写真de俳句の結果発表

第63回「十数年ぶりの大阪」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊

第63回のお題「十数年ぶりの大阪」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

芭蕉忌や芭蕉を知らぬバイトの子

佐藤志祐

夏井いつき先生より
「兼題写真の飲食店からアルバイトへ発想を飛ばしました。現在、アルバイト先では五十歳近く離れた高校生と一緒に働いています。ある日、『今日は芭蕉忌か』と呟くと『それ何ですか』とバイトの子に聞かれ、説明しました。芭蕉さえも知らなかったという、驚愕の事実を詠みました」と作者のコメント。

中七下五のフレーズに「芭蕉忌」を敢えて取り合わせるのであれば、「芭蕉忌の」でしょう。

添削例
芭蕉忌の芭蕉を知らぬバイトの子
“ポイント”

再会の歓び温し鰭の酒

空素(カラス)

夏井いつき先生より
「十年の単語を使わないなら、どんな言葉が良いか悩みました」と作者のコメント。

「十年の単語は使わない」という意図はどこにあるのでしょう。むしろ、「十年目の再会」と書けば、「歓び温し」は不要ではないかと。
“ポイント”

猫鳴きて楽器は空き家もがり笛

京都さくら

夏井いつき先生より
「田舎の空き家に猫が住みついていて、ミャーミャーと鳴いています。厳寒の中、北風がビュービューとまるで空き家を楽器のごとく吹き抜けて、すごい音を奏でています。猫の声と北風の音が合わさって、何とも言えないハーモニーを作っています。そんな様子を詠んでみました」と作者のコメント。

「猫の声と北風の音が合わさって、何とも言えないハーモニーを作って」とのことですが、「猫鳴きて楽器は空き家」という文脈でよいのでしょうか。伝えたい内容と文字面に溝はありませんか。
“ポイント”

万両や小僧の夢の浪速かな

猫笑ふふ

夏井いつき先生より
「や」「かな」と切字を二つ使うと、感動の焦点がブレるということで嫌われます。
“ポイント”

秋晴れやカメラの列並ぶ御堂筋

すみだ川歩

夏井いつき先生より
「列」と「並ぶ」、情報が重複していませんか。
“ポイント”

冴ゆる夜のソースの匂い椅子軋む

青柳四万十

夏井いつき先生より
「冬の大阪で、お好み焼きを食べたことを思い出して詠みました。振り返ると、触覚、嗅覚、聴覚と五感を刺激されていたなと思いました」と作者のコメント。

下五を「軋む椅子」とすれば、人選です。
“ポイント”

万博やミャクミャクと見る花火かな

ぽち

夏井いつき先生より
「や」「かな」と、切字を二つ使うと、感動の焦点がブレるということで、嫌われます。どちらか一つを外しましょう。
“ポイント”

秋の灯の紅茶煮叔母の目きらきら

早霧ふう

夏井いつき先生より
第57回『沖縄県の郷土料理』〈夕焼を紅茶で煮るや叔母にこり〉の推敲句です。『夕焼』と『にこり』を変えてみました。追悼したい叔母は、いつも楽しそうにしていました。〈目の笑ふ叔母の角煮や秋ともし〉も浮かびましたが、いかがでしょうか」と作者のコメント。

「夕焼を紅茶で煮る」のと「秋の灯の紅茶煮」では、内容が別物になっているので、どうアドバイスすべきか、ちょっと悩ましい。叔母さんへの追悼句ということですから、まずは自分の伝えたいことを短い文章にしてみましょう。その文章の中から、言葉の優先順位をつけます。絶対に外したくない言葉がどれなのか。そこから、考え直してみましょう。
“ポイント”

ドームツアー果て人波となり着るコート

花ばば

夏井いつき先生より
「初めてドームツアーに参戦しました。高揚した気持ちのまま、流れるまま人波となり、寒くてコートを着ました」と作者のコメント。

「人波と」なってから「コート」を着てる? コートを着て、人波となっていく? 語順がこれでよいのか、自問自答してみましょう。
“ポイント”

初恋のラーメン在りし路地の冬

福間薄緑

夏井いつき先生より
「『初めて惚れ込んだラーメン』という意味が表現できているでしょうか」と作者のコメント。

「初めて惚れ込んだラーメン」ではなく、「初恋」のデートで行ったラーメン、もしくは店名が「初恋」?……と読まれてしまうかなあ。。作者の思いと、俳句の文字のあいだに、ささやかな溝があるということですね。
“ポイント”

百舌鳥古墳堀の鴨吾睨んでく

鳥鳴里乃

夏井いつき先生より
「百舌鳥古墳」の鴨に睨まれている。句材は面白いです。語順を一考してみましょう。
“ポイント”