒下に野良猫用の餌を朧
宙海(そおら)
軒下に薔薇鉢引っ越し台風や
音 リズム
軒下のカチカチ山のしずり雪
百瀬はな
軒下のたらいに落つる喜雨の音
あさり丸
軒下の夏日影踏む登下校
夏月人
軒下の春や雨夜の品定め
くるぽー
軒下の沈黙埋める夏の雨
尾長玲佳
軒下の風鈴短冊朽ちて散り
飯島寛堂
軒下の方へ方へと大百足虫
紫黄


軒先や巣立つねがひの燕の子
わかね
軒先の燕親子の生きる日々
団塊のユキコ
軒先の甘酒茶屋の風鈴へ
浜風
軒先から飛び立つ音よ天高し
老黒猫
軒先の蜂の巣見つけ見つめる子
べにりんご
軒先の蜘蛛の囲払ひ旧宅へ
閏星
軒先で夕立明け待ち一時間
高橋 誤字
軒先に銀杏並ぶ「ご自由に」
ほうちゃん
軒先の防犯カメラ長き夜
白石ルイ
軒先の無人販売あきなすび
くさもち
軒先や太っちょきゅうり十余り
日進のミトコンドリア
軒先のさびしき黙(もだ)や巣立鳥
氷雪
軒先の雨樋(とゆ)伝ひ落つ梅雨の雨
槇 まこと
軒先の打水匂う団子柄
山本八角
軒先の大キレットや夏の朝
ぐわ
軒先の日除の陰へ付いて行く
日向あさね
軒先の部屋暗くして盆の月
しまちゃん
軒先の軋み息引く蟇
山内三四郎
軒先は深し草木黄落す
ときちゅら
軒先割れ春雷父は帰宅す
貴他山
軒下シリーズの亜種、軒先シリーズもたくさん。取り合わせの発想はやはり似たものが多いのですが、軒先シリーズ限定のものもいくつかあります。防犯カメラや無人販売系の発想は「軒下」ではなく少しだけ距離の離れた「軒先」という場所の設定が必要になるのでしょうね。


軒下の置き配へ西日のざざざ
栗田すずさん
軒下のアッパッパたちまだ揉める
日永田陽光
軒下の巣鳥を盾として不退去
ツナ好
軒下に水着やだらだらと残暑
髙田祥聖
軒先に冷酒酌む父の満州
沢拓庵
軒下&軒先の秀句をピックアップ。《栗田すずさん》さんはオノマトペが独特。西日が傾きを深くしていく感じでしょうか。対象や方向を表す「へ」の助詞も的確であります。《日永田陽光》さんと《ツナ好》さんは飄々としたおかしみ。軒下に鳥が巣作っちゃったんで出られないッスねって拒否してたら揉めるだろうなあ……。
《髙田祥聖》さんは「水着」も「残暑」も同じくらいの力を発揮しつつ同居している珍しい季重なりの例。「水着や」で明確な切れが作られた句跨がりの形です。続く「だらだら」は「残暑」にかかる言葉であり長引く残暑の倦怠を思わせますが、同時に軒下にだら~んとぶら下げられた水着の姿も連想させます。言葉の配置の妙味ですねえ。
《沢拓庵》さんは五五七の変則的なリズムが印象的。「父の満州」が音数の意味でも情緒の意味でも重く下七に据えられています。その重さが余韻となり、語りきれない事柄を読者各々に想像させるトリガーとなってるんですね。
〈②に続く〉

